荒野の運び屋 ワタリガラス
ここは、惑星ニューウィンド。
遠い昔、地球を脱出した祖先が発見した次なる星。
人類の歴史に新たな風が吹いた事を記念し名付けられた。
しかしこの惑星には知的生命体が住まい、移住者である人類を目の敵にし友好関係を築かなかった。
人類は、四面楚歌の状態でサバイバルを強いられる。
そんな中、遺跡で発見された機械生命体。
ダチョウを思わせるその見た目から〈ランバード〉と名付けられ、人類の家畜代わりとなって生活に役立ってくれた。
文明レベルが著しく下がった入植当初から、今では都市や鉄道が生まれ、人類は惑星での生活を十二分に行えるまでになった。
ランバードは、人の生活にはかけがえのない存在となり、その機動力や走破力を活かし傭兵や憲兵、運び屋を生業とする者が現れ始める。
そして現在〈文明都市メトロポリス〉と〈大陸間横断鉄道〉へと発展させるのであった。
ストーリーオブニューウィンド
荒野の運び屋
俺は、ワタリガラスと言うモンだ。
大陸間横断鉄道運送部ワタリガラスに所属している。
相棒の機械生命体ランバードと共に大陸の端から端へ荷物を届け人々の暮らしを支えるのが仕事だ。
元々ワタリガラス商会と呼ばれていたが、人口増や鉄道開発、インフラ整備が重なって今じゃ色んな部が出来て色んな奴が働いている。
もちろん運送部もそのひとつ。
今日も駅横の支所には荷物が届いているはずだ。
「お、来た来た。お前さんにピッタリな依頼があるよ。誰もやらず困ってたんだ」
それは、大陸の最東端にあるイーストマリンタウンに行った時の事だ。
昔は海産物と農産物で栄えた町だったが、時代と共に寂れてしまい若者はほとんど出て行ってしまった。
皆、憧れと最先端を目指し文明都市メトロポリスへ出て行く。
かく言う俺も、そのはずだった。
ライフルを担ぎ、乗機のランバードで大地を駆け、都市の平和を守る。そんなメトロポリス機動憲兵団に入る事が夢だった。
が、なんの因果か運び屋稼業をやってる・・・いや、それはどうでもいいんだ。
俺にピッタリな依頼がある。
イーストマリンタウンの支所長はそう言った。
寂れた町なので基本荷物は生活必需品がほとんどであり、個人は仕送りとか特産品を運ぶ程度。
ましてや高額な報酬の依頼など。
だが、その依頼はこうだ。
・依頼
ある人物の文明都市への護送
・品物
少女
・お届け日時
なるべく早く
・お届け場所
文明都市メトロポリス
・報酬
前払い 4000000yel
後払い 10000000yel(イェル、貨幣の総称)
・備考
傷を付けぬよう丁重に。荒事を起こさず目立たず迅速に運ぶように。
と、まあ。ざっとこんなもの。
報酬の0が普段より多いこと多いこと。
正直、胡散臭い。
基本的に公平性を遵守し、裏がありそうな依頼は断るのが鉄道のやり方なのだが・・・。
俺は思い切って所長に聞いた。
「一十百千万・・・。所長さん。まさか、受けなてないよね?なんか、その。危ない感じ。しない?」
「いやね。もう支払われちゃってるのよ。前金。ね?頼むよぉ」
と、言う所長。手を合わせて拝んでやがる。
「えぇ〜!」
もう前金もらってる!?
