熱
突然消えたワンが、美優を抱いて戻ってきたが、美優の様子がおかしい。
「ウズデロイド王に何をされた?!」
ルティンがワンから奪おうとするが、ワンは、放さない。
「回復力が遅れている。熱があるようだ」
王都で足場にしている宿屋に戻ると、ニナが付き添った。
「帰りたい、お母さん」
小さく寝言を言う美優の手をニナは握り続けた。
ワンは遠くまで転移しただろうとフランシスは思っていた。
まさか、足元の王都にいるとは知らない。
美優を抱いた時に着いた美優の血。
フランシスは、自分の腕を見ていた。赤黒くこびりついている。
美優は痛かったろう。
直ぐに自己回復するフランシスの身体なのに、庇う美優。
獲物を調理するのも、震えながら処理していたくせに。
恐かったろうに。
ふと、思い出すのは美優の顔。
あれは王妃にはむかない。
あれは、笑っている方がいいのだ。
ワンがしたように、フランシスは腕に着いた美優の血を嘗めた。
美優が残していったもの。
違和感。
身体が火照る、高揚してくる。
長く抱いていた為、腕にも服にも美優の血がこびりついている。
それらを全て嘗めたとしても大した量ではない。
もう一度、血を嘗める。
僅かな血でも、フランシスの中の魔力が反応する。
神獣。
もしも、美優の血を大量に飲んだら・・
神獣は作れる。
自分が、古の竜の肉と魔力で、魔獣を作るように。
マルセウス王国は、美優の血を搾り取って神獣を作ったのではないか?
フランシスの怒りで、フランシスの身体が青白く光る。
「陛下!」
初めての事に、トミーが駆け寄ってくるが、他の者は部屋から逃げ出した。
「問題ない。それより後宮の襲撃犯は、はいたか?」
「治癒魔術をかけながら尋問していますが、まだ背後関係があるかと」
フランシスの前に、様々な報告書が提出されていく。
その中には、フランシスが命じたマルセウスの王子の調査書もあった。
フランシスは、さらに美優の血を舐める。
美優は、本物の神だったのだ。
それを捉えたのはマルセウス王国。
マルセウス王国が、美優の血を使って兵士を強化してくるとか、第2、第3の神獣を作るかもしれない。
その為に、美優は血を絞り取られるのだ。
痛い、痛いと泣いている美優が容易に想像できる。
自分は、美優の力に頼らなくとも誰よりも強い力がある。
大国ウズデロイドの王。膨大な魔力、それを使う深い魔術の知識。
マルセウス王国には既に魔獣を送って、討伐という名目で軍を疲労させている。神獣の存在で様子を見ていたが、美優をあの国に長く置いておけない。
「トミー、グスタフ・ボンボワールはマルセウス王国と繋がっていた。
そういうことだろ?」
襲撃犯であるグスタフを、マルセウス王国の開戦の糸口に使うというのだ。
「はい。
ただ問題が・・・ 神獣はどれほどのものだか」
トミーは慎重にせねばと言っているのだ。
魔法陣を使わないで転移をしてきたのを見ているだけに、神獣と呼ばれるだけはあると、トミーは憂慮している。
「今までのようにはいくまい。
だが、女神を奪還するという目的が出来たからな」
退屈だから他国を征服していたフランシスが、目的があるという。
トミーもこうなれば反対はしない。
「勝つために進軍するのです。
陛下には策が?」
トミーに答えないフランシスだが、怒りを表情にだすのは珍しい。




