早紀+真理
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静かで、身体に吸い付くような心地よい鎧。
早紀が、最初からステルスをオンにしているのが、そこから伝わってくる。
契約でつながっていながらも、本能的に何もかもを隠すことの出来る女。
蝕へ飛びながら、真理は鎧の鼓動を探ろうとした。
タミの言う、他の力の混じりを何か感じるかと思ったのだ。
しかし、不快感も違和感も、そこには見つけることが出来なかった。
ただ。
首筋から、武器を引き抜こうとした時。
その感触と、形の意味を理解した。
ああ。
そうか。
これか。
水馬刀に似ていると、最初にそう思った。
下賤な形の武器。
それは、強くないという意味ではない。
海族が、好んで使う形だからだ。
鎧の能力や武器は、イケニエにした魔女によって変わる。
この武器は、まさに早紀から生まれた刀だった。
おそらく、早紀には海族が混じっている。
それを知らずに、真理は自分の鎧に使ってしまったワケだ。
考えたことは、いくつか。
一番は、勿論家名や体裁のこと。
自分の代が終わるまで──いわゆる、真理が死ぬまで抱えておくべき重要事項だ。
同じ運命を、早紀にも共にしてもらわねばならない。
疑問を打ち捨て、ただ自分は純粋な魔族であると刷り込むのだ。
簡単だ。
早紀の、父親の情報を与えればいい。
それは、本当のことでなくとも構わないのだから。
その情報で、早紀ともどもタミも黙らせる。
彼女の混じったような能力は、ただの突然変異なのだと。
そう、信じさせるのだ。
一瞬にして、深層意識で計算を済ませる。
意識を引き上げるように、真理は空を見た。
蝕が──見えた。
※
今日、真理は自分の能力を乗せるつもりだった。
初陣の時は、早紀を制御しつつ、戦いに慣れなければならなかったのだ。
剣技そのものは、幼少から当然のごとく学んではいるが、魔族の戦いとしてはそれだけでは無意味だ。
蝕の前には、金の鎧が一人。
あれが、一番速く来た敵さんのようだ。
魔族側では、真理が一番ということか。
真理は、刀を握る手に魔力を集めた。
早紀のステルスは全開のようで、警戒はしているが、彼の接近はまったく気づいていない。
「来い…」
鎧の指が、がちっと音を立てた。
そのまま、刀と一体化する。
指に集めた冷気が、真っ白い結晶となってつないだのだ。
そのまま。
刃の切っ先まで、白く彩られる。
予想以上だった。
早紀が海族と関わりがあるのを証明するかのように、水にまつわる刀は予想以上に彼の冷気を受け入れた。
飽和する水分までも凍らせたのか、無数の氷の棘が刀から張り出す。
元の水馬刀の形とは、似ても似つかぬ針の刀。
悪くない。
前の形は、とても好きにはなれなかったが、これはまさに真理の能力を体現している気がしたのだ。
その刀を。
たとえ前回、早紀のステルスを体験していたとしても、対処出来るはずもない哀れな天族に振り下ろす。
気づいたら、斬りつけられている。
そんな、屈辱的な一瞬。
だが。
天族は、前回のように墜落はしなかった。
「くっ!」
深々と、鎧に大傷を負いながらも踏みとどまり──斬り返してきたのだ。
きちんと、認識した反撃ではなかった。
ハハハッ。
真理は、笑いながらその一撃を刀で受けた。
無数の棘を壊しながらも、相手の剣や腕に真理の氷が飛ぶ。
魔力による冷気。
天族にとって、それを浴びるのは――火を浴びるようなものに違いなかった。




