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勝手に生きてます  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ニクスのメイド

9/24  15時 誤字報告ありがとうございました。

大変助かります(*^^*)


10/13 15時 誤字報告ありがとうございました。

大変助かります(*^^*)

 「ちょっと、誰かいないの? まったく使えない連中ばっかりね!」



アルオの後妻として入り込んで来たはずのニクスだが、当主のジローラムに反対されて、まだ入籍していなかった。

アルオは程なく爵位を継いで、ニクスを侯爵家の寄子の養女にして籍を入れられると思っていたが、ニクスのことを気にいらないジローラムが、爵位継承を引き伸ばしたのだ。



そのことをジローラムから暴露され、それまでに虐げていた侍女やメイドから敬われなくなったニクス。


仮に籍が入っていなくても、性格が良ければ愛人枠で丁重にされたかもしれないが、威張りまくったことでチヤホヤされることがなく、事務的な対応になりかわったのだ。

せっかく前侯爵夫人や令嬢を知らない使用人で揃えたのに、ジローラムの暴露で散々な状態だ。


ジローラムとて、次期を任せる息子に口だしするのは憚られたが、再婚と言っても酷すぎるニクスには看過出来なかったのだ。


「私はアルオ様に愛されているのよ。それなのに、何なのよ!」


日々癇癪が強まる彼女(ニクス)に付けられた使用人は困惑し、侍女長はメイド長に仕事を押し付ける始末。


「私達侍女は、とても忙しいのよ。だからニクス様のお世話は、全部メイドでしてくださらない」

「え、そんな無理です。出来ません」


「何よ、貧乏伯爵令嬢が逆らう気なの?」

「そんな。でも私達にも仕事が………」


「まあまあ、あんな女のことなんか、適当で良いから」

「無理です「じゃあ、お願いね」


話を遮られ、押し付けてくる侍女達に逆らえず、動揺のあまり膝を突いてしまう。


メイド長だとて多忙である。

だからと言って、侍女の仕事まで他のメイドにさせることも出来ず、生け贄のように自らがニクスの侍女のように働いていた。厳しい暴言を受けながら。


それを知るメイド達は心を痛め、自ら志願して屈辱に耐えていた。それを見てまたメイド長が辛くなるのだった。


「なんでうちの侍女は仕事しないのかしら? 頭に来るよ! メイド長が可哀想じゃん」


「本当そうだよ! なんで仕事放棄してるの?」


バネットが今日も吠えていた。

リオルナリーも同感と首肯する。


冷静なリンダが、問いに答えるように2人を宥めた。


「仕事はしているのよ。ただアルオ様とナジェール様の方だけにね」



そう、彼女(侍女)達は、アルオの妻の座を狙っていた。ついでにナジェールの婚約者の座も。


銀髪で透き通るような緑の瞳の父子(アルオとナジェール)は、良く似て美しい容貌をしていた。

ナジェールは庶子であるがアルオが溺愛しており、血の繋がりがある男児ならばアルオの次期となってもおかしくない。もしアルオが再婚し男児が生まれても、侯爵家の持つ子爵位を持てるのだ。


そしてナジェールは、優しくて大人しく優秀であった為、侍女に人気があった。結婚を望まなくても目の保養になるそうだ。


と言うことで、人はそこに流れていたのだ。

そして侍女はメイドより爵位が高い者が多かった。


此処にいるメイドは、平民、男爵家、子爵家の裕福でない娘が殆んどだが、

侍女は裕福な子爵家、伯爵家、侯爵家の者が多かった。

働いている時点で第一子や二子ではなく、爵位を継ぐ予定のない者ばかり。

だからこそ、高い地位にある者の妻になりたい思いは強くなる。


そしてそのチャンスが来たことで、この惨状なのだ。

可哀想なのは、板挟みのメイド長カロン・スターチェ子爵令嬢(29才)である。

彼女は伯爵家の長女であるが、下に15才違いの双子の弟がいる。彼女の家は裕福ではないのに、両親は弟達にお金をかけて借金もあると言う。それを補う為に結婚もせずに働き詰めの彼女は、伯爵令嬢なのに同じ爵位の令嬢から下に見られていた。


