オープンカフェ(七)
「そうしなさいよ。絶対だからね。
はー。何か疲れた。コーヒーないわ。水。んが。あーでもさ、
あんた達、すっごい仲良くなるの早かったけど、どういうこと?
まぁ、こいつら『両想いなんだろうなっ』てのは、
薄々判ってたけどさー」
今度は『軽い話題』らしい。真衣の問いに、香澄が答える。
「えっ? んー、実は、前から知っていたんだよねぇ」
すると、その答えが『意外』だったらしく、真衣が慌て出した。
「えー、だって真ちゃん転校した後なんだから、小学校違うよね。中学からじゃないの?」
「そうなんだけどね。小学校で、逢ったんだー」
「えーいつよ? いつー? あ、運動会とか?」
あらゆるケースを想定してか、考えては指さし、考えては指さししているが、どれも『外れ』のようだ。
「いや、何かね、転校前の終業式の時?
『学校に用事がある』って言うんで、お母さんと行った時」
「え、もしかして、音楽室?」
おや? どうやら『当たった』ようだ。真衣は椅子から立ち上がって、香澄を指さす。
「そうそう。ピアノ弾いててね。そこで逢った」
香澄はにこやかに頷いて、頷くだけだ。すると、それを聞いた真衣が、両手を頭にあてると、髪をグシャグシャし始めたではないか。
「ま・じ・かー」
何か言った。すると突然、両手を合わせて空に向かい、祈り始めたではないか。
「あぁ神様は一体、どこまで私に『罰』をお与えになるんでしょう」
敬虔なクリスチャンなのだろうか。美しい光が真衣を包み込む。どうしてこうして、人は見かけによらないものだ。
「え、なに? どういうこと?」
だからなのか、香澄も驚いている。真衣がうな垂れて、着席した。
「あの日さ、真ちゃんからさぁ、
『家では話せない大事な話がある。後で音楽室に来い』て言われて、
『あぁ、遂に私のこと好きになっちゃったんだ』って、
ドキドキしていたんだよね」
誰かの真似をしたり、再びうっとりとして手を握り締めたり、何やら忙しく表情を変えている。
それが一瞬で、暗い表情に変わった。
「でも、真ちゃんに『宿題やってもらっていた』のがバレて、
職員室で先生に、叱られてたんだよ。
そしたら『知らないおばさん』が入って来てぇ」
「あ、それうちのお母さんだわ」
『ドン』とテーブルを叩き、テーブル上の物、香澄まで『ビョン』と上に飛び上がった、気がする。それぐらい勢いがあった。
再び観客の視線が集まるが、相変わらずベラベラ喋るのは、何だか判らない語である。
「でっしょー。なんか『学校の説明』とか始まっちゃってサー、
その間、ずーっと正座させられててサー、
イライラしてサー、やっと解放されてサー、
音楽室に飛んで行ったら、誰もいなかった」
思い出してもイライラするのか、落ち込んで頭を抱える。
「悪いわー。申し訳ないわー。でも、自業自得だわー。
ちょっと危なかったけど、神様は見てらっしゃるわー。
神様は『私の方』に、微笑んだわー。ハレルヤー」
一方の香澄はと言うと、にこやかに両手を広げ、神に向かって『感謝の祈り』を、捧げているようだ。
どうやらこちらも、敬虔なクリスチャンらしい。
「見てらっしゃるじゃないわよ。むかつくわー。
あー、絶対あれは愛の告白だったのよ。
私のために『愛のオルゴール』を弾いたはずなのよ。かぁーっ」
それを見た真衣が、ブツブツ言って頭をガシガシとやっている。
さっきまでの『大雑把さ』に反比例するかのように、余程『後悔』しているようだ。
「いやー、それはー。あ、でも、あんただって、
ブラバンのお別れ会で『愛のオルゴール』止めたじゃない!」
「えー、だって、あれはもう『ガチのやつ』だから。『ライク』なんだからさ、もっと他の曲を弾いて欲しかっただけなんですけどー」
突然の『真実』聞いて、今度は香澄の方が目を丸くする。