つまりようは、裏の仕事である。公には出来ないが、高額な報酬かつ危険な依頼の事で、鉄道を維持していく為の必要悪らしい。
ワタリガラスと言う黒をイメージするからには、そっち方面の仕事をしていたとは。
どうやら、商会の頃からやっていた、いわゆる伝統らしい。
いけ好かない。非常に、いけ好かない。
俺も、入った当初。そんな事やって死んだらどうする!リスク高すぎると思ったね。
しかぁし!スリルがあってやりがいはある。と言うやつもいるが、自分は苦手だ。
人は物より精神を使うから。なるべく回避したい所、死にたくはない。
「うーん。けど、ザックリしすぎだから、もう少し詳しく」
「それが、依頼主からの前情報はこれだけ。ワタリガラスの受託を確認次第、護送者を送る。だそうだ」と、所長は首を振った。
「依頼主自身の情報は?相当な金持ちな訳だし。と言うか、メトロポリスまで護送なら機動憲兵団に任せれば」
とまで話した所で口を挟まれた。
「それができない御人だからこっちに回って来たんだろう」
それを聞き、相当裏がある依頼主であり、本能的に『コレはあかん奴だ』と感じた。
何より、今までの依頼より何倍も高い報酬だ。怖い怖い。
「もしかして、狙われてたり、誘拐とかじゃ・・・」
恐る恐る聞いてみた。
所長は表情ひとつ変えず答えた。
「可能性は、ないことはない。全くの白じゃあないね」
俺は、身の危険を感じた。
「あ。俺。用事あるんだった。悪いけど、別の奴に頼んでくれる?」
逃げる思いでまくしたてたが、腕をガシッと掴まれてしまった。
「待って!頼むよぉ〜。最近、ウチも閑古鳥が鳴き始めちゃって、業績上げないとダメなんだわ。いずれ吸収合併されちゃうよ〜」
業績云々については、地方だから仕方ないさ。と、一言で片付けたい。人口は減る一方だし。
あと、あんたの所長と言う地位を守りたいがためだろ!
しかし、一応人は住んでる訳で。その人たちの為に俺たちはいる訳で。
と、黙っていた俺を見て何かを決心した所長は、ギンッとした目で身を乗り出してきた。
「ジャンケン」
と、腕を振る。
勢いに押され、俺も腕を振る。
「ボン!」
所長はチョキを出し、俺はパーを出した。
「前金の200万出す」
所長は、ニヤリと笑う。
くそ!せめてもの抵抗だ!
俺は所長の油ぎった顔にパーを押し付けた。
「いいや。500万だ!」
翌日、社員寮にて。
「ハァァー。結局受けちまった」と、起き抜けの独り言。
起き上がり、シャワーを浴び、服を着替え、カラスが入ったワタリガラスのエンブレムバッジを左胸につける。
それから荷物をまとめて支所裏口に向かった。
俺は地味なマントを羽織って準備しながら待っていた。
相棒のランバードと共に。
ランバードとは、この惑星での生活に欠かせない機械生命体だ。
この地に降り立った最初の人類が出会った友好的な存在らしい。
全体的につるりとした丸いフォルム。空気抵抗を最小限にするためだとか。
初めから人を乗せるためにあるように座り心地が良い背中をしていて、本で見た馬にも似た性質を持ってる。
「よ。相棒。よろしく頼むぜ」
俺はランバードに話しかけ、背中に水と食料を積む。
ランバードは、何?と言うかのように首を傾げた。本当に生物みたいな反応をする。
「仕事だよ仕事。ホラ」
そうして、支所の裏口に少女を連れた老人がやって来た。
依頼主はこの老人であり、少女は孫かと思われたが。
「ワシは頼まれただけだ」
と、ぶっきらぼうに答えてそそくさと去って行った。ますます怪しい。
だが、少女を見て驚いた。
水色のドレスを着て、透き通るような肌を持つ、人形のような少女。
無表情だが、その顔に俺はデジャブを感じた。そう。俺は以前、この子と会った事がある。いや、そんなはずない。なぜなら10年以上も前の話だから。だからこの子は、似ている子にだ。
しかし似ているなんてものじゃない。
記憶と全く同じ。
まるで記憶から飛び出してきたと言っても過言じゃないくらい。
美化しすぎな部分もありだろうが、それにしてもだ。
そう。
あれは、俺がまだ10歳そこらの時、家族に連れられ、初めて汽車に乗った時だった。最後列に儚げで悲しげな顔の少女が歌を歌って・・・。
なぁーんて。それより仕事仕事。
「ワタリガラスだ。よろしく」
俺は、挨拶した。
少女は、軽く会釈するのみ。
ま、お互い知らない方が良いか。
「嫌かも知れないが、これを羽織ってくれる?その格好は目立つから」
と、地味なマントを渡す。
意外にも、少女は素直に羽織った。
良かった。お嬢様ぽいから嫌がると思ったのだが。
俺はランバードを駅員に渡し、少女を連れてホームへ向かった。
ランバードは一緒には乗れない。貨物室でがある。
汽車に乗った俺たちは2人掛けのシートに並んで座る。
もし誘拐とか思われたら困る。それに、この子が誰かに狙われているとしたら極力目立たないようにしなくてはいけない。
鉄道は人が多くかつ移動する。身を隠すにはうってつけだ。
迷ったが、ランバードを走らせるより何倍も速く文明都市メトロポリスに着く。
人目を避けて森や荒野を越える方が危険だ。主に、耳長族やゴグなんかのモンスターに遭遇する可能性があるから。
奴らに見つかれば逃げるか戦わねばならない。そりゃゴメンだ。
危ない橋は、そもそも渡らないか急いで渡るに限る。ゆっくり歩いては怖くなるからな。
サッサと届けて金をもらおう。
汽車の汽笛が鳴り、動き始めた。
目指すは大陸の真ん中にある〈文明都市メトロポリス〉。
さらば我が故郷、いざ文明都市へ。
なんてな。
ゴトンゴトン、ゴトンゴトン、ゴトンゴトン。機関車は走る。西に向かって。
今の所は順調。
だが、誰もしないから俺に回ってきた依頼とは言え、相変わらず護衛は慣れない。
不思議と乗客の視線が気になってしまう。自意識過剰だと思う。久しぶりだからかな?
