↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天上のオルベイル -Arcanx Gear Altwelt-  作者: [LEC1EN]
六 新大陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/111

第四十五話 神話の続編

○

 ジョウの根城となる暗黒に包まれた閉鎖空間。

 スヴェントヴィト帝国の聖封騎士団との戦闘中、半ば強引にそこへと誘われ、一世(かずや)は納得のいかない様子でこの空間の主を睨みつけていた。

 その視線には、明確な怒りに満ちていた。それは、戦闘の途上でこの場に無理やり連れ込まれた事に向けられたものではない。この空間の主……ジョウが過去に行った行為について向けられたものだった。


「お前が、まさかあれ程の大悪党だったとは思わなかった」


 その言葉に、確かな「敵意」が込められている事を見抜き、ジョウは一世の心情をそれとなく察する。


「ええ、大事の前の小事です。本当は、あの国の全てのアルカニック・ギアを手に入れておきたかったのですが」

「そうじゃない。何で、そんな事をしたのか、まずは説明しろと言っているんだ!」


 語気を強める一世に、ジョウはやれやれといった様子で肩をすくめた。視線の端でシイナの姿を確認すると、記憶が戻った事による混乱のせいか、頭を抱えて蹲っている様子だ。


「私の目的は、全てのアルカニック・ギアの合一。これは戦力として運用するのとは、根底から理念が違います。それに、これは私のトリニティアが持つ隠者の棺からの啓示でもあります」

「啓示?」

「はい。あなた達には、未来予測、と言った方が分かりやすいでしょう。それを最初に垣間見た時に、そうしなければ世界が滅ぶビジョンを見せられたのです」

「それで、スヴェントヴィトから棺を奪った、って事か」

「先も言った通り、本当は十三個の棺を全て手に入れたかったのですが、流石にそれは出来なかったですけどね」


 それが如何に難しいだろうかは、実際にマルコとポーロを相手にしてみた一世も理解出来た。それを九機同時に、あるいは連続して相手取る事は、この男であっても難しいのだ。


「それにしたって、もう少し手段はあったんじゃないのか?」

「無理ですね。聖封騎士団は、皇帝の棺の能力である支配の影響を受けています。それは、皇帝機の登場者の意向が行動の第一原則として刷り込まれてしまう事を意味しているのですよ。そして、その縛りの中で、配下は能力をフルに発揮出来るようになる、と」


 高い統率力と能力の引き換えとして、構成員の自由意志に制限をかける。

 そのニュアンスに、一世は思わず嫌悪感を抱く。これまで自由と権利が保証された国で生活して来ただけに、圧政や独裁といったモノを受け入れられない傾向があった。


「嫌悪感に浸っているようですみませんが、彼らも軍人です。自由の剥奪など、それこそ臨む所なのですよ」


 まるで心の中を見透かしたかのように、ジョウは一世にそう告げる。

 そもそも、軍人とは、言うなれば厳しい訓練と任務を以って国を護り、その安全を保証する存在なのだ。そして、それを実現する為には高い統率力が重要となる。

 皇帝の支配の能力は、その為の手段の一つに過ぎない。


「納得できない、そういう顔をしていますね」

「当たり前だろ。そもそも、そういう事が出来るアルカナの棺って何なんだよ」

「ふむ、確かにそこから話す必要がありますね。これについては、少し長くなりますがよろしいですか?」


 腕を組み、ジョウは一世に問いかけた。

 対する一世は、構うものかといった眼差しでジョウを睨みつけている。

 ジョウはその眼差しに応じるように決意を固めると、深く息を吐いた後、口を開いた。

○

「……それは、遥か昔。遠い遠い、こことは違う星での出来事です。その星の人々は、その叡智を結集させて一柱の機械の神とも呼べる存在を作り上げました」


 まるで、昔を懐かしむような口調でジョウはアルカニック・ギア……そしてアルカナの棺の原点を一世に語り始めた。

 ジョウの眼前には、その話を再現した映像が投影され、物語の補完に用いられた。


「それは星の海を往く方舟を管理し、必要となれば自ら戦いに赴く存在だった、と記録には示されています。神は、その身に宿した四十四の権能によって、方舟を襲う脅威を退け、数百年の時をかけ、人類の版図を星の海に広げていきました」


