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屋台転生 〜その料理人最強につき〜  作者: 楽
第二章 城塞都市 ヴェルスタッド
30/64

第26話 鳥ガラ豚ガラ命カラガラ

 ハァッ 


 ハァッ 


 ハァッ


 駆ければ駆けるほど喉がヒリつき、脇腹が痛む。

 だが()()から逃げる為には足を止めている暇はない。



「畜生!こんなの聞いてねぇぞ・・・!」



 第三階層まで余裕で歩を進めていたのに、第四階層に足を踏み入れた途端にコレだ。



「ギィッ!ギギギィッ!!」

「ギギィッ!!」

「クソッ、まだ追ってきやがる!!」



 不快な鳴き声とヒタヒタと這いよる足音



 ――――ゴブリンだ。



 第三階層まではレイジボアや角兎(ジャッカロープ)等の動物系の魔物が多く生息する草原フィールドが広がっているが、第四階層からは様相が異なる。


 ジメジメとした薄暗い洞窟、それが第四階層だ。


「ギィァッ!!」

「しつっこいんだよ!」


 飛び掛かってくるゴブリンを振り向きざまに切り捨てる。

 辛うじて振るったロングソードはゴブリンの肩に吸い込まれ致命傷を与えることに成功した




 だが…



「ぐぅっ!!」


 突如として腕に痛みが走った。

 目をやるとゴブリンが握っていた小刀が腕に刺さっている。


「小賢しい真似を…!」


 憎まれ口を叩きながら小刀を引き抜き後方に投げつける。



「ギャッ!」



 暗闇に吸い込まれた小刀は運よく他のゴブリンに当たったようだが足音の数は減らない。


(こうなるんだったらちゃんと忠告を聞いておくんだったぜ…。)


 ギルドから第四階層からは危険度が増すことや、パーティーを組むことが推奨されていること。

 これらを無視して進むことは自己責任である旨を伝えられていた。


 しかしそんな有難い忠告を無視して、最近昇格した俺ならばイケると踏んで単身腕試しで乗り込んだのだがそれが甘かった。

 単体で現れ、大した知能もなく力任せに突っ込んでくる第三階層までの魔物と違い、第四階層の魔物は狡猾に冒険者の命を狙ってくる。


(クソッ、パーティー組んでりゃ違ったのかもしれねぇな。)


 しかし、今更言っても仕方がない。

 どこかこの辺りで狩りをしているパーティーが居れば泣きつくことは出来るかもしれないが

 今のままだと魔物を押し付けることになってしまうからそう助けては貰えないだろう。



 そう思った途端



「うおっ!?」


 足がもつれて盛大に転んでしまった。


(何だ!?急にフラついたぞ…?)


 急ぎ立ち上がろうとするも…体に力が入らない。



(これはヤベェ!ヤベェッ…!)



 後方からはまだ足音が聞こえてくる。

 少し先ほどより距離があるようだが、まだ居る…!


 多分さっき刺された小刀に毒が塗ってあったんだろう。

 だが解毒ポーションなんざ持ち合わせていないし、何よりあったとしても飲んでいる暇などない。


「ここでっ・・・終わりかよっ・・・。」


 思わず絶望の言葉が口をついて出る。

 先輩冒険者に聞いたゴブリンに襲われた奴の末路は聞いている。


 滅多刺しにされて死ぬか遊ぶように甚振られて死ぬか。


 そのどちらかだ。



(死にたくねぇ…。)



 そう思うもこの結果を招いたのは自業自得だ。

 数時間前の自分の判断の甘さと根拠のない自信を呪いつつその時を震えて待った。




 しかし



(足音が…近付いてこねぇ…?)



 確かに居るのは分るのだが、一定の距離を保ったところで留まっているようだ。

 何故かは分らないがチャンスだ。


 この先に何があるかわからないがこの機を逃したら死ぬ未来しかない。


 力が入らない体に鞭を打ち


 少しずつ


 だが確かに


 必死に這って前へ進んだ。



 すると



 ――――人の声がした。



(ありがてぇ!)


 しかも一人じゃないようだ、何人かで話している声が聞こえる。

 どこかのパーティーだろうか?

 恥を忍んで全財産擲ってでも助けを乞おう



 なりふり構わず最後の力を振り絞って進むと、開けた空間に出た。



 しかしそこには、目を疑う光景が広がっていた。



「何…だこれ…?」



 洞窟には不似合いな和気あいあいとした空気。

 その中心には淡い光を放つ紙で作られた赤いランプを掲げた屋台。

 そしてその灯りのもと何人かの冒険者が所狭しと椅子に座り、何かをしきりに啜っている。



(ダンジョンの中なのに…飯食ってやがる…!?)



