表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/222

疑惑の来訪者と愛の誓い2

ああもう、なんでこう人生のビッグイベントって一気に押し寄せるんでしょうかね! ミモザの出産報せを聞いて飛んできたはいいものの、廊下を曲がったらサーシスとロータスが剣の稽古してる最中で、これまたややこしい。いや稽古してる場合じゃなくありません? 「だってオレたちは見守るしかないから」とサーシスが呑気な顔で言うもんだから、焦りすぎなわたしが空回りしてるのが余計にみじめじゃないですか!

「しかしミモザ様、もう産気づいてるんですよね?」と急かすと、「ええ、でも男衆が押し掛けても足手まといかと」とロータス。ごもっとも。わたしも大して詳しくはないけれど、産むのはミモザ、サポートするのは専門家。不安が募ったところで役に立てることなんてそんなにない…はず。

けれど実はミモザから「あなたがいると落ち着くの」と泣きつかれたので、慌てて来たんですのよ。命の誕生がかかった現場、もう大事件ですよ! わたしがこうしてテンパる理由も分かっていただけます? 


「とりあえず顔を見せてやれ」とロータスが背中を押すものの、「いや、産声が聞こえてからでいい!」とサーシスが青ざめた顔で固まってる。なんなら彼、わたしより数倍緊張してる気がするんですけど。まるで自分が産むかの如き深呼吸の連続。

「サーシスはここで見張り役なんじゃなくて?」「ち、ちがうよ、オレはただ…その…失神したくないだけだし!」

はいはい、分かりましたよ。剣の稽古で汗ダラダラのあなたが分娩シーンに立ち会ったら、確実に床に大の字で倒れ込むでしょうしね。水くれ救急車呼べ~って。というか馬車しかない世界でしたわね、まあどっちでもいいけど。


そんなこんなで廊下をすっ飛ばしてミモザの部屋に潜入。ドアの向こうからは、「ふーっ、はーっ」と呼吸を乱すミモザと、「落ち着いて、あともう少しだから!」と励ます助産師の声が混ざり合って、こちらまで息苦しくなるほど。

でも、その奥にいるミモザの旦那さまのベリスはもっと心配そうで、顔が青を通り越して白い。見れば見事なへっぴり腰で、ミモザを支えるつもりが逆に支えられてる姿に思わず吹き出しそうに。いかんいかん、笑ったら怒られそう。

「ヒィ~…がんばれ、ミモザ…」

「あなた、しっかり…ああっ!」

夫婦のやり取りが一番リアルな生き地獄ってやつですね。けれど誤解しないでほしいのは、これは深い愛に根差した壮大なコントでもあるのですよ!


わたしも隅っこでそわそわ。「あの、飲み水とかタオルとか、何か要る?」って差し出すも、助産師さんが超絶冷静な声で「ありがとうございます、でも今はとにかくリズムよく呼吸させるのが先決」とビシッ。ああ…わたし、無力。微妙な罪悪感を抱えてると、なんでも屋のロータスがつかつかと現れ、「落ち着きを保ちましょう。赤ちゃんにも伝わりますから」って…あなたまで出入り自由ですか。まあ心強いけど。


さらにその後ろから、じゃきっと剣を差し直したサーシスがひょっこり顔を出し、「赤ちゃん、もう出る? うわ…こ、こっち見んじゃねえよ…!」とわたしを見てオロオロ。ちょっと何を期待してるの、この人。わたしがお産にハッスルしはじめたらどうするつもり? 大丈夫、まだ痛みも何もないよ、わたしは傍観者だから。

「お前まで入ると混乱するでしょ!」と助産師さんに叱られ、サーシスは即退場。さすがプロ、バッサリいきますね。まるで社交界の冷酷な令嬢みたいな手際のよさに感服。


そんなやり取りを繰り返すうち、ミモザから響く声がだんだん甲高くなっていく。まさに佳境。みんなの心臓が同時にドキドキしているのが見えるレベルです。ベリスは「お前ならできる!」なんて必死に応援してるけど、そっちが倒れないといいんだけどなあ。

と、その瞬間――「おぎゃあああ!」という元気すぎる泣き声が部屋を突き抜けました。わたし、思わず息を止めて、ミモザを見やります。

「ああ…生まれ…た…!」

ミモザは満身創痍ながらも、すごく安堵した表情。それを抱え込むベリスの表情はもう、なんて形容したらいいのか分からないほど泣き笑いでグチャグチャ。でもめちゃくちゃ幸せそう! 