ここに来た時は只のメイドのはずだったのに、爵位の高さでメイド長にされていた。従来の気の弱さもあり常に疲弊し、他人に高圧的になんてなれないのだ。


メイドが辞める度に力不足を感じ辛くなるが、此処を辞められないカロンは限界だった。せめて “メイド長を誰かが代わってくれたなら” と、思う日々が続く。


せめて少しでもその負担を減らそうと、リンダ、バネット、リオルナリーまで、メイド兼侍女を引き受けていたのだ。


「意外とバレないわね」

なんて余裕なリオルナリーを見て、焦りまくるケイシー。

「もう! 何危険なことに首ツッコンでるんだ。バカタレが!」




◇◇◇

「最近は、わりとちゃんとしているのね。キビキビと働いて頂戴」


同じ部屋に陣取り、片付けを見ているニクスは、小姑のようである。

今日のニクス当番はリンダとリオルナリーだ。

メイド仕事をして、この後お茶の準備やドレスの着替えも手伝うのだ。


リオルナリーの怒りゲージが高まると、リンダが声をかけて都度静めにかかる。


(くそババア、座ってないで手伝うか、外に出てろ!)

リオルナリーの歪な表情に、苦笑したリンダが気づく。


「ルナ。バケツが重くて大変だけど、水を換えて来て。お願いね」

はっとするリオルナリーは、笑顔で返事をする。


「はい。行ってきます」


そそくさと部屋を出るリオルナリーは、リンダに感謝した。

(危なかったわ。怒鳴ってクビになったら、追い出されちゃうじゃない。感謝です、リンダ)


それを見ていたのは、

ケイシーと同じく、ランドバーグ・ホッテムズ伯爵に雇われている諜報員の執事マクレーン・ソバンスだ。


(どういうことだ。なんでリオルナリー様がニクスの世話をしているんだ? それも周囲には、彼女ともう1人だけしかいないし、お茶出しまで彼女達がしているじゃないか。侍女は何をしているんだ!)


2、3日潜んで調査し、メイド達は自分達の仕事とニクスの侍女の仕事を熟していることが解ったマクレーン。


選りに選って、リオルナリー様にまで2倍も働かせているとは! 此処の侍女は最低だな。


マクレーンは濃紺の肩まである艶やかな髪で、同じく明るめの青い瞳を持つ爽やかなお兄さんだ。リオルナリーの母親イッミリーにはおしめを換えて貰ったこともあり、姉のように思う存在だった。


「あいつら、許さねえ! ふうーぅ、落ち着け、俺」

口調が荒くなるのを、理性で抑えるのだった。



そうしてアルオに調査した状況と、リオルナリー達の話にあがっていたメイド長の不遇を伝えたのだ。


「そうか。教えてくれてありがとう、マクレーン。てっきりニクスの我が儘だと思って、放って置いたのが悪かったんだ。侍女達に聞いても問題ないと言うものだから。そうか………………」


「余計な口だしではございませんでしたか?」

「いいや、助かったよ。これからもよろしく頼むよ」


「それならば、よう御座いました。力を尽くします」

「ああ、ご苦労様」


礼をして部屋を去るマクレーン。


ニクスとナジェールには盲目になるが、仕事が出来る男アルオ。


「さて、今月の給料だけで良いのか? 何か月分になるんだろうな、侍女の減給額は。まずはカロン・スターチェに話を聞くとするか」


突然次期侯爵アルオに呼び出されたカロンは、動悸で倒れそうだった。けれど今伝えなければ、頑張っているメイド達にこれからも負担をかけることになる。

気弱な彼女は、精いっぱいの勇気を込めて話し出した。


侍女がニクスへの仕事を放り出したのは、ジローラムがニクスとは未入籍だとリークしてからだった。

(今年の2月くらいからなので7月の今だと、6か月弱か。6か月とはなかなかやってくれるじゃないか! 侯爵家を舐めるなんて、勇気があるな。くふふっ)


もう涙も鼻水も出て、ハンカチで拭いながら話しきり、クタクタのカロン。

最後に彼女はこう言う。


「私達メイドはニクス様の侍女のようなことをしても、メイドの仕事には手を抜いておりません。

それから図々しいと思われるでしょうが、他のメイドに侍女からの危害が行かないようにお願いしたいです。私の責任なんです。申し訳ありませんでした」


ヨレヨレで恐怖で震えながらも、他のメイドを庇う健気さ。確かにメイド長をするには足りないかもしれないが、責任感はある女性だ。


そんな彼女に惚れた者が1人。

それはアルオではなく、マクレーンだ。


なんかアルオの後ろで泣いている。

感動して泣いている。

(自分だって辛いのに、なんて強い(女性)なんだ!)




