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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第二章 城塞都市 ヴェルスタッド
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第45話 走れ走れ走れ

「な、なんだこれぇ!?」

「ブオオォォォン!!」

「お、おい暴れるなこっちまで…うわぁぁ!!」

「ぐ、ぐぅぅ…!クソォ…ダメだ…!」



 目の前に広がる阿鼻叫喚の地獄絵図

 地面に倒れ伏し動かない者

 暴れ出す騎乗用魔獣

 そして暴れる魔獣に巻き込まれ倒れる者



(なんだこの魔術は…。)



 まんまと罠に嵌められたことに対する怒りよりも目に飛び込んでくる光景の衝撃が勝ってしまっている。



「御大将!報告します!敵の仕掛けた魔法陣により歩兵、魔獣騎兵の足が潰されました!」

「見ればわかる!」



 ふざけているのか…?

 我等を焼く罠を仕掛けることもできただろうに…。


「魔獣騎兵は魔獣を放棄!動けなくなったものは踏み台となり動ける者の礎となれ!」

「ハハッ!」


 舐めた真似をしてくれる…!


「まさか()()()()()()とは…たまげたのぅ。」

「亀人の。」


 そう、我々がはまった罠は張り付く地面。

 もがけばもがくほど粘ついた糊のような物が体に絡みついて身動きが出来なくなる…だけの罠だ。


「矢も射かけてこねぇとは舐められたモンだなぁ、オイ?」

「確かに侮られているとしか思えないな、癇に障る」


 城壁に迫ったタイミングで術を使われてしまったので無事に動けるのは後陣の魔術兵か、騎兵たちしかいない。


「影分身達は動けそうか?」

「いや、アカンわ。一回解除して作り直せばイケそうやけど…魔力的に数は滅茶苦茶減るで。」

「それでもいい、影分身を作り直し先行させろ。」

「はいな。」


 ポン!と音を立てて地面に捕らわれた影分身達が姿を消し、再び影から生えるように現れたが…


 数は先ほどの3分の1ほどだろうか。

 大幅な戦力減だが仕方あるまい。


「さぁ、お行きなんし。」


 指示に従って一斉に影分身達が走った。

 身動きの取れなくなった味方や魔獣を足場に風のように走り、あっという間に城壁へと辿り着く。



「かかれ!」



 先陣の指揮官が指示を出すと影分身達は壁を登り始めた。

 我等にかかれば垂直の壁など登ることは容易い。




 しかし…




 ビタンッ!



 ビタンッ!ビタンッ!!



 壁に取り付いた影分身は樹液にたかる虫のように動かなくなってしまった。



「まさか…あの壁もなのか…。」

「してやられたのう…。」



 あの壁にまで魔法陣を書くなど一朝一夕でできるはずが無い…!何もかもが規格外だ!

 次の手を考えるべく頭を悩ませていると伝令が駆けてきた。


「御大将!」


 募る苛立ちに思わず声を荒げる。


「なんだ!?壁のことなら見えている!」

「いえ、敵が打って出てきました!」

「何!?」


 遠方を見やると城門が少し開いている。

 ここまで動きを見せていなかったがここで仕掛けてくるか!

 我々の心を折ってから蹂躙するつもりか小癪な…!


「我らも出る!敵の数は!?」

「単騎です!」

「単騎だと…!?」


 単騎で出てくるとは正気の沙汰ではない。

 もしやこれも敵の策なのか!?あぁもう解らん!


「し、しかも…。」


 眉間に皺の寄った顔に恐れをなし伝令が口ごもる

 まだ何か有るのか!?いい加減にしろ!


