3-11 春が来る。
3ー11 春が来る
俺たちが解放されたのは、深夜も過ぎた頃だった。
はぁ。
外交って、しんどいな。
俺は、空船の自分の部屋へと戻ると溜め息をついた。
俺は、部屋にあるシャワーへと向かうと服を脱いで頭からお湯を浴びた。
「はぁ、生き返るな」
「カナメ」
「ええっ?」
俺は、シャワー室のドア越しに耳をすました。
「姫?」
「なんだか、眠れなくって」
姫がベッドに腰かける音がきこえた。俺は、急いでシャワーをすませるとタオルで体を隠して着替えに手を伸ばした。慌てて下履きをはくと夜着を羽織る。
俺は、シャワー室から出ると、姫に声をかけた。
「姫?」
姫は、俺のベッドに横たわりすやすやと寝息をたてていた。
ああ。
さすがに、姫も疲れたのか。
俺は、そっと姫に掛布をかけてやり、部屋から出た。
うん。
寝顔は、なかなかかわいいのにな。
俺は、食堂の隅に置かれたソファの上で横になった。
交易を終えた俺たちは、村へと帰路につくことにした。
予定では、アズミちゃんを魔王城へ帰すか、アズミちゃんを預かっていることを伝えるつもりだったのだが、それは、止めておくことにした。
「どうか、春までここに残っていただけないものか?」
リイルたちは、そう俺たちに言った。
それは、たぶん下心があってのことだ。
つまり、魔界に新しい血を入れるための種馬にしようということ。
俺は、まだ、父親にはなる気はないし。
何より、初めては、好きな人としたいしな。
って、乙女かよ!
まあ、商売は、うまくいったしな。
俺が村に帰ることを告げたときのアズミちゃんは、すごくホッとして嬉しげだった。
うん。
なんとかしてやらないとな。
俺は、アズミちゃんの保護者なんだし。
魔王城、ひいては、魔界がアズミちゃんにとってもっと優しいところになるように。
村に帰ると、俺たちは、みんなの出迎えを受けた。
その日は、村をあげてのお祭り騒ぎになった。
村の女たちは、エリオスを紹介されると色めき立った。
うん。
春が近いのは、魔界だけじゃなかったんだな。




