テスト期間(八)
二人は昇降口で待ち合わせして、学校を後にした。
日はまだ高い。授業が終わって速攻で勉強をしに帰る者が殆どで、校門付近は人もまばらである。
それでも、ネットとボールの準備をしたけれど、部活がないと判って片付けてから帰るテニス部員とか、ゴールにネットを張ったものの、部活がないと判って、片づけてから帰るサッカー部員とか。
前を歩く仲良し二人を見て、真治が勝手に解説している。
香澄はそんな真治を、呆れた顔をして見上げると、同類がもう一人いると思った。
「トランペットを泥棒して帰る、吹奏楽部員とか?」
「自分のだから」
早口だった。真治は左手に持ったトランペットケースをブンブン振って抗議した。
いずれにしてもまぁ『そういう人達』が残っているだけだ。多分。
二人の前を、ラケットケースを持った生徒と、サッカーボールを持った生徒が、楽しそうに会話しながら仲良く歩いている。
だから遠慮して、真治と香澄も距離を開けているが、誰だか知らない二人である。
実はこの中学、全校生徒千五百名を超えるマンモス校なのだ。
同学年だけで五百名もいるものだから、全員の顔と名前何て一致しない。そんなことができるのは、校長先生位だろう。ねっ。
前の二人を羨ましく思ったのか、香澄が聞いてくる。
「小野寺先輩の誕生日って、何月何日ですか?」
突然の質問に、真治は目を大きくし、口をへの字にする。
「お正月!」
短く答えて前を向いた。香澄の笑顔は見ていなかった。
「えっ! 一月一日なんですか? 年明けに、年齢+1ですか?」
「そういうカウントするなら、誕生日は一月二日になるのかな?」
真治は前を向いたままだ。香澄は不思議に思った。
首をかしげて真治に聞く。
「そうなんですか? お誕生日に、年齢プラス一歳ですよね?」
「違うよ。年齢プラス一歳は誕生日の前日だよ」
「そうなんですか? それだと、何かおかしくないですか?」
真治は苦笑いして香澄を見る。香澄は不思議そうな顔をしていた。
「一年三百六十五日として、三百六十五日生きていたら、何歳?」
「一歳じゃないですか? 一年だし」
当然のように香澄は答える。真治は最初から当然のような顔だ。
「じゃぁ、一月一日に生まれた人が、三百六十五日生きたら、それは何月何日?」
「十二月三十一日です。えー嘘だー」
凄く不満そうに香澄が答える。真治は香澄を指さして笑った。
「ほらぁ、誕生日の前日に、一歳年取るじゃん」
香澄も理解したみたいだが、いまいち納得できない。