まあその後、侍女が全員アルオの執務室に呼ばれた。

怒られると思っていない侍女達は、逆鱗に触れたことを此処で知る。


あんなに穏やかで人好きのするアルオが、瞠目して睨んでくるのだから。


「最初に言い訳があるなら聞いてやる。ないなら此方から一方的に断罪するが、良いかな?」


執務机に肘を突き、両手を組んだポーズで、沈黙が部屋を支配する。


「ニクス様のお話により私達が侍女の仕事を調査し、旦那様に全てを報告しております。旦那様は貴女方が誤りに気づくことをお望みでしたが、それは叶わず今になりましたとだけお伝えします」 


とんだ嘘も混入しているが、そこは上手の執事職。

その方が話も早くなるでしょ。


「わ、わたくしは、侍女長の誘いで断れませんでした。申し訳ありません」

「私もです。一人だけ勝手が出来ず、申し訳ありませんでした」

「な、なんでよ。貴女達だって、賛成したじゃない?」

「いいえ、それは違います。侯爵令嬢には逆らえませんわ」

「そ、そんな、喜んでアルオ様に時間が割けるって、言ってたわ…………」

「話を合わせただけです」

「そうですわ!」

「そうですわ!」

「そうですわ!」

「そうですわ!」

「そうですわ!」


「嘘です!!!」


1人憔悴する侍女長と、裏切る侍女達。

マクレーンは一人頷く。

(やはりカロンは素晴らしい。普通はこうなるはずだもの。保身に走る者が殆どなのだ)


「もう良い。既にきちんと調べてあるから。2月からの給料分から減給して貰うか、此処を今すぐ辞めるかだ。紹介状くらいは書いてやるぞ」


給料の減額料はアルオ、ナジェール、ニクスの3人の侍女仕事分をニクス分サボった金額だ。だから、1/3の返金となる。


6か月はかなりの額になる。

金貨3枚がだいたいの給料で、金貨1枚が10万円くらいだから30万円分の給料から、10万円を返すことになる。


10万円 × 6か月 = 60万円(金貨6枚) チーン♪


月々の生活で使うから、そんなに残っていないだろう。

辞めるにしても、理由を聞かれれば軽蔑されるはず。

いくらニクスが嫌でも、メイドに押し付けてはいけない。嫌なら辞めるべきだったのだ。



そして全員が月々の賃金から、毎月減額して貰うことで仕事を続けることになった。親に泣きつこうにも自分が悪いので、訴えることもなかった。


そしてアルオには嫌われ、他の侍女には恨まれたのは侍女長コールド・リセル。リセル侯爵家四女である。

当然の如く侍女長は解任され、普通の侍女となった。



今までメイド達が働いた分は、今月の給料に上乗せになり驚くことになる。


だいたいが金貨1枚のメイドの給料。

勿論経験年数で若干の差はあるも、6か月分で6枚多く入っていたのだ。

毎日侍女のようなことはしてないと伝えたも、迷惑料だと渡されたので、みんなが喜んだのは言うまでもない。


以前に辞めたメイドは、メイド仕事しかせず辞めていたので、ノーカウントだ。


「メイド長が伝えてくれたんですね。ありがとうございます」

「ううん、私は今までみんなに迷惑をかけたんだもの。情けないわ。アルオ様に聞かれて、やっと答えたんだもの。遅すぎるわ」


「何言ってるんですか! 見てください。この臨時収入を!」

頷くメイド達。

ずっと文句を言われて、ただ仕事が増えると思っていたから、感動もひとしおだ。


みんなが喜ぶ顔を見て、伝えて良かったと喜ぶカロン。


マクレーンも顔を出し、「メイドの方々に侍女達から被害が及ばないように、アルオ様が手を打っておりますから。ご安心下さいね」


カロンに伝えるように微笑むマクレーン。

マクレーンにも意外とファンが多いが、この瞬間に「持っていかれた」との声があがる。


カロンは気づかないも、わかるメイドにはわかっていた。

「上手く行くと良いわね、マクレーン様」と。



カロンは多く出た金貨は家族には内緒で貯金したので、日々の暮らしが少し楽になった。必要な時はそれを使い、みんなと外食も楽しんでいる。

そして言うときは言えるメイド長として、少し見直されたのである。

以前より自信がついた彼女だが、今後来るマクレーンからの告白には慌てふためくことになるのだった。





ケイシーは、リオルナリーに何もなくて安堵していた。


「寿命が縮むことは止めろよな」


ちっとも気づかないリオルナリーは、臨時収入にほくそ笑んでいた。


「また、スイーツ食べに行こっと。次はあのプリンを。ふししっ」


今日の彼女も、清々しいほど平和だった。


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