「何だ!?申せ!」

「ハ、ハハッ!そ、その敵なのですが…浮いているんです。」



 その報告に居合わせた族長達と思わず顔を見合わせた。



「「「「浮いて…いる…?」」」」



 ―――――――――


 ゴオオオオオォォォォ…


 矢や魔法が嵐のように飛び交う中、風のような速さで景色が後ろへ流れていく。

 城門を出てから目的地まで一直線、トップスピードでの移動だ。


「ハァッハッハッハ!!!これは愉快愉快!!!」

「だから言ったじゃろ?面白いものが見れると。」

「これは凄いですね…こんな戦い方私初めて見ました。」

「ほんまけったいな事しはるわぁ、おかん…堪忍な…。」

「やっぱ旦那はやることなす事ぶっ飛んでるねぇ!」

「ギュアー♪」



「…。」


 後ろに乗せている客たちのテンションが高いが、俺は今すこぶる機嫌が悪い。


「お、なんじゃ?まだヘソ曲げておるのか?子供じゃのー。」

「レオンさん、このデザイン神々しくて私好きですよ!」

「俺は前の方が良い…。」


 そう、今俺の屋台はいつものボロ屋台モードではなく神器モード全開なのだ。

 金ぴかギラギラで装飾品が山ほどついたゴテゴテの移動式神殿みたいなあの状態だ。


 俺としてはこの状態の屋台を人に見せたくなかったのだがハルが真理眼でこの状態の事を知っていたので、活用しようと言い出したのだ。


「仕方あるまいて、地面は魔法のせいで走れたもんじゃなかろ?」

「だったら浮遊(フロート)で飛びゃいいだろうよ!」

「そうしたら相手の魔法や矢でハチの巣じゃろ?だからこの屋台が最適なんじゃよ。」


 ハルが言っているのは提灯に使われている「魔払いの灯」の効果だ。

 当初俺は悪意を持った人間や魔物を遠ざけるモノだと思っていたのだが、この炎は敵意・悪意を持った人間が放った矢や魔法も燃え散らす事が解ったのだ。


 実際今も射かけられる矢や魔術兵が放つ魔法が一定の距離で打ち消されている。


 そういう訳で究極の防御シェルター且つ、空が飛べる、ということで俺はバブリーゴッド屋台を引いて空中を全力疾走している。


「誰だこんなはた迷惑な魔法陣書きやがったのは!」

「ワシじゃよ。」

「チクショオオオオォォォォ!!!!覚えてろよおおおぉぉぉ!!!」


 ダンジョンに潜る前にハルに「相手を殺さずに無力化する策」を講じて欲しいと依頼していたが、まさか俺の粘着(スティッキー)餅床(フィールド)を戦場全体に張り巡らせるとか頭がぶっ飛んでる。


 多分今城の中で魔術師達が必死こいて維持用の魔力を流し込み続けているはずだ…。


 もし魔力が切れたらその瞬間にそこかしこに転がっている奴等が動きだしてしまうから急がなければならない。


 だから死ぬ気で全力疾走なのだ。

 さっきから山程矢とか魔法が飛んでくるけど気にしていられない。



 そんな俺の尽力もあって敵陣はもう目と鼻の先だ



「もうすぐ着くぞ、皆掴まれぇ!」



 至る所から俺たちを止めようと兵士たちが飛び出してくるが知ったことではない。


「オラァァ!!」


 トップスピードのまま屋台をぶん回し無理やりブレーキングした



 ズザァァァッ!!!!



 華麗なドリフトを決めて屋台が敵陣ど真ん中で停車した。


(我ながら見事なドリフトだったぜ…。)


 達成感と共に顔を上げると敵意に満ちた眼差しが俺に向けられていた。

 そりゃそうだよね、本陣にいきなり飛び込んだんだから。



 どうしたもんかな、話そうにも問答無用で飛びかかってきそうだ。


 対応に困っていると兵達を掻き分けて偉そうな金髪の男が現れた。





「…お主は何者だ?」





 視線は俺に向かって向けられている。




「あ、えーっと…和平の使者?です。」


お読み頂きありがとうございます。


久々の屋台神器モード!

いつか使おうと思っていた設定が使えてひと安心です。


戦場をかけるデコトラのような屋台…超シュールですね。

屋台が強すぎるって?いいんです、神器ですから。


時々忘れそうになるけど神様達が丹精込めて作った神器ですからね。そりゃ破格でしょう。


さて、和平はうまくいくのか、次回ご期待下さい!

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