⑩
ばき。
がり。
ごりごり。
…………。
ジュ~ジュ~。
バリッ。
ベリッ。
がしゅっ……がしゅっ……。
うん。
燻製は顎を鍛えるのにちょうどいいね。
ちなみに本日の食事当番はリーナと私です。
リーナが作ってくれたスープは大好評なのに私の作った燻製を火で
かる~く炙った奴は不評です。
スープに入れるべきだったか……。
「な、なかなか……野趣溢れる食事で……」
「……」
「…………」
「…………」
「……カート、無理に言わなくていいよ」
「……はぁ……」
「あ。こっちのは美味しい……と思うよ、多分」
少年にスープとパンを渡す。
「……」
無言ですね。
そして何故ジークの後ろに隠れようとするんだ。
-主。我にもご飯……-。
あ。ヴァル。
……燻製肉の炙りの残りだけど食べる?
-……食べる-
素直で可愛いね、ヴァルは。
骨ごと齧り付くヴァルを一撫でして火を片付ける。
「そういえば。名前、まだ聞いてなかったな」
「……」
「名前……ん~。名前……ね~……」
「ぃる」
「ん?」
「……せぃる」
「セィル?」
こっくり。
頷いた。
「セィル。とりあえず、昨日も話したけど近くの街まで私達とともに
行きましょう。私たちの主-……ハル様はよい方ですし、カート様も
ジーク様もお優しいですから」
ないとは思うけれど、万が一のことを考えて本名は明かさないことに
なった。
「はい……」
「では。いきましょう」
――……国境の街へ!