どういう意味だろうね?
その日の夕食は、ケーキを四人で食べた。
マリアのお祝いというのもいあったので、謎のぶどうジュース? のようなものも頂いた。
クレイは、微妙な顔をしていたが、
「どうしたの? ずっと変な顔と言うか機嫌の悪そうな顔をして」
そういながら、私はケーキを一口食べる。
程よい甘さのクリームとふわふわのケーキが口の中でとろける美味しさだ。
今回ここで選んだのはショートケーキのようなものだった。
いちごのような果実はいちごのように見えたが、“川いちご”と呼ばれているらしい。
なんでも水の中で育ついちごだそうで、異世界は不異議だなと思いました。まる。
さて、そこで延々と私が食事が終わりケーキを食べつつクレイにそう話しかけていたらクロードが、
「おい、ミドリ、右の頬にクリームがついているぞ」
「え? どこ?」
「ここだよ」
嘆息するようにクロードに、傍にあった紙の布巾で頬を拭かれてしまった。
意外にクロードは面倒見がいいなと思っているとそこで、目の前のクレイが更に変な顔になって、
「……仲がいいな。お前達」
「クロードは結構面倒見がいいと思いうよ」
「……じー」
何か思う所が有りげな雰囲気でクレイがクロードを見るが、クロードは無視していた。
代わりに私が先ほどの質問を繰り返す。
「それで、どうしてそんな変な顔なの?」
「だから、俺はお前達が信用ならないから、明日、“決闘”を再度 すると言うのにどうしてそんな風に俺に話しかけてくるんだ」
「……明日には、真の絶望をお前に与えてやろうぞ」
「だからお前が言うと冗談に聞こえないだろう! というか、何で俺がツッコミ入れているんだ。俺、何だか絶大な勘違いをしているんじゃないかと不安になってくる」
頭を抱えたクレイにマリアが、
「でも、ミドリちゃんはそんなに悪い人じゃないと思うけれど」
「……マリアは人が良すぎるんだ。こうやっていい人のように近寄ってきて、俺達を罠に落とし入れる可能性だってあるんだ。現にマリアは今この学園に来ることになっただろう」
「でも、私、ここの学園生活楽しいよ?」
「それはいいことだけれど……マリアの能力を考えたら危険極まりないんだぞ」
「……私だってある程度戦えるし、“選択画面”という新しい魔法も使えるようになったし、ミドリちゃん達に会えたのも嬉しいよ。それに……『お前は本当に“聖女”』なのかと散々言われたし。私、ほかの人よりも治癒魔法が弱いから」
「それは……」
そう告げたマリアにそれ以上クレイは何もいえなくなったようだ。
だがどうやらマリアは、弱い“聖女”なので故郷を出されてここに来たらしく、しかも“聖女”であるのを疑われていたらしい。
そう考えるとマリアが大好きなクレイが必死になってしまうのも無理はないだろう。
ただそういえばマリアの“選択画面”の中で治癒魔法があったなと思い出して、私はクロードに、
「この“選択画面”に表示される魔法って、どういう基準で選ばれるんだろうね」
「……ミドリの場合の特殊能力はミドリが選んだとはいえ、ある程度ミドリの“性質”というか“適性”に影響されるな」
「ということはこれまで、もしくはこれから使えるようになるだろう魔法が書かれている感じかな?」
「……そうかもしれないな」
「となると、マリア、ちょっといい?」
そう声をかけてマリアに近づく私。
クレイが警戒しているが、とりあえずクレイの影と私の影で周りに見えない、もしくは周りに人がいないのを確認してから、
「マリア、“選択画面”の“治癒系魔法”の項目を見せてもらってもいいかな?」
「は、はい……これ、ですね!」
そう言って触れたマリアの“治癒系魔法”乗っているのは弱いと言えない魔法ばかりのような私は気がした。
クレイもマリアも目を丸くしているようだから、おそらくは強い力を持つ魔法なのだろう。
私が“知っている範囲”でも、マリアはそんなに弱い治癒魔法の使い手ではなかったのだ、確か。
そこでクロードも覗きに来て、
「……何処が弱い“聖女”なんだ?」
「で、でも私、治癒魔法の簡単なものが他の人より得意で、でも他の“聖女”よりは弱いって」
「それでこれらの魔法全部、他の“聖女”は使えるのか?」
「一つや二つだけだったかと」
「話しにならないな。その程度しか治癒魔法が使えずに、“聖女”を名乗るなんてな」
クロードがバッサリと、その程度と切った。
つまりその能力で見ると一番マリアが“聖女”と言える人物であるらしい。
でもそうなってくると、
「何でマリアは、そんな強力な魔法が使えるって知らなかったの?」
「だ、だってそれよりも上の魔法にって段階を踏む途中で、その、私、上手く魔法が出来なくて」
「……もしかしてマリアは強力な回復魔法かあまり強力でないそこそこのものしか使えないという……微妙に、能力が両極端になっている?」
私は考えを口にするとクロードも少し考えてから、
「“聖女”は基本的に強い治癒魔法を使えるから、そういった弱いものと強いものが両極端になる場合があるといった内容は、考えたことがなかったな。弱い魔法ですむなら“聖女”でなくてもいいわけだし、それに気づく機会も無いか」
「でもこれで、マリアが弱くないってことが分かったね」
そう問いかけるとマリアが嬉しそうに笑って答える。
その一方でクロードは考え込むように黙ってしまっている。
どうしたのだろうと思っているとそこで彼は私を見て、
「マリアのその力に気づかせてくれたことには感謝する。でも俺は、やはりお前達が信用できない」
「だから“決闘”はいいってば。ようする、マリアを守れるだけの力が自分にあるのかをもう一度試したいってことでしょう?」
「それは……」
「“決闘”ていっても、腕試しみたいなものでしょう? それに、どうしてそこまで私達が“信用できない”と思ったのか考えたことがある?」
「どういう意味だ?」
「さあ、どういう意味だろうね。とりあえず明日は……瞬殺を目指すから、楽しみにしててね」
「そういう所が信用をなくすんだよ! 見てろよ、新しい技だって見つけたんだからな!」
「待ってまーす」
そう私が返すとクレイは悔しそうだったのだった。




