テスト期間(十一)
「嘘でしょ? じゃぁ、何座ですか?」「ぎょう座!」
定番だ。他にも『便座』これは嫌だな。『歌舞伎座』『南座』この辺ならぁ。
「そんな星座、ありませんよー」
バレたか。仕方ない。実在する星座を答えよう。
「じゃぁ、カシオペヤ座!」「そんな星座も、ありませんよー」
「えー、ありますよー」「あるけど、ありませんよー」
流石に歩くのが速いと思ったのか、それとも『前の二人に追い付く』と思ったのか、真治が少し歩くのを遅くした。
「ちゃんと教えてくださいよー」
「嫌ですよー。何座だか知らないですよー。勘弁して下さいよー」
二人共笑っている。香澄がちょっと考えて言った。
「じゃぁ、出席番号、何番ですか?」
中学の出席番号は、誕生日順なのだ。
「知りませーン」「えー、それは嘘ですよー」
真治は口を尖らせて、笑いながら本当に知らない素振りだ。
「前半ですか? 真ん中ですか? 後半ですか?」
言われた真治は悩む。そう来たか。うーん。考えるんだ。
「普通です!」
「普通じゃないですってー。それじゃ判らないじゃないですかー」
教えていないのだから、当然だ。真治は思い出した。
「判った判った」「えっ? 何日ですか?」
真治は諦めたのだろうか。急に笑顔になった。
「二人の関係を壊す恐れがあるのでお答えできません! ですっ」
笑顔で答えた。これなら文句はあるまい。
しかし、言われた香澄は諦めないではないか。
「ずるーい。私の真似じゃないですかぁっ」「いいじゃんかよぉ」
「オリジナリティが足りませんよぉ」
「そんなことないっしょぉ。最初に提案したの、俺なんですからぁ」
それを聞いて香澄は、やっと諦めたのだろうか。
「んー。しょうがないなぁ。判りました」
少なくともその言葉で、真治はそう思っていた。
しかし、そんな笑顔の真治を見て、香澄は口を尖らせる。
「今度、真衣ちゃんに聞いてみます」
真治が香澄を見た。香澄も真治を見た。
すると真治の顔が真顔になって、それから香澄を睨み付ける。
「聞いたら絶交」
それは早口で、静かな声だった。
言われた香澄は『絶交』という単語について、『頭の中にある辞書』の該当ページを開き、ただ混乱していた。




