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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第二章 城塞都市 ヴェルスタッド
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第27話 ラーメン、それは無限の可能性

「ラー…メン?」


 冒険者の兄ちゃんはまたしても硬直している。

 皆同じようなリアクションするから面白いな本当。


 それを見かねてまたチンピラ風冒険者が助言を始めてくれた。


「兄ちゃんいいから、熱いうちに食え!俺みたいにこう…思いっきり啜るんだよ!」


 ズルズルズルッ!!!


 チンピラが手本を見せるように一気にラーメンを啜る。

 そうそう、行儀なんて関係なく本能のままにむさぼればいいのさラーメンは。


「お、おう。こうか?」


 そういうと兄ちゃんも麺をフォーク絡めて啜った。


 ズルズルッ!


 お、いい啜りっぷり。

 出来ない人は出来ないんだよね麺を啜るの。



「う、美味い…!」

「だろぉ!?」

「あぁ!なんだこれ!?すげぇ美味いぞ!?」


 ふふふ、それもそうだろう。


 ここ最近修業の合間を縫ってスープの開発をしていたのだ。

 相変わらず醤油や味噌、鰹だしが存在しないこの世界でコクのあるスープを開発するのは至難の業だった。


 だが、アドーラから入手したレイジボアの骨に、前々からため込んでいたロコバードの骨。

 そしてシーラから仕入れた香味野菜の数々。


 これらの食材をうまく組み合わせるとこれはまた美味いスープが出来上がったのだ。


 骨太のうまみを演出するためにレイジボアとロコバードを駆け合せたスープをベースに香味野菜のうまみを追加したWスープの塩ラーメンだ。


 麺はもちろん穀倉都市ケルノン産のギムを使った上質な中太ちぢれ麺。

 最近手に入りにくくなっていたのだが、後継の騎士団補佐として残ったウェイグに頼んだらシーラ商会に優遇してくれた。

 今度会うことが有ったら労わなくちゃな。


「兄ちゃん、うめぇのは分るが一気に食いすぎるなよ?」

「し、しまった…もう半分以上食っちまった…!」

「まだそれだけあれば上々だ、今度は上に乗っている肉と一緒に味わってみろ…!」

「こ、こいつもまた美味そうだな。」


 トッピングは2種類のチャーシューに煮卵、ポレンソという青菜のラインナップだ。

 特にチャーシューはレイジボアとロコバード各々の肉にあうように味付けをしているこだわりの逸品だ。


「じゃぁ…いくぜ…?」

「おう、楽しんで来い!」


 なんでラーメン啜るだけなのに冒険に出るような会話になってるんだこの二人。


 ハグッ…


「う、うめええぇぇぇ!!!」

「だろぉおぉぉ!?」


 テレビのグルメリポート張りにオーバーリアクションだなこの二人。

 でも本当にうまそうに食ってくれるからまぁいっか。


 ―――その後もトッピング一つ一つに大げさなリアクションをとる二人に苦笑するしかなかったが、さっきまで死にかけていた男二人が肩を叩きあいながら一杯のラーメンについて熱く語り合っているのを見るのは料理人として嬉しい限りだ。


 なので先ほどの礼もかねてチンピラのほうには替え玉をサービスしたら泣いて喜ばれた。

 そんなに気に言ってくれたのなら無事生きて帰ってまた店に来てほしいものだ。



 こうして期せずして開催することとなったダンジョン内での営業は概ね成功を収めたのだった。



 ―――――――――――


「大将!色々と有難うよ!」

「ヴェルスタッドの街で見かけたら必ず寄らせてもらうぜ!」

「はいよ、またのお越しをー。」


 来た時の死に体が嘘のように活力に満ち溢れた様子でチンピラと兄さん達は帰っていった。

 なんだかんだで4.5人同じ境遇の冒険者がいたので皆で上層を目指すらしい。


 俺の料理を食べたから能力も上昇しているだろうし、大丈夫だろう。


 このまま生きて帰ってくれれば俺の店のいい広告塔になってくれるだろうし、是非無事に地上に戻ってほしいものだ。


「やれやれ、やっと終わったかの。」


 屋台の上で昼寝をしていたハルが声をかけてきた。


「ごめんな、思った以上に客が来ちゃったからさ。だけどハルも結構堪能しただろ?」

「まぁのー、替え玉というシステムは魔性のからくりじゃの。」


 不満を言う割にハルも替え玉をして8杯はラーメン食ってたからな。

 美味しいものをいっぱい食べて昼寝をしたのならば機嫌が悪いわけないな。


「それじゃ、気を取り直して行きますか。」

「おー!」


 屋台営業をしたせいで随分と時間を食ってしまったが俺達は今第四階層に居る。


 第三階層までの魔物は全然相手にならなかったので目についた魔物だけ狩りつくして食材や材料の補充を行いつつこの階層まで進んできた。


 この階層の魔物も少しは攻め手に工夫がみられるが、魔力探知で場所は筒抜けなので正直他愛もない。

 集団戦闘を仕掛けてくるゴブリンと呼ばれる小鬼や、天井から奇襲を仕掛けてくる蝙蝠(シャドウバット)が居るかと思えば透明なゼリーの塊のような魔物、スライム。


 色々出てきたが父さん仕込みの剣術・ハルから教わった魔法の前では正直雑魚同然だった。


 そして残念なことにこのあたりのモンスターは可食部が少ない…!


 辛うじて食べられそうなのが蝙蝠(シャドウバット)の翼膜とスライムの核ぐらいだろうか。


 翼膜は見る限りコラーゲン質なのでスープに入れればいい味を出しそうだ。

 スライムの核は海綿質なので味をしみこませたりする等すれば使い道はあるだろう。


 いやぁこういう食材こそ意外にうまかったりするから本当楽しみだなぁ。

 さっき手持ちがない冒険者から料金代わりに素材を貰えてラッキーだったぜ。


「そんなゲテモノまで料理する気とはお主を甘くみとったわい。」


 保管庫を除きながらニヤニヤと笑う俺を見てハルが蔑むような目線で俺を見てくる。

 失礼な奴だな人の料理さんざん食べておいて。


 さっきのラーメンスープにこの翼膜を入れたらトロミがついて美味くなるかもしれないんだぞ。


「ゲテモノ程美味しいこともあるからね、試食には付き合ってもらうよ?」

「うげぇー勘弁してほしいのじゃ…。」


 料理の世界はトライ&エラーだらけだ。

 毒のあるフグの卵巣やこんにゃく芋等、そのままじゃ食べられない物をどうにかして食べたいと先人たちが工夫を積み重ねてきたから前世の食生活は豊かだった。


 この世界はその努力の影が見られない、ならば俺がその道を切り拓くのだ。




「さぁさぁ弱音吐いてないで次の階層行くぞー!」

「ふぇーい。」




 次の階層にはどんな魔物、いや食材が有るのか実に楽しみだ。


お読み頂き有難うございました。

そして途切れないブクマに評価、有難うございます!

徐々にポイントが伸びて嬉しい限りで…これで明日も生きられます。


作者が生まれて初めて食べたラーメンは醤油ラーメンでした。

でも感動したのはラーメン本体よりもメンマだった気がします。

この作品でもメンマ登場させたいんですけど、メンマって発酵食品なんですよね…。


作品を書けば書くほど発酵食品のありがたさが身に染みる今日この頃です。


それでは次回もお楽しみに!

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