3-10 宴にて
3ー10 宴にて
リイルは、俺たちを宰相の執務室へと案内した。
「魔王様は、今、体調がお悪く残念ながらお会いできない。話は、この私がお聞きしよう」
ええっ?
俺とエリオットは、アイコンタクトをとった。
こいつら、アズミちゃんがいないってこと隠してる?
「そうですか」
俺は、残念そうなふりをした。
「それは、大変ですね」
それから、俺たちは、商談に入った。
リイルは、俺たちの持ってきた塩を全てと香辛料を魔石と交換することを承諾した。
リイルの提示した魔石の量は、俺の銃弾5万発分はあった。商売としては、かなりいい話だ。
俺は、他の品もすすめることにした。
「革製の丈夫なブーツや、小型の収納袋、それに、ムーアの毛織物もありますが、いかがですか?」
「うむ」
リイルは、特に興味を持っている様子はなかったが、言った。
「城の者たちが興味を持つやもしれんな。ぜひ、拝見したい」
「では、すぐにお持ちします」
俺たちは、一旦、船に戻ると、他の商品を積み込んで城へと引き返した。
城の入り口で店開きをすると、城の調理人やら、メイドたちやらがやってきたので、俺たちは、野菜やら、ムーアの毛織物やらをすすめてみた。
俺たちの持参した穀物や野菜、毛織物などの商品は、けっこうな値段で売れた。
俺は、ホクホクだった。
なにしろ、支払いは、全て魔石で行われたわけだからな。
かなりの儲けが期待できた。
リイルは、俺たちに大きな箱3箱分の魔石を支払うと言った。
「これからも度々、お付き合いを願いたいものだが、どうかな?カナメ殿」
「もちろん、喜んで」
俺は、笑顔で答えた。
その夜は、リイルに城で催される宴に招待された。
俺とエリオットは、それに応じることにした。
アリサとアズミちゃんは、船に残ってもらうことになったが、姫は、ついて来る気満々だった。
「でも、そんな楽しい席じゃないし」
俺は言ったのだが、姫は、引かなかった。
「あなたたちだけを危険な目にあわせるわけにはいきません」
仕方なく、俺たちは、姫を伴って城へと乗り込むことになった。
姫は、青い美しいドレスを身に付けていた。それは、最近、栽培を始めた綿で作ったものだった。
「大袈裟な。こんな宴にドレスなんて」
エリオットが言うと、姫は、にっと笑った。
「ドレスは、女の戦闘服ですのよ」
姫の言う通りだった。
船で城へと乗り付けた俺たちを迎えたリイルたちは、確かに殺気だっていた。
これは。
俺とエリオットは、身構えた。
だが。
連中は、姫の姿を見たとたんに、態度を変えた。
「お手をどうぞ、美しい方」
「ありがとう」
姫は、堂々とした態度でリイルに手を差し出すと、船を降りた。
「お招きありがとうございます、宰相閣下」
リイルたちと一緒に和やかに談笑しながら城へと入っていく姫に俺とエリオットは、顔を見合わせた。
さすが、元大国の姫というのは伊達ではなく、姫は、その宴の場で男たちを手玉にとっていた。
現騎士団長のオルセイにいたっては、姫の手をとりプロポーズまでしていた。
「どうか、私の子を産んで欲しい」
「まあ」
姫は、目を丸くしていたが、すぐに、ふわりと微笑みを浮かべた。
「私、強い男の方は、嫌いではありませんわ」
その場がわっと沸いた。
その夜は、男たちが姫をめぐって次々と決闘を繰り広げることになった。
城の女たちはというと、俺とエリオットに次々と現れては、酒をすすめたり、焼いた肉をすすめたりしてくれた。
「私は、リイルの妻、エリサと申します。こちらは、私の娘、ラミア」
「あの、よろしくお願いします」
妖艶に微笑む猫耳族の黒髪の美女と頬をポッと染めている灰色の髪の猫耳族の美少女が俺たちの横にそれぞれ座り、話しかけてきた。
「いいときに来られましたわね、カナメ様」
俺の隣に座ったエリサがにっこりと笑いかけてきた。
「この国の女たちは、みな、あなた方のような強い男がとても好きなんですのよ」
マジか?
エリサの胸がぐいぐい俺の腕に押し付けられている。俺は、困って横にいるエリオットの方を見た。
だが、エリオットは、にやりと笑っただけで、気弱そうなラミアと楽しげに談笑していた。
ちっ。
いい気になりやがって。
俺は、にっこりと微笑んでエリサに言った。
「あまり俺に馴れ馴れしくされると、宰相閣下が焼きもちを焼かれますよ」
「あら」
エリサは、笑みを浮かべて言った。
「あの人だって、あなたのお連れの方と楽しんでいるんですもの、何も問題ありませんわ」




