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花火の夜(七)

 真治は笑顔で我が家の説明をした。しかし圭太は、ポカンとした顔をしている。暫く日本を空けている間に、何が? そんな感じだ。


「へー。じゃぁ真治君にも『許婚』が?」

 ちょっと興味を持ったのか、圭太は真治に聞いた。

 真治は笑顔のままだった。しかし、黙って手を横に振る。

 そして横に振っていた手を、今度は頭に乗せると説明を始めた。


「まぁ、私の場合は『おつむ』がよろしくないので、ちょっとそういうのは、ないと思います」「どういうこと?」

 説明を聞いても圭太には判らない。小野寺家は謎な一族である。


「お恥ずかしいのですが、頭悪い子はお婿さんに行かれないってことです。家だと『一高にも入れないのは、もう論外』って感じです」

「厳しいねー」

 にこやかに話す真治を見て、圭太はしみじみと相槌した。すると 真治は、両手の平を上にすると、諦めたように淡々と話す。

「でも、男も女も、みんな普通に一高に入ってますから。その辺は『普通のレベルが家による』という感じ、なんでしょうか」

「真治君は、一高無理な感じなの? しっかりしてそうだけど」

 期待を込めたのか、前に乗り出す。真治はまた、手を頭に乗せた。


「いやぁ、ちょっと英語が苦手なので『三高がやっと』かなぁと」

「じゃぁ、香澄に英語教わって『一高』狙えば?」

 圭太の提案は早かった。学業の心配をするのは親の常であろう。


「それは有難いんですけど、気持ち的には微妙ですね」

 真治は頭から手を降ろすと、両方の手を前で握り、言葉通りの微妙な笑顔になった。それでも、その答えは本音だ。

 しかし、真治の答えの意味が、いまいち圭太には不明だ。


 香澄と一緒に英語を勉強すれば、それは楽しかろう。不思議だ。


「どうして?」

 圭太は早口になっていた。言われた真治は神妙な顔つきになり、圭太の目を見ながら、ゆっくりと話す。


「いや、あのー、一高に入ったら『許婚』、紹介されますが?」

「良・い・ん・じゃ・な・い?」


 二人の会話がピタリと止まった。


 香澄と真治が付き合うのに、圭太は反対なのか。

 いや別に、相手が誰であろうと嫌なだけだ。それより何より、うだうだ言ってないで努力しろ! と、言っているだけだ。


 一方の真治は、一高に入っても母を選んだ『尊敬すべき』父のことを、思い出していた。

 二人共笑顔のまま、いつまで見つめ合っているのだろうか。


「ははは。というのは『冗談』として、勉強はしっかりしないとね」

「はいそうですね。『音楽ばっかりやるな』と、良く言われます」

 今度は『苦笑い』で見つめ合う二人。


 圭太は『こいつ、音楽一家に対してスゲエこと言うな』と感心し、『やっぱり話題を変えよう』と、思った。

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