逢海寛人 7月10日 午前2時58分 渡良瀬市 私立律明学園
キャラがまあ大体出揃った感じなので、キャラ紹介を作ります。
僕らは疲れ果てて、学園まで戻ってきた。
結局、自衛隊には置いていかれてしまったし、響夜さんはヘリで何処かに行ってしまった。一体、何のために基地まで行ったのか。
僕は本日、三十八回目の溜息を吐いた。
「はあ……もう疲れた……」
「学園はもう目の前だぞ。頑張るんだ」
警官の矢島さんが僕を励ました。僕は愛想笑いを浮かべたが、心は少しも笑っていなかった。
僕はふと、道路脇を見た。そこには奴らに喰い散らかされた無残な死体があった。顔からして、男性だったのだろうが、今はよく見ないと分からないほどの惨状を喫している。
僕はそんな死体を平然と見ている自分に嫌悪感を感じた。
「何だか、もう死体も見慣れましたね」
僕の呟きに、傍を歩いていた準一さんが頷いた。
「確かに。私も今まで沢山の死体を見てきたが、今回の死体は特別にグロテスクだな。喰い散らかされて、原型をとどめていないものが多い」
「そうですね。こんなもの見て、慣れたらもう普通の生活に戻れないような気がします」
「普通の生活、ね。私も妻がいるが、今は無事なのかすら分からないな。君の家族は無事なのかね?」
「……家族のことなんてすっかり忘れてました。自分が生き残る事で精一杯ですよ」
僕はそう言い、再び前を見て歩き出した。
出たときと同じように門は閉じていたが、直ぐに開けられるように鍵は掛かっていなかった。準一さんと朝比奈さんと村上さんがその門に手を掛け、横にスライドするように引いた。その間に僕らが門の内側に入る。
全員が入った後で、門を開けた三人が中に入り、反対側から門を閉めた。きちんと鍵も掛ける。
「これでよし、と。響夜は多分ヘリで来るだろう。それにここから来たとしても、あいつなら門くらい超えられる」
「じゃ、早く行きましょうよ。まだご飯も食べてないですよ」
「俺も腹が減りました」
隊員も口々に喋り始めた。
臨時で指揮を執っている準一さんが全員の様子を見て、言った。
「よし、校内に戻るぞ。飯が待ち遠しい」
全員がそれに賛同した。
僕らは校舎の昇降口に向かい、歩き始めた。昇降口には既に人影が見える。どうやら目を覚ました雅人や鈴、警官の鷹見さんたちがいる。あの女教頭も一緒だ。
「寛人、脱出手段は見つかったのかしら?」
開口一番に鈴が尋ねた。僕は首を横に振る。
「いや、ダメだった。向こうも奴らの数に耐え切れなくなったみたいで、退却していったよ」
「……まあ、予想はしてたわ。それで、数が足りないような気がするのは、私の気のせい?」
「気のせいじゃないよ。響夜さんが今、別行動を取っているんだ」
鈴は何も言わずに、頷いた。
雅人は何故か、黙り込んでいる。不安げな表情が読み取れた。
「どうしたんだ?暗い顔して」
「いや、少し考えているんだ。何故、奴らが現れたのかってことを」
「さあな。偶然か、事故か、それとも……」
鈴が続きを呟いた。
「作為的なものか、ね」
「うん。少なくとも、ウィルスである事は間違いないと思う。噛まれたらアウトだよ。特にヘタレは」
雅人が恥ずかしそうに俯いた。僕はそんな雅人を尻目に、先ほどから聞こえているローター音に気付いた。空の向こうからヘリが一機、向かってきている。
「あれ、響夜さんかな?」
僕は呟いた。他のメンバーもヘリを見る。
一番目がいい準一さんが、ヘリを睨んで呟いた。
「おお、響夜みたいだな。場所を空けるぞ」
準一さんの声で、他の隊員も前庭を空けた。ヘリは大型の軍用ヘリで、両側にミサイルが装備されている。そしてヘリの窓から響夜さんの姿が見えた。
ヘリはゆっくりと着地場所を選び、着陸を開始した。風圧で何人かが転んだのが確認出来る。
ヘリは鼓膜を破るようなローター音とともに、前庭に着陸した。ヘリの扉から響夜さんが出て来た。続いて出て来たのは見知らぬ女性だった。
黒髪が綺麗で、顔立ちがとても整っているその女性は、腰に拳銃を差していた。服はその拳銃に似合わず、青いスカートを着ている。
響夜さんが僕らの方に歩いてきた。
「全員、無事に帰還出来たみたいだな。嬉しい知らせと悪い知らせがあるが、どちらから聞きたい?」
「悪い方から頼む」
準一さんが短く言った。響夜さんが話しはじめる。
「まず、脱出手段が断たれた。ここにいる人間を乗せる余裕は向こうに無いらしい。当分はここで生活だな」
その言葉に場の全員が項垂れた。
響夜さんがそんな全員の反応を見て、言った。
「次に嬉しい知らせだ。補給物資がある。このヘリに積んである荷物には食料、日用品、武器弾薬、全てが揃っている。これで生活は保障された」
一同の空気が少し和んだ。響夜さんがそんな一同を押すように、付け足した。
「大人の本、もあるみたいだぞ」
その言葉に一同、主に成人男性陣が歓声に沸いた。それとは対比的に女性陣の軽蔑の眼差しが男性陣を見つめていた。
僕ももちろんその男性陣の中の一人だったが、手放しには喜べなかった。僕はその大人の本よりも、響夜さんの後ろに居る女性が気になった。どうしてかは分からない。虫の知らせというのか、何となく直感的に気になるのだった。
僕は響夜さんに勇気を振り絞って確かめることにした。
「あの、響夜さん。その後ろの女性は?」
響夜さんは女性の肩に手を乗せ、全員に紹介するように前に押し出した。
「彼女の名前は浅代華恋。彼女は御園製薬からの派遣員だ」
「御園製薬!?あの有名製薬会社の?」
「そうだ。今回の事態を収拾するためにボランティアとして派遣されたんだ。こう見えても訓練を積んでいて、特殊部隊として働いていた事もあるらしい。これからは我々と行動を共にすることになった」
響夜さんの紹介を受けて、女性が笑顔で自己紹介を始めた。
「浅代です。よろしくお願いします」
その自己紹介でほとんどの人間が笑顔で迎えたが、響夜さんは後ろで神妙な顔をしていた。もちろん僕もその一人だ。
どうもこの女には裏がある。そう思えて仕方なかった。
神妙な顔をしていた響夜さんだったが、やはり疲れたのか、首をニ、三度回して、全員に向けて叫んだ。
「今日はもう寝るぞ!見張りは俺たちが交代でやる。今後の事は明日詳しく説明する!」
前庭に集まっていた生徒や教師はのんびりとした足取りで帰っていった。僕も疲れていたので、さっさと教室で寝る事にした。
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