第7話「島・内・友・人」
「ふぁ・・・朝か・・・」
島に来て二週間。寮生活にも何となく慣れてきた。眠い目を擦って食堂へ行くと花村と月影が座って朝食を食べていた。現時刻は8時過ぎ、休日なのもあってか、二人とも今来たばかりと言った感じだ。
「やあ翔太郎、おはよう。今日はひとみさんの所へ買い物に行くけど、一緒にどうだい?この前会いに行きたいって言っていたよね?」
この二週間で寮に住むメンバーの事も、何となくわかってきた気がする。
花村はとにかく面倒見が良い。周りの事をよく見ているし、些細な事に気づいたり、こちらの意図を察して動いてくれる事がる。
「お、おう‼︎一人で行っても(自分のコミュ力が低すぎて)会話が持つ気がしないから助かる‼︎」
正直、花村とは一緒にいて凄く安心する。
「お、翔と政、商店に行くの?じゃあ翔、夜食のカップ麺頼んだ。」
・・・月影はとにかく人任せ&面倒臭がりだ。基本何でも人任せ。
「つ、月影も暇なら来れば良いのに・・・」
「いや、俺は今ものすごく忙しい。ソシャゲのイベントで一位を取れるまで、あともう少しなんだ。だからものすご〜く忙しい。」
あと、興味のある事は徹底してやるが、ない事には無関心。二週間この調子なので、逆に関心するというか何というか・・・ただ、この独特な雰囲気は苦手ではない。
「そういえば新之助は?」
「あ〜新は、何だっけ。昨日知り合った女の先輩がどうとかで、早朝から遊びに行くって〜。」
香鳥はこの通りである。基本、休日の日中は寮に居ない。大抵は島のイベント事に参加してるか、仲良くなった人にご飯を食わせてもらっているか、上の学年の先輩(女子)のところにいる。
「ま、また・・・?」
ただ、よく島の人から色々もらって帰ってくる。この前は港の漁師さんから大量のサザエとアジをもらって帰って、花村と俺で捌く羽目になった。俺が不器用すぎてアジたちが見るも無惨な姿になったのが記憶に新しい。
「ふふ、新之助は相変わらずだね。じゃあ10時になったら行こうか翔太郎。」
「そ、そういえば花村は倉春さんとよく話しているけど、普段何を話しているの?」
坂道を降りながら俺は、花村に倉春さんについて聞いてみた。
寮で唯一話す事がないメンバー、それが倉春さんだ。というか、寮にせよ学校にせよ、彼女が誰かと話していない姿を見たことがない。
「おや?彼女の事が気になるかい?」
「い、いや。ほら、初日からやらかしちゃって以来話せて無いし、なんか俺以外には誰にでも明るくてフレンドリーで自分から話しかけに行っているから、本当に同一人物かなって。」
「ふふっ、それを”気になる”と言うんだよ。まあ、確かに翔太郎にだけ全く話しかけないと言うのも、気になるね。」
「だ、だろ?確かに初対面でキモムーブをかましてしまったけど、それにしても全く話かけてこないし・・・。あとなんか時々殺気を感じるというか、睨まれているような気がするというか・・・」
「つまり彼女に見られているような感じがする、ってことかい?」
「そう‼︎いや、そうなのかな・・・?」
正直自信は無い。俺の自意識過剰かもしれないし、もしかしたら本当に見られているのかもしれない。
「どうだろうね。確かに時々翔太郎を見ている気がしなくもないけど、本人のみぞ知るってとこかな。」
「ど、どちらにせよ敵意があるのは間違いないだろうから、考えないようにするよ。」
そんな話をしていると、俺達はひとみさんのお店の前まで来ていた。
「こんにちは。ひとみさん。」
「あら、花ちゃん‼︎こんにちは‼︎学校はどうだった?島の生活は慣れた?」
「はい‼ひとみさんを含めて、本当に良い方々ばかりで・・・安心して暮らせています。」
は、はなちゃん?え、何故そんなに親しいの?
「相変わらずお上手ね。あれ?・・・翔太郎君‼︎」
「こ、こんにちは。この前はどうも・・・」
「また来てくれてありがとう。」
「あ、え、っと、はい・・・。」
うーん、気まずい空気。でも気のせいか、花村もひとみさんも』
何だかニコニコしているような。
コミュ症全発揮してあたふたしていると、店頭に見た顔の女の子が立っていた。
「トミーさーん‼︎こんにちはー‼︎ホイップクリームありますかー?」
同じクラスの鳥海穂乃香だ。綺麗なボブヘアと、平均より高めの身長が特徴。滲み出るオーラが”ザ・陽”と言った女の子だ。
花村の情報によると、島生まれ島育ち。昔からみんなのまとめ役で、お姉さんが港前にあるカフェ「リフレクション」を経営しているらしい。何でも知ってるなあ、花村は。
「あら、ほのちゃん。おつかい?」
「はい!お姉ちゃんにパシられました〜」
どうやらひとみさんとも親しい中らしい。
「あれ?政知と翔太郎‼︎ういっす〜」
「やあ、穂乃香。この前はありがとう。良い体験だったよ。」
「こちらこそ手伝ってくれて助かったよ〜。お姉ちゃんも喜んでたよ‼︎」
「ふふっ、お役に立てたのなら光栄だ。」
、、、、???