観光客だろうおばさん4人組が何やら喋っており、こちらをチラチラ見ている。くそ。
斜め前の男なんか、帽子にヒゲおまけにケースを背負っている。傭兵にしか見えない。違いますように。
なるべく息を殺し俯くしかない。
そう考えていると、各駅停車のため汽車は停まった。
その時、人と物が入れ替わる。
窓からは、同業者のワタリガラスが荷物を運んでいるのが見えた。
そうして緊張が続く各駅停車。
文明都市メトロポリスまではあと10駅と言った所。まだまだ先だ。
「えー乗客の皆様。荷物の搬出搬入のため、しばらく停車致します。しばらくお待ち下さい」と、アナウンスが入った。
ま、仕方ない。俺は水の入ったボトルを少女に渡す。
「喉、渇いてない?」
少女は一瞬考えたが、受け取り一口飲む。口の端から水滴が伝って下に落ちた。
彼女が口からボトルを離すと、ポチャリと中の水が音を立てた。
少女はボトルを返してきたが、俺は言う。
「持ってるといい。好きな時に飲んで」
彼女はボトルを引っ込め両手で持った。
緊張してはいるが暇なので気ばかり焦る。
それはそれで厳しい。
気分転換でもしよう。
ふと、窓を見やると、白い人影が見えた気がした。が、良く分からなかった。
気にしすぎだと思うことにした。
なるべく話さない方が良いんだろうけど。
こうも暇だと気になってしまう。そこで。
コソッと少女に聞いてみる。
「君はどうしてメトロポリスへ行きたいんだい?」
だが、返事はない。まぁ、だよな。
ツライっちゃツライ。
するとまたアナウンスが入った。
「乗客の皆様、大変お待たせしました。ただ今、発車致します。揺れる場合がございますのでお足元には十分お気をつけ下さい」
と、汽車は動き出した。
静かに、ほっと息をつく。
俺は、残りの時間をどう過ごすか思案する。
とりあえず、都市に着いたらまず支所に問い合わせよう。それから、久しぶりだから観光でもするか。都市の名物ってなんだっけ?
そう考えてると。ん?
何やら前が騒がしい。
よく聞いてみると。
「こちら、メトロポリス機動憲兵団。今からこの区間の乗客をチェックする。身分証とチケットを見せるように」とのこと。
憲兵たちの声が近づいてくる。
彼らは、白い制服に身を包んでいる。
規律、ルールを重んじ潔白の正義を掲げる。そう込めて白を着ていると言われている。
じゃあ俺が見た気がした白い人影は、彼らだったのか。
メトロポリス機動憲兵団。文明都市を取り締まる憲兵だ。隊員が機動力の高いランバードを乗りこなし、事件や事故に即対応する。
だが変だ。なぜ彼らが?たまに都市外の見回りをするとは聞いていたが、鉄道をチェックするのはそうそう無い事だ。
第一、組織が違う。どう言う事だ?
乗客の男が聞いた。
「どうして身分証を出さなくちゃならない?理由を教えてくれ」
憲兵の1人が答えた。男の声だ。
「いちいち理由を言わんと提示も出来ないのか?あぁ後ろめたい何かがあるのか?」
答えになってないし、それじゃチンピラだ。
すると、やめろ。と、真面目な憲兵が制し代わりに答えた。これも男。
「ある少女を誘拐した犯人を探しているんです。この汽車に乗ったと情報があって、聞き込みも兼ねて行ってるんですご協力願えますか?」
それを聞き、質問した乗客は不機嫌だが何かを差し出した。
「私はただ、仕事で乗ってる。少女なんて知らん。ほら、見せるから」
そうして、憲兵は確認していく。
段々と近づいてくる。
いやいやいやいや。マジかよ!どこでどうなったらそうなる?誘拐?
