2-9 家を造ろう!
2ー9 家を造ろう!
そんなことを俺たちがしている間にも、奴隷たちは、せっせと働いて朝食を作ってくれていた。
俺たちは、一時休戦し朝食の薄い板状のパンとスープを食べた。
うん。
なんか、ナンみたいでうまい。
俺は、もぐもぐ食ってる姫を見た。
ほんと、姫が黙ってるのは、もぐもぐしてる時だけだな。
「城を建てるのです!」
食べ終わった姫がいきなり言い出したから、俺は、答えた。
「無理だな」
俺は、姫に言った。
「城なんて、建ててる余裕はないよ。そんなことより、今は、家だろ、家」
だが、それも、材料がなかった。
木も、草すらも、はえてはいない。
いったい、どうすれがいいっていうの?
「木材を買ってくるか?」
ジルが言った。金なら、いくらかはあった。砂漠の民の女王から貰った報償金だ。
「それか、土で家を造るか、だな」
「土か・・」
土壌を改良できたんだから、土で家を造るぐらいできるんじゃね?
俺がそう考えると、ピコン、と音がした。
『土で家を造りますか?』
やっぱ、できるの?
『スキル 土加工』
俺は、それを選択した。
すると、俺とジルの立っている辺りの大地がもくもくと盛り上がっていく。
「な、なんだ?」
辺りにいる人々が驚きの声をあげている間にも、土塊は、小山のように変化していき入り口のぽっかりと開いたドーム型の家になっていく。
完成したところで、俺は、中に入ってみた。
家の中は、何ヵ所か窓があり以外と明るかったし、土で造っているとは思えないぐらい過ごしやすそうだった。
「すごいな、家ができたのか」
ジルが俺に続いて家の中へと入ってきた。
「これで住居問題は、解決しそうだな」
俺たちは、その岩山の辺りに 村を作ることにした。
俺は、土加工で家をいくつも造っていく。
アリサとナジが奴隷たちの名簿を作り、家を割り振っていく。
その間に、ジルは、数名の奴隷たちと昼食の用意をしていた。
姫は。
子供たちに遊ばれていた。
「 お前、変だぞ!」
「変じゃありません!」
「すぐ、勇者様に偉そうにするし!」
「当然です。あれは、私の家臣ですもの」
「変、変!」
子供たちが囃した。
「お前、役立たずじゃん!」
「だから、私は、ここの女王なんですってば!」
子供たちを追いかけ回す姫を微笑ましく見つめてアリサが言った。
「よかったです。姫が、あんなに明るくなって」
「明るく・・ですか?」
俺は、アリサにきいた。
「ええ」
アリサは、頷いた。
「ヨハンナに、父王様を殺害され、国を追われたときから、姫は、変わってしまわれました。以前は、素直で可愛らしい方だったのに、傲慢で笑わない方になってしまわれました。それが、あんな、楽しそうに」
俺たちは、子供に戯れられている姫の様子を見ていた。
楽しそう・・かな?
アリサは、続けた。
「ただでさえあの方は、王族でありながら魔法が使えないというハンデがおありだったために、いつも悩んでおられました。が、最近は、それも吹っ切れた様子で安心しています。すべては、カナメ様のおかげです」
はい?
俺は、アリサを見た。
マジで、そう思ってるわけ?
「あの姫なら、何があっても大丈夫そうだけどな」
俺が言うと、アリサが、笑った。
「そうでしょ?だから、私たちも、姫についていこうと思えるんです」
正気かよ。
俺は、姫を暖かく見守るアリサを信じられない思いで見ていた。