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異界転生 人斬りの使い魔と没落探偵  作者: 悦田半次


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26/37

めでたしめでたし

 ガクン、と魔力が斬れたオートマタのようにナツメの動きが止まった。

 同時に、今まで彼女から放たれていた殺意も霧散する。


「これは……」


「嬢ちゃんがやったみたいやな」


 2人は既に満身創痍だった。

 ゆっくりと、ナツメが顔を上げる。

 その目には、確かな理性の輝きがあった。


「ツバキ……」


 久方ぶりのその声に、不覚にもツバキの目頭が熱くなった。


「姉上……!」


 思わず駆け出し、抱きしめていた


「おおぅ、大胆やなツバキちゃん」


 冷やかしの声が聞こえたが、実際ツバキもちょっとやってしまったかと現在進行形で思っている。

 2人の身長差を考えると、真っ正面から抱きつくということはナツメの豊満な胸に顔面から突撃するの図になってしまうのである。

 これでは『再会に感極まった弟』ではなく『おっぱい大好きのエロガキ』になってしまっているような気がしなくもない。


 いやいやだが待て。

 ツバキが突撃したのはあくまで姉上だからであり、おっぱいは関係無い。

 ツバキとナツメはあくまで姉弟だし、何よりこの程度のスキンシップは特に珍しいわけではなかった。


 むしろナツメの方が積極的にやってきてツバキはなすがままな感じであったので、今回はツバキが突撃するという事でバランスを取ることができるのではないだろうかと思わなくも無いというか何というか――と頭の中でゴチャゴチャと考えていたのだが、やがてツバキの背後に手を回されたことで、問題無かったようだと少し冷静になった。


「久しいな……髪を伸ばしているのか?」


 なんでもない会話。

 それが今のツバキにとっては、たまらなく嬉しい。

 本当は聞きたいことは山ほどあった。

 あまりにも早く死にすぎだとか、ツバキが死んだ後はどうしていたかとか。

 だがそれは、後回しで良い。

 今は再会の喜びを噛みしめたかった。


「まあな。姉上は、髪を切ったのか?」


 前の世界では、ナツメの髪の長さは今のツバキくらいはあった。

 が、今は肩をくすぐるかどうかという長さまでバッサリと大胆に切られている。

 これはこれで昔のツバキのようで、さながら姉弟で髪型を交換したような塩梅だった。


「ああ、これか。邪魔だったから切った。こっちの方が動きやすい」


 いかにもナツメらしい回答だ。

ざっくりというか大雑把というか、竹を割ったようとでも言うか。


「俺はまあ、大した理由はねぇよ。ご主人サマが『ツバキは髪が長い方が似合う気がするの』とかなんとか。ご丁寧に結ぶ用のヒモまで買ってくる始末だ」


 自信満々で赤いリボンを渡されてはさすがにいらんとも言えないし、髪型に拘りもなかったため、こうやって伸ばしている。

 意外と戦いの邪魔にもならない。


「……」


 僅かに、ナツメの腕の力が強まった。


「姉上?」

「ん、なんでもない。よく似合っている。相変わらずツバキは美しいな」


 褒められるのは嬉しいが、ナツメの言う『美しい』はツバキが求めるベクトルとはやや異なるところが惜しい。


「――ツバキ!」


 振り向くと、そこには肩で息をしているシルヴィアがいた。

 酷い有様だった。

 負っている傷はツバキ以上だ。

 目には血が流れた痕跡があるし、特に左腕の火傷が酷い。

 しかしシルヴィアは、自分の事よりもツバキ達を見て柔らかく微笑んだ。


「ああ、良かった……やっぱり、成功してたのね」


 自分の体よりも、ナツメが解放されたかどうかがが心配だったらしい。


「て言うか、そっちは大丈夫なのか?」


 ナツメから離れようとしたが、妙に力が入っていたので、首だけシルヴィアの方へ向けながら話す。


「当たり前でしょ? 1週間くらい入院すれば治るわよ」


 前半と後半でいきなり矛盾している気がしなくもない。


「ツバキ、あれが……」

「シルヴィア……まあ、俺のご主人様にあたる人だ」


 正直この呼び方も抵抗があると言えばあるのだが、こう言うときくらいシルヴィアの顔を立ててもバチは当たるまい。


「始めましてツバキのお姉様。私の名はシルヴィア・ブルーム。ツバキの主人ですわ」


 貴族式の礼をするシルヴィア。

 やっぱり貴族なんだなーと、割とどうでも良い感想を抱くツバキ。

 ナツメはじっとシルヴィアを見ていたが、やがて口を開いた。


「……ツバキ。私はあの極道に操られていた時も、意識はあった。体は動かなかったが者は見えた」

「へ? あ、ああ、そうなのか」


 いや、それよりもウチのご主人様について何か反応してやれよと思わなくもないが、ナツメは天然というか少々ズレた所がある。

 今回もそれが発動したのだろうか。


「だから、おまえが剣を振るう姿もこの眼にしっかりと焼き付けていた」

「姉上……?」


 すっと、ナツメが目を細めた。


「――弱くなったな、ツバキ」


 ツバキの手が空を切った。

 ナツメの姿は消えていた。

 背後から悲鳴が上がる。

 振り向いたツバキの眼前に何かが落ちた。


 腕だ。

 その形が誰のものか、分からないツバキではなかった。

 視線を上げると、右腕を失い蹲るシルヴィアの姿。

 そして、抜刀を済ませたナツメの姿があった。


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