 思わず地に伏したまま呆然としていると、屋台のほうから声が上がった。



「お、レオン。また客のようじゃぞー。」



 ―――――――――――――――――


「お客さん調子は大丈夫?」

「あ、あぁ…お陰で問題ねぇ…。」


 這いつくばるように現れたこの兄さんも加護水を飲んだらすぐ元気になった。

 さっきも似たような症状の人がいたから同じ対応をしたんだけど、間違っていなかったようだ。


(一人で来るとか無茶するよなぁ。)


 俺がそんなことを考えていると、様子を窺うように冒険者の兄さんが尋ねてきた


「その…助けて貰っておいて悪いんだが、いったいここは何だ?」

「あぁ、ここかい?」


 尤もな質問だ。

 俺もここで営業するつもりはなかったんだけどな…。


 実は少し前に小腹がすいたから飯にするかと屋台を出してハルと飯を食っていたのだが、偶然通りがかった冒険者パーティーや、この人のように命からがら逃げ込んできた人が物欲しそうに飯を眺めてくるので料理を振舞っているわけだ。


 幸いガリノスが授けてくれた「魔払いの灯」のおかげでダンジョン内といえども屋台周辺には魔物が寄り付かない。

 なので今ここは疑似セーフティーエリアと化しており、冒険者がたむろしているわけだ。


「あまり詳しく話せないけど、れっきとした飯屋さ。魔除けの結界を張ってるから魔物も来ないから安心して。」

「そ、そうか…。まだ信じられねぇがそういうことにしておこう…。」


 そうだよねー。

 他の人もおんなじこと言ってたよ。


「そ、それでさっき貰った解毒ポーションはいくらだ?払わせてくれ!」

「解毒ポーション?」

「さっきの痺れをとってくれたやつだ、すぐに毒が抜けたという事は高品質のポーションだったんだろ?」

「あーあれウチがタダで出してる水だから。サービスだよ。」

「サー…ビス…!? タダ…!?」


 さっきから痺れ毒にやられてくる人軒並みおんなじ反応なんだけど。

 説明が若干めんどくさくなってきた。


「そんなはずはねぇ!いやそうだったとしても幾らか払わせてくれ!」

「そうはいってもねぇ…。」


 ずいぶんと義理堅いお兄さんだこと、しかし困ったな。

 俺がめんどくさそうに頭を掻いていると先客のチンピラ風冒険者が口をはさんできた。


「おい兄ちゃん、そう思うんだったら飯を頼め。この坊ちゃんはそうでもしねぇと金を受け取ってくんねぇぞ。」


 このチンピラ風冒険者も兄さんと同じように痺れ毒にやられて転がり込んできたクチだ。

 この人も金を払うとうるさかったので、だったら飯食ってその分払えといったのだ。

 同じようなことになると踏んで言ってくれたんだな、助かる。

 後でサービスしてやろう。


「そ、そうか…。で、では俺も同じものを一つ頼む。」

「あいよ!」


 今日売っているものはサンドイッチのような作り置きが出来るものじゃないので一手間が必要だ。


 料理の準備のために俺が寸胴と向き合っているとさっきの客同士が話し始めた。


「あんたも腕試しのノリで来ちまった感じか?」

「あぁ…。鉄級から銅級に昇格して舞い上がって…って感じだな。」

「ははっ!奇遇だな俺と一緒だ。俺もこの屋台がなけりゃお陀仏だったぜ。」

「本当、この屋台さまさまだな…。」


 俺は冒険者じゃないからよく解らんがそういうもんなのかね。

 後でハルにでも聞いてみるか。


「なぁ兄さん、飯食い終わったら俺達と上の階層まで戻らねぇか?他にも二人ばかし同じ境遇のやつがいてよ。」

「それは願ったりかなったりだ!是非頼む!」

「よし、それじゃよろしく頼むぜ。今度はお互い慎重にいこうぜ。」

「あぁ。」


 あっという間に話がついたようだ。

 こういう話の流れの速さは屋台客同士ならよくあることだよな。


 前世でも常連客同士が仕事を始めたり、はたまたくっついて結婚したり。

 色々あったなぁ。

 

 まぁ人助けになったのならばそれはそれで良かった良かった。



 ―――っと。



 そろそろいい感じに茹で上がったな。



 ざっと湯切りしてからスープと絡ませて、と。

 トッピングをちょちょいと乗せれば…

 

 出来上がりだ!


「ほい、お待ち!」

「こ、こいつはなんだ?」


 独特の香りと湯気を立ち昇らせるどんぶりを前に冒険者の兄さんが戸惑っている。

 無理もなかろう、これまた異世界初発信のメニューだからな。



 だからこそ敢えて教えてやろう!



 魂に刻み込むがいいこの至高のメニューの名を…!




「これはな、ラーメンっていう食いモンさ!」


お読み頂き有難うございました。

まだまだ首の皮一枚で更新が続いております…!皆様の応援のおかげです有難うございます。


さて、本編ですが揚げ物に続いてラーメンの登場です。

やっぱ屋台といえばラーメンでしょ!


職場の最寄り駅に屋台が出るので飲みの後についつい立ち寄ってしまうんですよね。

現実世界では都会のオアシス、異世界ではダンジョンのオアシスが屋台ですよ。


しかし書いていて思いましたがダンジョンの中に突如として屋台が有ったらかなりシュールですよね。

でもそういう世界があってもいいんじゃないかな、と思ったりもします。

(不思議のダンジョン系のショップだってそうだと思いますし。)


さて、次回もお楽しみに!

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