カスミトシンジーノ(六)
「あ? あらら?」
師匠の顔から笑顔が消える。オルゴールを机上に戻し、そっと蓋を開けた。
さっきのように、音楽が始まらない。
伸次は心配になって声をかける。
「ど、どうしたんですか? オルゴール壊れました? 振り回すからですよー」
「いや、鳴らないのはゼンマイが切れただけだ。オルゴールさ、直ったんだけど、なーんか、まだカラカラ音がするって、思ってたんだよなぁ」
師匠は振った勢いで、底板が、少し外れているのに気が付いた。
「何だ? あれ、これ隠し部屋があるな!」
「へー」
「何か、鍵が出て来た。カラカラ言ってたのこれだな。何で二本なんだ?」
伸次は発注書をもう一度見る。
要望欄に、それらしき記述を見つけた。
「んと『晩年オルゴールが壊れても直そうとはせず、ただカラカラと鳴るのを聞いて笑っていた。これだけは、絶対に誰にも触らせなかった』だそうです。ぼけちゃったんですかね?」
「いやー、何だろうね。そう言えば、修理に持って来た時、金庫開けた時の映像があるって、ちらっと見せてもらったっけな。それ見てみるか。頼むわ」
伸次が検索を始めたのを見て、師匠はオルゴールを見る。隙間から、小さく折り畳まれた紙が出て来た。
慌てて眼鏡をかけて、そっと破かないように広げ始める。大分昔に、折り畳まれたようだ。
「これですかね。ありましたよ!」
伸次がタブレットを師匠の方に向けたが、見向きもしない。
「最近は便利な世の中だのう。デカい画面に出してくれ」
「いやいや、五十年前からできますよ。判りました。少々お待ちを」
伸次が向こうを見たのをちらっと確認して、師匠は古い紙を読み始める。
伸次は画面を見ていた。それは、金庫を開けている所だった。
『では、いよいよノデラーの遺品が入っていると言われている、金庫を開けまーす。どうぞー』
館長が白い手袋で金庫の扉を開ける。
『おー。何だか、ノートが一杯ありますね。何が出てきますかね?』
覗き込んだ司会者が言う。館長が最初に取り出したのは、不揃いの色々なノートだった。それを横に置いた机に、一つづつ並べて行く。そうして館長は、金庫の方に戻って行く。
『これは何でしょうね?』




