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サンセベリアの丘の上で筆を持ち、海を眺める少女の白いスカートの裾が海風に揺れる。足を覆う下穿きのせいで、陶器のようになめらかであろう清麗な肌の質感を未だ想像するしかなく、実見の熱望をひた隠しにする少年の懐かしい香りに気付いたルディアーノは微笑む。
「今日はすこし寒いわ。日が出るのを待っているの。ハーシュ、前にわたしがあげた香水の香りがする。まだ残っていたの?」
「アークにもらったんだ。ルディ、絵具は足りる? ユリエラさんに頼んで送ってもらおうか?」ハーシュメルトは草上に置かれた木箱から緑色の絵具を取った。
「まだたくさんあるから大丈夫よ」
絵具を戻したハーシュメルトは、単色で無造作に塗られた画布を見る。「なにを描くつもり? 海を描くものだと思っていたけれど、やけに黄色い。土みたいな色だ。おおきな太陽でも描くの?」
「海を描くつもりよ。ユリエラさんに教わったの。絵を描く前にこうやって下塗りをしておくと、色がきれいになるんですって。海を描くには何色を下に塗ったらいいのか色々試しているけれど、今回は青い空がときどき見せる夕方の空の色にしたわ。同じ空の色だもの、青と黄色はきっと相性がいいはずよ」
「だからさいきん海ばかり描いているのか。ぼくには違いがわからないんだけど、相性のいい色だったらきっとぼくにも見抜けるだろう。ルディ、上着を持ってこようか、さっき寒いと言っていたね?」
「ありがとう、でも上着はいらないわ。日がでてきた」
幻影の空を過ぎゆく渡り鳥の群れが迷夢の雲をついばんでいく。呪解の陽に照らされた海の表面は透明な氷のように艶めいて、空想に似た深まる色調は果てしなく青いきらめきを放っていた。英知の起源の歌声に、踊り跳ねる妖精のちいさな足にくすぐられ、波がしぶきをあげている。笑い声が聞けるだろうかと、ハーシュメルトは海の上のまぼろしを心に浮かべていた。
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