第9話 籠城
由香は気が付くとトイレの個室に籠っていた。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。
「授業行かなくちゃ…でも…」
トイレを出たら教頭先生がいるはず。学校にはお母さんが来ている。
教頭先生を振り払うのはおかしい人だと思われるし、でも教頭先生の部屋へ行くわけにはいかない。
考えた末、トイレに籠城することにした。
「時間を遅らせれば教頭先生もいなくなっているだろうし、お母さんだって帰っているはず。スマホでもいじってよっと。」
ポケットに忍ばせておいたスマホをいじりながら、由香は個室の壁にもたれかかった。
キーンコーンカーンコーン…
授業終わりのチャイムだ。
「よし、もういいかな。」
由香はそっとトイレから出た。教頭やお母さんは見当たらない。
ほっとした由香は、そのまま教室へと戻っていった。
教室のドアを開けようとした時、5時間目の授業の先生と目が合った。
「げ。」
「げ、とは何だ、げ、とは。お前、さっきの時間どこへ行ってた?ちょっとこっちへ来い!」
逆らう暇も無く、由香はゴツい男の先生に引きずられて職員室へと連行された。
入った中にはお母さんがいた。担任の先生と何やら話している。
お母さんはこちらに気が付いてにこやかに微笑みかけてきた。
と、何かをこちらへ投げてくる。
あれは何だ?
そう思う間もなく、由香は体に激痛を覚えた。
「あらやだ、私ったらお茶をこぼしちゃって。」
由香は頭から何やら液体を被ったらしい。
水か何かで流そうと、その場から動こうとすると、周りから一斉に取り押さえられ…
「さあ、ゆっくりおやすみなさいな。」
お母さんが何かが大量に入ったバケツを傾けてきたところで記憶が途切れた。
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「いやあ、傑作だ!今度は教師にまで見捨てられた!」
死神は大口を開けて笑い転げている。
「…あの液体は何だったのよ。」
ぶすっとして由香が問う。
「ああ、あれ?硫酸かな。あれだけの量なら目、鼻、口、色んなとこから体に入るね。あはは。」
「笑えないわよ…」
「まあまあ。さて、今回の選択はミスということだね。じゃあ、やり直し。頑張ってー。」
「せめてヒント…!」
ヒントをもらう暇も無く、由香は再び生き返った。