この前?手伝い?何の事?
「ああ、そういえば、翔太郎には話してなかったね、すまない。実は・・・」
花村によると、入学式の前日にそのカフェに行っていたとの事。ちょうど団体客が来店していたらしく、人手が足りてなかったので手伝ってあげたそうだ。どうやら花村の実家は飲食店を経営しているらしく、10人前後への接客なら朝飯前との事。
「へ、へえ。やっぱりすごいな花村は。」
どおりで初日に食べたハンバーグが美味かったわけだ。
「翔太郎も暇な時はお店に寄ってね!!じゃ!!」
鳥海は風の如く去っていった。
「相変わらずほのちゃんは元気いっぱいね。あ、花ちゃんごめんね!先に来てくれたのに。」
「いえいえ、急いでないので大丈夫ですよ。穂乃香のような人がいると、クラスが明るくなって僕らも安心です。」
「今年の一年生もみんな良い子たちばかりだから、すぐ仲良くなれると思うよ。」
なるほど、他人とはこうやって会話するのかぁ。花村とひとみさんのやり取りを見て感心する俺だった。
そんな事を思っていると、また一人お客さんがやってきた。
「こんにちは。今日、親父来てないっすか?」
同じクラスの、、、確か、、、杜茂 侑太!!
「あら、ゆうちゃん!!今日は来てないけど、、、どうかしたの?」
「アイツ、スマホ忘れて仕事に行ったみたいで。ったく世話の焼ける。」
「お父さんお忙しそうね。もし来たら伝えておくね。」
「すんません、ありがとうございます。ん?お前ら・・・」
杜茂が俺達に気づいた。やっぱりなんかオラオラしてるんだよな。
「やあ、侑太。大変そうだね。何か手伝える事はありそうかな?」
花村は堂々と杜茂に話しかける。
「特にねえ。」
「ふふっ、何かあったら頼ってくれ。」
うぉ!!花村すげぇ、無下にされたのに笑顔1つ崩さないなんて。
杜茂はひとみさんに軽く会釈して去っていった。
「な、なんか怖かったな・・・」
俺は恐怖を隠せなかった。
「ゆうちゃんも相変わらずね。お父さんの方も忙しそうだし、大丈夫かな。彼のお父さん、この町で漁師しながら会社の社長もやっていてね。翔太郎君ごめんね、びっくりしたでしょ?普段はあんな感じだけど、根はとても良い子だから仲良くしてあげてね。」
いや、そう言われましても。
どうやら彼の家はこの町で1番大きい水産加工の会社を経営しているらしい。
家族総出で忙しく、彼自身昔から一人でいる事が多く、何でも自分でやってしまうそうだ。
何でも自分でできるか・・・羨ましい力だよなあ。
色々ゴタゴタしたが、俺と花村は買うものを買って寮に戻る事にした。
戻る道中、ひとみさんと島内出身の同級生たちのやり取りを思い出して少し不安になった。
「俺・・・この町でやってけるのかな」
「おや、どうしたんだい急に?」
「いや、なんて言うかこの町"みんな知り合い"って感じじゃん?そんな中でよそ者の俺が上手くやっていけるのかなって・・・しかもみんなそれぞれ個性や魅力があって、周りから必要とされてる感ありそうだし。」
「確かに、その心配はあるよね。正直、俺もあるよ。」
花村から意外な一言が出た。俺から見たら既に馴染んでるように見える彼が、そんな風に思っているとは考えもしなかった。
「でも、何とかなるかなって。島の方々はみんな優しいし、それに頼りになる仲間もいるからね。」
そう言って花村はこっちを見た。その目は真っ直ぐで嘘偽りの無い瞳だった。こっちが恥ずかしくなるくらい真っ直ぐで、白黒はっきりした純粋な目をしていた。
「べ、別に俺は頼りにならないよ。昔から何やってもダメだし・・・魅力とか才能とか無いし。」
「そんな事ない・・・と言いたいけど、それは翔太郎にしかわからない気持ちだよね。でも、頼りにしてるよ。」
こんなやり取りをしながら俺たちは寮に帰るのであった。ちょっと"青い春"を感じられた気がした。
第7話、ありがとうございました!!
同じ年代の人たちが才能を発揮して活躍しているのを見ると、「自分って大した事ないなー、何も持ってない無いんだなあ」って思いがちですよね。私だけかもしれませんが。でも、意外と周りもそう思っていたり、実は自分が気づいてないだけで得意な事やできる事ってあったりするんですよね。昔は私も「100%できてないから得意とは言えない」「上がいるから才能とは言えない」と自分に個性や才能が無いって嘆いて卑屈になっていました。
だからこそ、他者からの視点や意見が貴重だなとこの10年くらいで経験しました。
さあて、卑屈で自己肯定感が低い翔太郎はどうなっていくのでしょうか?
次回8話、やべー奴らが動き出します。




