表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/272

テスト期間(三十三)

 真治はいつも、他のお客様にカートを使ってもらおうと思っているので、黄色いかごだけを手にした。

 持参した買い物かごと、スーパーの黄色いかごを持った真治の姿を見て、香澄は口をへの字にする。

 どちらか持つと言ったのに、どちらも持たせて貰えない。


 そこで、無理やり黄色いかごの方の、片方の取っ手を取ってみた訳だが、三歩も歩く内に、香澄は凄く楽しくなってきた。

 満面の笑みを浮かべ、一歩毎に上半身を左右に振って歩き始める。


 それにつれ、長い髪と、短いスカートが、真治の前でゆらゆらと揺れていた。

 香澄はメモを見る度に振り返り、次の商品が置いてある場所を真治に教えながら、店中を引っ張り回したのだ。


 そして帰りの並木道でも『買い物かごの取っ手』を、片方づつ持って歩いている。


「今日は何時までいられます?」

 香澄は真治の顔を覗き込んでいる。

「うーん」

 真治は考えていた。

 一人で友人宅にて『夕食をご一緒』したことはない。

 親戚の家でなら、沢山あるけれど。


 そんな真治の様子を見て、香澄は理解する。

 真治が黙っているのは考えているからだ。自分のことではなく、今は香澄のために、正確な答えを求めているのだ。

 誠実? いや、慎重? ある意味マイペース。面白い人だ。


「夕飯っていつも何時なんですか?」「九時かな」

 ほらね。自分のことだと、聞かれれば直ぐに答える。

 香澄は面白くなって来て、また上半身を左右に振り始めた。


「え、随分遅いんですね。じゃぁ九時位まで?」

 横に振った上半身が真治の方になるタイミングで、シュッと真治の顔を覗き込んだ。楽しそうに笑っている。

 きっと『悪い』って言うよ。そんな予感がする。


「いやぁ、そんなに遅くまでお邪魔しちゃ悪いでしょ」

 真治は真面目に答えている。


 香澄は『予想通り』だと思っていた。

 また『シュッ』と、真治の顔を覗き込む。

 今度は、目をピクリとさせた『悪戯っぽい顔』だ。


「泊って行っても、良いんですよ?」「いやいやいやいや」

 真治は息を詰まらせ、慌てて答えた。


 香澄は右手を口に当てて、笑っている。

 上半身を振るのを止め、やさしい笑顔になって真治に言った。


「お布団ありますからね」


 真治からの返事が、ある訳もない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