 一世は、ジョウの語る物語が俗に言う「神話」と言うより、まるでスペースオペラか何かのように思えてならなかった。

 その事を思わず口に出すと、ジョウもまたそれを肯定し、話を進める。


「ある日、人々は自分達が生み出したモノとは異なる神と遭遇します。それは、まるで六本の腕を翼のように広げた異形の怪物。そして、星の海に破壊を齎す破壊神でもありました」


 二つの神の邂逅。これが、長きに渡る戦いの歴史の幕開けであったと、ジョウは語る。

 二柱の神は、お互いに星の海を覆い尽くす程の軍勢を率い、人々の住まう星に多大な被害を齎しながら熾烈な戦いを続けた。

 戦いに巻き込まれた星の中には、まるで両断されたかのように破壊された星もあれば、原型を留めないまでに粉砕された星もあったという。

 そして、人造の神と破壊の神の戦いは、ある星の軌道上で、終わりを迎える事になった。

 お互いに、全ての戦力を出し尽くした総力戦の果てに、遂に二柱は直接激突を果たす。

 戦いは何年も休み無く続けられ、その果に激闘によって破壊神の身体は六六六に、人造神の身体もニ十二に分かたれ、その星へと落ちて行った。

 戦いに生き残った人々は、神の眠る星に降り立ち、そこで人造神の遺骸を棺に収め、奉った。


「それが、アルカナの棺の始まり……」


 一世が、話の最中に口を開く。ジョウはそれを肯定するが、まだ話には続きがある。


「長きに渡る旅路と戦いの中で、人々は神に依存していき、それを生み出した叡智の大半が、既に消え失せていました。それは人類の積み重ねて来た歴史と技術の断絶であり、やがて星の海に散らばった人々は、お互いに星を行き来する事も無いまま、そこで原始的な暮らしを強いられる事になったのです」


 これまでに見せた事の無い、悲しい表情が、ジョウの顔に現れる。

 それは歴史の断絶と人類の衰退を憂いたものか。それとも……。


「そして、そんな時です。先に彼らが復活を遂げました」

「アナンタの獣か」


 一世がその先の文脈を理解し、口を開く。ジョウもその言葉に対して「正解です」と指を鳴らす。


「壁峰(マウンテンウォール)の向こう側から現れたアナンタの獣は、ノヴァ大陸のレイを吸収……と言うよりも暴食し、陸地の大半を大砂海へと変えていきました。ノヴァは、かつてそこに住んでいた幾百もの部族が手を取り合い、獣に対抗する目的で成立した国だったんですよ」


 スペースオペラもかくやと思われた神話がこの世界の歴史に繋がっていく実感を得ながら、一世は「なるほど」と相槌を打った。


「人々は、辛うじて維持して来た戦力……スートアーマーの原型となった兵器でこれに対抗しました。当然、アナンタの使徒はそれを上回る力でこれを一方的に蹂躪したのは、言うまでもありません。ですが……」


 そこで、再び歴史の表に現れたのが、アルカナの棺だった。

 最初は神具として祀られたそれを、単なる願掛け程度で持ち出しただけなのかもしれない。だが、やがてその力がスートアーマーに変化を齎し、棺との融合が始まった。

 これが、アルカニック・ギアの始まり。

 つまりは、この世界で繰り広げられている戦いは、お互いに相容れぬモノ達との生存戦争だったのだ。


「その戦いは人類の勝利によって幕を下ろし、アナンタの使徒はその大半が滅せられました」

「それでも使徒達は未だ暗躍を続けている。それはどうしてだ?」

「奴らは、我々人間とは様々な意味で法則が異なる存在です。とは言え、その究極的な目的は唯一つ。分かたれた存在の復活です」


 破壊神の復活。それによって再び星の海へと旅立つ事が、アナンタの目的であるとジョウは言う。無論、この世界を破壊し尽くした上で、だ。


「そして、それに対抗する為には、全てのアルカナの棺を集め、同じく再統合する必要があります。そして、その中心にあるのが……」

「世界のアルカニック・ギア、オルベイルか」


 一世がジョウの意図に気付き、ジョウは彼の回答に「正解」と答え、指を鳴らす。

 だが、それと同時に一世はジョウの語った言葉に違和感を覚えていた。

 それは、彼がスペースオペラという概念を知っていた事。

 つまり、この男もまたこことは違う世界から誘われた存在であるという事を、暗に示していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。