オープンカフェ(二)
「でしょー? ほらー。十年来の友達のお願いだよー?」
「絶・対・嫌・だってぇ」
そっくり返って反論している。すると、パッと前に出て来て、意味深な顔をして言う。
「みんな私のこと『元許婚』って思うっしょ。ねっ!」
まるで『判っているだろう?』とでも言いたげに、パチンと右手で叩いたのは、左腕の方だった。
それでも、ノースリーブの白い腕が『パチン』と鳴ったからか、『何だろう』と、何人かが振り返る。
「いたたっ。どこぶってるのよ。古傷が! 古傷が!」
叩かれた腕を押さえて、やけに『痛がっている』ようだが、苦笑いだし、どうも『事件』ではなさそうだ。
それに『叩いた方』が、やけに『偉そう』なのも不思議だ。
「何言ってるの、骨折じゃなくてヒビだったんでしょ? それに完治したって言ってたじゃない」
「ヒビだって痛くない訳じゃないのよ? あー痛い痛い」
周りの客は、首を傾げて元に戻る。
「はぁ? 嘘臭い。あんた、どんだけドジなのよ。『雪の日に転んだ』って言ってたけど、どうせ家の中なんでしょ?」
「ええっ、どうしてそれを知っているの?」
偉そうにしている方が、右手で指さしながら、被害者に説諭している。一体、この二人の関係は何なんだろう。謎である。
「判るわよ、それぐらい。
真ちゃんが雪の日に、あんたを一人で歩かせる訳ないじゃない。
昇降口まで図々しく入って行って、先生に何やら言われながらも、
あんたを迎えに行ったのが、目に見えるようだわ」
「どきっ。流石妹様。まるで『見て来た』かのようだわ」
何の『ワード』に引っかかったのか判らないが、ちょっと『カチン』と来たようだ。それでも『偉そうな説法』は続く。
「でしょー。ほら見なさい。
あれでしょ。『風呂場で長湯』して、のぼせたんでしょ」
そう言い切ると、鋭い目で『ピッ』と指さす。すると、差された方が両手でパチンとやって、目を輝かせると前のめりになった。
「そうなんですよぉ。
いやー『見てたの?』って言う位当たってて怖いわぁ」
そうだろう。満足気に目を閉じて頷き、留めていた指を振り出す。
「やっぱりだよ。そんで真ちゃんが飛んで来たんでしょ?」
「うん。悪いことしちゃった。泣いちゃって、大変だった」
「ほらー。言ったとーりジャン」
すると言われた方が、急に演技を始める。
「お母さんにさぁ、
『もうあんたは、これからは、真治さんと一緒に、
お風呂に入りなさいっ!』
って言われて、流石に引いたわぁ」
誰かの真似をした後に、両手の平を肩まで上げると、口をへの字にして片目を瞑り、そのまま首だけを左右に動かす。
まるで当時の『困った様子』を丁寧に説明しているようだが、それを聞いた方は、むしろ笑い出している。
「それウケル! 親公認ジャン。入っちゃいえば良かったのに」
そして『ヒヒヒ』と、下品に笑い出した。
楽しそうに言っているが、言われた方は手を振って慌て出す。
「それはダメだって!」
「何赤くなってんの。私は一緒に入っていたけどね」
すると、急に自分を指さして『自慢話』が始まったようだ。
言われた方は、何やら右手をパタパタ振って『否定』している
「それは子供の時でしょー」
そんなの関係ない。それを聞く耳は、持ち合わせていないようだ。
むしろ前のめりになって、秘密でも『暴露』しているのか。
「真ちゃんの内股にねー『ホクロ』があってねー」
「あーあー、その情報要りませーン」
突然『聞きたくない』情報だったのか、耳を押さえて首を振り始めた。しかし、そうはさせじと腕を掴むと、引き寄せた。
そして、耳元に聞こえるように『暴露話』を聞かせている。
「あとね、つるんとしてた」
「それは子供だからでしょー」
「エッチ。何だと思ったの?」
「ん、し、知らないわよ!」
言った方が『ケケケ』と、下品に笑っている。どうやら『決着』が着いたようだ。
下品に笑っていた方が、真顔になっている。
「まぁ、今度じっくり観察することね。私はもう良いけど」
「どうもありがとうございますー。
ありがとうごーざーいーまーすー」
まるで『譲ってやった』かのように言って退ける。相手も、それを享受して、まるで丁寧に『礼を言っている』かのようだ。
いや、それでも、何だか互いにバチバチと、『すざましい火花』を散らしているように感じるのは、気のせいだろうか。
女の世界って、怖いな。




