第31話 で、味は?
「はぁー、見事なもんじゃのー。」
偽りの夜空に咲いた大輪の花火
淡い蛍火の様な色を放つそれは辺りを飛んでいた他の幽霊に燃え広がった。
「「「キィァァァァーー!!?」」」
俺からしてみれば綺麗な花火だが奴等にとっては堪ったもんじゃないだろう。
段々と光の色が青色に変わって舞い始めた。
いやぁ、これはこれで綺麗だな
ーーーって。
「あ、いかん忘れてた。」
気付けば燃えたそばから魔物達が粒子化している。
青い光は魔物が消える時に発する光だ。
幽霊だけに何も残さずに消えるのかと思っていたがどうやら違うようだ。
焼け落ちていく幽霊から細かい粉のようなものがパラパラと舞っている。
「これでいけるかな?【真空穴】」
掌を基点に空気を吸い込む気流を作り出す風魔法を唱え粉を集める。
手元にどんどんと白い粉が積もっていくので片っ端から保管庫に投げ込むと無事に吸い込まれた。
(保管庫に吸い込まれたってことは…これも食えるのか。)
手元に残った白い粉の山をマジマジと観察しているとハルが解説してくれた。
「それはエクトプラズムじゃの。呪術や降霊術で媒介として使われる粉じゃ。それを使って魔法陣を書くと効果が強まるからワシも偶に使っとるのじゃ。」
「なるほど…で、美味いのか?」
某ダンボール愛好家のようになっている気がするが食材ならば食わなきゃ始まんないよな。
「やっぱりそうなるんじゃな…結論から言うと、解らん。」
「ハルでも知らないことあるんだね?」
358年の知恵袋でも知らないことはあるんだな。
「当たり前じゃろう!エクトプラズムを魔術に使っても食べるなんぞこれっぽっちも誰も考えんわ!」
魔法陣に使うとかいってたから俺の言動は白線の粉を食おうとしているようなもんか。
幽霊から出てきた妖しい粉だし無理もないか。
「すまんすまん。んじゃちょっと試してみるわ。」
「あっ!お主っ…!」
ハルに止められる前にペロッと粉をなめてみた。
唾液を絡ませ舌で転がすように味わう。
んー…。
これは…。
「だ、大丈夫かのレオン…?」
アワアワしながら上目遣いでハルがこちらを見上げてくるが俺はエクトプラズムの味見で忙しい。
ーーゴクリ
散々味わい尽くした後、舌と喉がキュッと攣縮するような感覚。
そして舌に残るこの味覚は…
「苦いな。」
「苦いんじゃそれ…。」
でもアレだ。
ちょっと塩気も感じたし、この苦味はミネラル質から来る苦味だ。
もしかするとアレに使えるかもしれないぞ。
「ハル。」
「な、なんじゃ?」
そうと決まればやることは決まっている。
「取れるだけ取るぞ。」
ここの幽霊達は総て狩り取らせてもらうとしよう。
またいつこれるか解らないしな。
「う、うぅ…もう嫌じゃこの変人!!心配して損したのじゃーーーー!!!」
――――――――
目を爛々とさせる俺とは逆にハルは泣きべそをかいていたがなんだかんだ手伝ってくれている。
やはり持つべきものは良き友だな!
そうしてこの階層の幽霊達をあらかた狩り尽くし、次の階層へ進む算段を立てていた
その時。
「ん?」
魔力探知に不思議な反応が引っかかった。
「なぁハル。」
「お主も気付いたか。」
「うん。」
引っ掛かった反応は4つ。
1つは人間の反応なのだが、他3つの反応がおかしい。
人のようでいて人でない、そんな反応だ。
「まだ間に合うかもしれんの、行くぞレオン。」
「あいよ。」
ハルはこの反応の意味を分かっているようだ。
俺もなんとなく想像出来ているが…、急いだほうがよさそうだな。
俺たちは素材の回収もそのままに魔力反応の元へ急いだ。
「見えたぞ!」
走りながら感知した場所へ急行すると人影が3つ佇んでいた。
白と金を基調とした神聖さを漂わせる騎士鎧に身を包んでいるが…ありゃもう手遅れっぽいな。
騎士達の身体からは黒いモヤが立ち上り、禍々しい雰囲気を発している。
「あの3人は手遅れじゃの。屍鬼化しておる。」
屍鬼とは出来て間もない死体に幽体が宿った魔物だ。
特徴は人肉を主食とする事と、強靭な肉体。
死体だからかリミッターが完全に外れていて予想外の動きをしてくる強敵だとハルから聞いた。
その3人の足元には黒いモヤに包まれた人型が転がっている。
まだ辛うじて人間の魔力を発しているから助けられるかもしれない。
「レオン、あの3人に向けてさっきの花火を打ち込めるかの?」
「いいけど素早い奴なら避けられるぞ?」
「そこは気にせずとも良いのじゃ。」
「分かった。」
走りながら腕に魔力を集中させ聖炎を練り上げる。
すると屍鬼騎士達が一斉に振り向いた。
「「「ガガッ…クゥァァァ!!」」」
奴等が苦手とする魔法だから敏感なのかもしれない。
「そらよっと!」
俺が砲丸投げの様に火球を放り投げると一斉に騎士達が散った、フルプレートの鎧をものともしない早さだ…!
これはやっぱり無理があったんじゃ?
と思った刹那
ーーーバクン!
地面が火球諸共騎士達を喰った
巨大なトラバサミのように隆起した地面、これは土魔法の大地喰だな。
結構な術なのにこの速度で発動させるのは流石としか言いようがないな。
「遅いんじゃよノロマが。」
ハルがそう言うと中から ボフン! という音と共に屍鬼達の断末魔が聞こえた。
上手く聖炎が爆ぜたみたいだが…いやぁ、エグい手を使うなぁ。
「な?うまくいったじゃろ?」
「お見事、んで奴等はこのまま蒸し焼き?」
「いや、もう反応から見ても大丈夫じゃろ。」
パチンとハルが指を鳴らすとユックリと大地喰が口を開いた。
中には白い煙をあげる騎士達と中央に横たわる人影が有った。
まだ魔力反応は残っている、間に合ったようだ。
2人で駆け寄るとその人影は先ほどの3人よりもほっそりとしたフォルムの鎧に身を包んでいた。
「大丈夫…ッ!?」
声をかけようと近づくと頭の周囲の地面が変色している。
血…!?
兜を見ると後頭部の部分が大きく凹んでいる。
これはマズい。
「レオン!」
「分かってる!」
このままでは治癒魔法がかけられない。
治る途中で凹んだ兜が食い込んでしまっては意味がない。
頭を揺らさないように慎重に抱きかかえ、兜を外そうとするが強い魔法が込められており中々外せない。
こうなったらしょうがない、荒技だが…
「許せよ…!破鎧」
ハルから習った闇魔法の一つ破鎧を唱えると鎧全体にピシピシと亀裂が入り
砕け散った
「え?」
「ほ?」
すると鎧の中から現れたのは年端もゆかぬ
ーーー金髪の少女だった。
お読み頂きありがとうございました。
評価、ブクマいつもありがとうございます!
さて本編。
新キャラ登場…?です。
どうですかね、キャラ出し過ぎですかね?
ちょっとここら辺自信ないんですが…。
今まで登場したキャラを纏めると
神様 4柱
家族 5人+主人公
騎士団 1人
商会 2人
城塞伯+ハルヴェニー
計15人
…多いのか?
神様は4柱で1セット的な感じなのでまぁいいのかな、とか思ってます。




