6-7 敵か味方か
6ー7 敵か味方か
その男は、ローブのフードを脱ぎ、その場にひざまづいた。
「姫、覚えておいででしょうか?私は、クリスティア王国魔導師団の一員でしたエンリコ・ファーガスンでございます」
「エンリコ?」
アリサがエンリコに駆け寄ってその顔を覗き込んだ。
「本当に、エンリコなの?」
「ナウヴィス師団長?」
アリサをマジマジと見たエンリコが目を丸くして言った。
「よくご無事で!」
「もちろんよ!」
アリサが満足そうな笑みを浮かべた。
「あなたこそ、よく無事で」
「ファーガスン伯爵」
誰かが遠くからエンリコに呼び掛けた。
「ここは、危険です。ひとまず、屋敷の方へ戻りましょう」
「ああ」
エンリコは頷くと、アリサと姫に言った。
「ともかく、私の家へ、どうぞ、ご案内します」
エンリコは、廃墟の外に止めていた馬車へと姫を導いた。
「申し訳ないが、他の方たちは、私の従者と共に徒歩で来て頂きたい」
幸いなことに、エンリコの屋敷は、そこからそんなに遠くはなかった。
彼は、俺たち一行を屋敷へと招き入れるとそれぞれを客間へと通した。
「どうぞ、むさ苦しいところですが、しばらく、ここで過ごしてください」
むさ苦しい、というか。
すごいお屋敷だな。
隅々まで美しい細工が施された豪華な客間に通されて、俺は、戸惑っていた。
部屋の中に置かれた花瓶や壺を壊さないように気をつけなくては、と俺は、思っていた。
俺たちがエレクシアで転移ゲートに入ったのは、朝のことだったのに、今はもう夕暮れだった。
シンシンと積もっていく雪を窓からみながら、俺は、エンリコに出会えた幸福に感謝していた。
だが、油断はできない。
俺は、武装を解くことなく、部屋の隅の椅子へ腰を下ろして考えていた。
エンリコは、なぜ、俺たちを屋敷へと連れ帰ったのか、と。
だが、答えは出なかった。
部屋の中では、暖炉に火が燃え盛り、暖かさに全身が緩んでいくのを、俺は、感じていた。
しっかりしろ!
俺は、自分にカツを入れた。
まだ、奴は、敵か味方かもわからないんだぞ!
気を緩めるのは、早すぎる。




