なまこ④※ヒーロー視点
ーードンッ!
俺はトラックに轢かれた。
そして俺はいつの間にかお城っぽいところの魔法陣っぽいものの上にいて、正面にいるお姫様っぽい者がこう言うのを聞いたのだ。
「勇者様!」
「ご、ご主人様は?」
「申し訳ありませんが勇者様……」
こうして俺はテンプレ的展開によって勇者となり、魔王を倒す旅に出かけたのだ!
ーー全略。
そしておよそ三年。100万字を超える大冒険の果て、俺は魔王を倒した。
魔界の瘴気により俺の姿はだいぶ変貌してしまった。
猫モードも三毛猫から黒猫になるくらいに。人モードもなんか変な触手が生えるように。
いつかご主人に認められる『すぱだり』になるため、料理も学んだ。金もメッチャ稼いだ。俺の無限収納の中には山ほどの食材と金と宝石が唸っている。
「勇者様、この世界に残ってはいただけませんか」
「姫、俺には元いた世界にご主人がいるのだ。戻る術を手に入れたからには、ご主人の元に戻らなくては」
泣き崩れる姫。だが仕方ない。この世界にはご主人もちゅーるも無いのだから。
「さよなら」
俺は影渡りの異能が進化の果てに神化した神業、次元渡りを使う。
沈んでいく身体。そして俺が次に目を開いた時。
階段で転んで飛んでくるご主人と無数のストロングゼロが目に映ったのだった。




