俺の地図
「本当に目的地を知ってるんだよね?」
「もちろんです」
旅の途中でアイスを買いに行く案内人。
それにその後もこれはなんですか、あれはなんですかと俺に質問してばっかり。絵本で見たことがあるようなものだったから答えられたけど、俺のほうが説明しているのはやはりおかしいと思う。
訝しげな目で彼女の方を見ると、彼女はしてやったりと言わんばかりに紙を掲げる。
「なんだこれ?」
「地図です」
いや分かってるけど...。彼女の見事なまでのドヤ顔に、俺のツッコむ気力は失われていった。
「さっき買ったんですよー」
「さっき買ったの?ホントに俺を案内する気あった??」
そう聞くと、彼女は少し寂しそうな顔をした。なぜだかは分からない。彼女は表情をころっと変えて正論を放った。
「現地の人に聞くのが一番なので」
「そうなのか...」
俺は彼女の地図を覗き込んだ。そこにはご丁寧に地獄という文字が書かれてあって、赤いペンで丸をしてあった。周りにいる妖精たちが地獄を目指すことはなさそうだから、地獄への地図を買ったというのは考え難い。彼女がこの地図を完成させたのだと思った。
だが、地獄以外に俺の分かる文字はない。案内人にしかわからない言語なのかもしれない。
それに、今俺が頼るべきは地図ではない。
「案内人さん、俺の向かう方向はどっちですか?」
俺が聞くと、彼女は嬉しそうに教えてくれた。
「東に向かいましょう!」
俺も笑顔で答えるが、どの方向が北なのかを俺は知らない。彼女がきっと導いてくれるのだろうと考えて、彼女が歩き出すのを待つが一向に進む気配がない。
「あのう、死者様。」
「何?」
「コンパスを買い忘れました」
「...分かった」
もうこれくらいでは動じない。彼女の性格はよく分かっていた。
彼女が買ってきた何の変哲もないコンパスが、これからの冒険の道具のような大切なものに見えた。




