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テスト期間(二十七)

 夕刻の道を行く。昼間の熱さは何処へやら。

 香澄の家から並木道までは、車の少ない住宅地の道である。

 それでも横断する時は後ろを振り返り、角を曲がる時はちょっと覗き込んで先を確認する。


 小さい子供ならお構いなしに駆けだして、十年に一度くらい、車に轢かれたりするんだろうけど。

 真治はここで、自転車を一台ダメにしたのを思い出した。


 真治と香澄は、仲良く手をつないで歩いていた。

 お互いに反対の方を確認し、危ないのに行こうとしていたら手を引っ張る。デパートの中を歩く時のように。


「今日も髪留め壊れちゃったの?」

 唐突に、真治が香澄に聞く。

 朝、香澄は髪を纏めていた。夕方音楽室に来た時は、今と同じ『長い髪型』になっていた。香澄は、目をぱちくりさせる。


「ええ。そうなんですよ」「あれまぁ」

「髪の量が多いと『反発力が強い』から、壊れ易いんです」

 そう言って香澄は、納得して頷いている真治が『見ている』のを確認すると、手で髪をなびかせた。

 真治からは、天使の輪がゆらゆらしたのが見える。


「結んだのとぉー、どぉーっちが好きですか?」

「そりゃぁー、今の方が良いよー」

 真治の返事は早かった。香澄は目を垂らした笑顔になる。

「そうですかぁー」

 そう言いながら、香澄は真治に寄り添った。

 まぁ、並木が歩道を時々狭くしているのも、理由ではあるが。


「それに、何か、良い香りするよねぇ」

 真治が直ぐ横に来た香澄の頭に、顔を近づけながら言った。

 香澄は驚いて、ちょっと頭を引っ込めたが、真治は取り残されてそのままでいた。


「汗臭いですよっ!」

 香澄は今までの女性の魅力アピールを止め、自虐の言葉を吐きながらも笑う。そして、真治から離れる。手は離す訳もなく。


「そんなことないよー」

 真治も笑いながら香澄を引き寄せた。

 香澄はちょっと驚き、それでも恥ずかしそうに戻って来る。

 また並木が、歩道を狭くしたからだ。


 香澄は真治が前を向いたので、下を向いて微笑む。

 その時、真治から予期せぬ一言が。


「今度さ、髪留めの丈夫な奴、買ってあげるよ」

「え、良いんですか?」

 香澄が直ぐに顔を上げる。真治は香澄の方を見て、念を押す。


「べっ甲とか、ダメだからね?」

「何ですか? それ」


 香澄の言葉に、真治はガクッとなった。

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