「おめでとうございます、女の子ですよ!」

助産師さんがにっこり告げると、周囲が一気に大歓声! 外で待機してたサーシスやロータスもそろって「おおーっ!」と叫び、廊下にまでわーわー祝福ムードが伝播していく。いいですね、この一体感。

腕の中に抱かれた赤ちゃんは、見た感じ父親似…かな? まだ涙で視界が霞んでるベリスに「目鼻立ちがあなたそっくりですよ」と教えてあげると、「そ、そうか…オレは悪人顔じゃねえよな!?」とか若干失礼な心配をしてます。ごめんベリス、あなたの顔はわりと優男系だと思うよ。


それにしても、赤ちゃんという存在は不思議な迫力がありますね。たったいま生まれたばかりなのに、この空間全体をパッと明るくしてしまう。いつものわたしなら「フッ、ハッピーエンドですわね」くらいでおしまいだけど、今回は違います。胸がぐっと締め付けられる感じ。

将来、もしわたしにもこんな一大事が訪れたら……どうなるんでしょう。テンパりすぎて廊下で三回転ひねりしそうだし、ルーファス様に至ってはオロオロするどころか喜びのあまり倒れそう。って、想像だけで汗かいてきましたよ!


そんな複雑な感情が交差する中、赤ちゃんが「おぎゃっ…」と一声。ミモザの腕の中で、柔らかい頬をぷくりと膨らませています。

「あらあら、今度は何を主張したいのかしら?」

思わず顔がほころんでしまう。隣にはベリスが溶けそうなほど優しい視線を注いでるし、その光景を見ているだけであたたかくなるんですよね。人生そんなに甘くないって分かっていても、この瞬間だけはドラマみたいに綺麗なんです。


そんな至福の空気に、サーシスがひそかに忍び寄ってきて、「…無事で良かった」と声をかけてくれました。照れ隠しに鼻をこすったりして、まったく素直じゃない。でも彼らしさ全開で和みます。

さらにロータスは「これで公爵家の将来も、より一層賑やかになりますね」と、何か含みある笑み。そう、次はわたしの番…かもしれない。いや、まだ予定も何もありませんけど! というか遠い話ですから!


でも少しだけ、心の奥底でほわっとした熱が生まれたのを感じます。わたしにも、いつかこういう奇跡が訪れる日が来るのかもしれない。もしそうなったら、大ドタバタになること間違いなしでしょう。想像だけで頭がクラクラしますが、それも悪くないかもしれない。

――ま、わたしは“悪役令嬢”として生きて大胆にやらかす女ですもの。将来がどんな波乱でも、最後にはゲラゲラ笑ってハッピーにしてみせましょう。


「さあ、盛大にお祝いしなくては! 今日という日は、ミモザとベリス、それに新しく生まれた娘ちゃんにとって最高のスタートですわ!」

そう宣言すると、みんなが「おおー!」と歓声を重ねてくれました。ドタバタと感動と、ほんの少しのざまぁ感(?)が入り混じったこの瞬間こそ、人生の醍醐味。わたしの胸に、ドクドクと新しい鼓動が響いている気がします。


新生児はまだ何も知らぬ世界の住人だけれど、もう既にわたしたちをこんなに振り回してくれるんだから、きっと大物間違いなし。せいぜい刺激的な人生を味わわせてちょうだいな! そして、その流れにわたしもちゃっかり乗っかって、次々に降ってくる展開を派手に料理してみせるつもりです。

さあ、ここからが本番。わたしたちの“幸福怒涛ロード”はまだまだ続きますわよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