表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/272

テスト期間(八)

 二人は昇降口で待ち合わせして、学校を後にした。

 日はまだ高い。授業が終わって速攻で勉強をしに帰る者が殆どで、校門付近は人もまばらである。


 それでも、ネットとボールの準備をしたけれど、部活がないと判って片付けてから帰るテニス部員とか、ゴールにネットを張ったものの、部活がないと判って、片づけてから帰るサッカー部員とか。


 前を歩く仲良し二人を見て、真治が勝手に解説している。

 香澄はそんな真治を、呆れた顔をして見上げると、同類がもう一人いると思った。


「トランペットを泥棒して帰る、吹奏楽部員とか?」

「自分のだから」

 早口だった。真治は左手に持ったトランペットケースをブンブン振って抗議した。

 いずれにしてもまぁ『そういう人達』が残っているだけだ。多分。


 二人の前を、ラケットケースを持った生徒と、サッカーボールを持った生徒が、楽しそうに会話しながら仲良く歩いている。

 だから遠慮して、真治と香澄も距離を開けているが、誰だか知らない二人である。


 実はこの中学、全校生徒千五百名を超えるマンモス校なのだ。

 同学年だけで五百名もいるものだから、全員の顔と名前何て一致しない。そんなことができるのは、校長先生位だろう。ねっ。


 前の二人を羨ましく思ったのか、香澄が聞いてくる。


「小野寺先輩の誕生日って、何月何日ですか?」

 突然の質問に、真治は目を大きくし、口をへの字にする。


「お正月!」

 短く答えて前を向いた。香澄の笑顔は見ていなかった。


「えっ! 一月一日なんですか? 年明けに、年齢+1ですか?」

「そういうカウントするなら、誕生日は一月二日になるのかな?」

 真治は前を向いたままだ。香澄は不思議に思った。

 首をかしげて真治に聞く。


「そうなんですか? お誕生日に、年齢プラス一歳ですよね?」

「違うよ。年齢プラス一歳は誕生日の前日だよ」

「そうなんですか? それだと、何かおかしくないですか?」

 真治は苦笑いして香澄を見る。香澄は不思議そうな顔をしていた。


「一年三百六十五日として、三百六十五日生きていたら、何歳?」

「一歳じゃないですか? 一年だし」

 当然のように香澄は答える。真治は最初から当然のような顔だ。

「じゃぁ、一月一日に生まれた人が、三百六十五日生きたら、それは何月何日?」


「十二月三十一日です。えー嘘だー」

 凄く不満そうに香澄が答える。真治は香澄を指さして笑った。


「ほらぁ、誕生日の前日に、一歳年取るじゃん」

 香澄も理解したみたいだが、いまいち納得できない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