大盛況
25、大盛況
放送の翌日、朝から何となくそわそわしていた。無事であればいいのだが。心配していると、姉の前田尚子も心配して開店前に来てくれた。
「昨日テレビに店のことが出ていたから心配になってきたんだけど、お客さんが殺到したらどうするの?」
と言った。杉下は
「そうならないようにNHKさんにはお願いしたんだけど。」
と言いながら
「お客さんがたくさん来てしまっても、営業方針は変えないよ。平日は1日25杯、土日は40杯、蕎麦がなくなったら営業は喫茶のみ。老夫婦でやれる範囲を逸脱しないのがポリシーだよ。」
と平常心を強調した。同じように心配した長女の梓もやってきた。急遽4人体制で受け入れ準備はできた。開店時間の11時になった。特に変化はなくまだ誰も入ってこないが、11時30分ごろから急に駐車場に車が止まりだした。2組4人が入ってきてから立て続けに2組5人、4組のお客さんで2階は瞬く間にいっぱいになった。4組のお客さんが食べ終わる前に次のお客が来たので、玄関先の椅子に座って待ってもらうことにした。2階のお客さん担当は娘の梓、外のお客さん担当は妻が、出来上がった蕎麦を2階に届けるのは姉がしてくれた。12時過ぎには25杯の蕎麦の注文が入ってしまったので、外の看板を準備中に裏返して、本日の蕎麦の営業は終了とした。わずか1時間ほどの出来事だった。外にいた妻は駐車場に来たお客に
「申し訳ありません。蕎麦がなくなってしまいましたので、後日のご来店をお待ちしております。」
と何組かのお客にお詫びをしていた。この店の大盛況は2週間ほど続いた。土日は特に激しく、11時に並んでいたお客さんだけで、40杯を終了してしまう事態になった。午後1時を過ぎると喫茶のみの営業で暇にはなったが、11時から1時までは戦争のような忙しさで、老夫婦だけでは全く対応ができず、長女と姉が毎週土日に来てくれるようになった。
しかし、そんな大盛況も3週目には落ち着いてきた。しかし、蕎麦好きの皆さんに大きな印象を植え付けたみたいで、平日も一定数のお客が入るようになり、経営的には安定してきた。




