表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/272

テスト期間(十三)

「並ぶのが嫌な感じですか?」「んー」

 香澄の質問は止まらない。真治はまた答えを濁した。


 香澄は開店初日に行こうとしているのか。それともプレオープンの日だろうか。

 いや、プレオープンは『関係者だけ』だから無理か。


 やっぱり開店初日なのか? それは随分と並びそうだ。なにしろ商店街初のハンバーガー屋さんなのだから。


 開店初日に行ったら、それはもう並ぶだろう。ずらっと大行列だ。

 そんな行列に香澄を連れて並んでいたら、確かにそれだけで親に報告が行きそうだ。


 そうだ、壁の方を向いていれば良いかもしれない。香澄とだったら、そりゃぁ『いくら待っていても』構わない。


「あれですか? 『宗教上の理由』で、食べられないとか?」

 香澄の表情は段々と曇ってきているが、真治はそんな表情に気が付かない。


「んー、そう言う訳でも、ないんだけどねー」

 次にできる店は『ハラール』には対応していない。

 そもそもチェーン店なのだから、牛肉を使わざるを得ない。


 スーパーの『パンコーナー』なら、羊肉のハンバーガーでも何とか対応できる可能性はある。


 それでも、調理器具一式を羊肉用に取り揃える必要がある。それはもう『ハラール』の基準は、とても厳しいのだ。

 だからして、そもそもあの叔父さんが、そんな器用なことをする訳がない。

 あ、そもそも自分は仏教徒だし、全然問題ない。


「コーラが、嫌いとか、ですか?」

 香澄は泣きそうになって質問した。質問すればする程、真治の表情が段々と険しくなっていくのが判った。

 何故『行こう』の一言がないのか謎だった。


「そんなことはないけど?」

 真治の答えは、また香澄の期待したものではなかった。

 しかし真治は、どうしてそんな質問になったのか不明なまま、思考を巡らせている。


 コーラを納品するおじさんは、とても良い人だ。

 それに口が堅い。納品時にバッタリ出会っても、客として香澄と食事中であるを見て、からかったりはしないだろう。

 コーラってビンもあるのかな。ビンの方が好きだなぁ。


 コーラの後、真治も香澄も沈黙していた。

 地下道の階段を降り切って、線路の下を歩いていた時だった。質問のネタが尽きたのか、香澄が足を止めた。

 真治は気が付かずに数歩先へ進んだ。


「私と行くの、嫌なんですか?」

 香澄が、ちょっと大きめの声で、真治に問いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