どうする?このままやり過ごせるのか?
今の内に逃げ出すか?
いやでも、そもそも迷子を届けるだけなんだから、なんて事ない。なんては事ない。
俺、明らかに怪しいじゃねぇーか!
「はい。よろしい。次、あなた方」
と、憲兵はどんどん近づいてくる。
「いやよ!どうして見せるの?私達の楽しい旅行が台無しじゃない!」
そうよ!そうよ!と、おばさま4人組が抵抗する。
ナイス!これでもう少し考えられる。
俺は少女を見ると、変わらず無表情に俯いている。
このままなら、言い逃れはできそうだな。
子供には身分証は与えられていない。なんとでも言える。ワタリガラスの特権を使い、親戚の子に都市を見せてやりたい。とでも言おう。
俺はやり過ごす事を選んだ。
おばさま方はブツブツ文句を言いながら渋々従い、確認は終わったようだ。
「だから私、公務員って嫌いなの!」とか吐き捨てている。
これには、憲兵の1人が噛み付いた。
「クッソ、観光客風情が!!メトロポリスなら公務執行妨害でしょっぴいてやる所だぞ!」
それを、まあまあと宥めるもう1人。
そして俺たちの番が回ってきた。
「おい。お前の身分証を見せろ」
ガラの悪い方が声を掛けてきた。
俺は、なるべく平静を装って対応。
「あの、自分ワタリガラスなんですが」
「ワタリガラス?なんでも良い。なら積荷も確認するぜ」
「あ、今日は休みでして。姪をメトロポリスに・・・ちょ、ちょと!」
そこで少女を見た。少女は憲兵を見ると怯え、逃げ出した。
ゴトっとボトルが床に落ち、水が流れる。
「お、おい!なぜ逃げる?!」
「君の顔が怖かったんじゃない?」
何ぃ!?と、ガラの悪い憲兵が嘆き、真面目そうな憲兵が茶化す。
この隙に追いかけよう。俺は少女の後を追う。
「待て!ワタリガラス!止まれ!おい!」と、真面目な憲兵が叫ぶが、止まっちゃダメな気がするので構わず走った。
彼女を1人にしちゃいけない。そう思った。彼女は汽車の後方に行った。幸い、ランバードがいる貨物室の方向だ。
背後で、憲兵たちが走りながら通信をしていた。
「隊長、不審人物を発見しました。至急応援を要請します」
「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
ガラの悪い憲兵が銃を構えて言うが、その先は客室だしそのまた先は貨物室だ。
大丈夫、撃てやしない。多分。
次の客室に入る。
意外に少女の脚は速い。乗客の間を潜るように進んで中々追いつけない。
ただ、憲兵はいない。後ろの奴らがここも担当するはずだったんだろう。好都合だ。
この先は貨物室。車掌もいて鍵を管理しているはず。
「ふぁぁー。どうしたんです?立ち入り禁止ですよ」
あくびをしながら車掌が聞いてきた。
「ここを女の子が通らなかった?」
俺は、ワタリガラスのバッジを見せながら質問を質問で返した。
「いや、見てないですね。あぁワタリガラスでしたか。荷物の確認ですか?」
「そうそう。ランバードにエサもやらなくちゃと思ってね」
ナイス車掌!マイペースな人で助かるぅ!
「じゃ開けます。でもすぐ出てくださいね」
「了解」
そうして貨物室に入り、ランバードに近づく。
色々な荷物が所狭しと置いてある。
もちろん、メトロポリス機動憲兵団のランバードも。
いつ乗って来たんだ?気づかなかった。
それより、あの娘は多分車掌に見つからないように先に進んだのだろう。
この貨物室は、中には入れないため外側を迂回するような構造になってる。
なら、この先には金持ち用の特別室があって、それで最後なはず。そこにいるに違いない。
そうこうしてると、相棒のランバードの所へ着いた。
クエっと、ランバードは首を傾げ鳴く。
「緊急事態。外すからじっとしてろ」
そうして留め具を外していると、向こうが騒がしくなった。
憲兵たちが追いついたんだ。
車掌との一悶着が聞こえる。
急がないと。
ガチャガチャと留め具を外そうとするが、薄暗い上、揺れて上手くいかない。
クソッ!ぶっ壊したくなる!
焦るな。焦るともっと出来ない。
誰かが言った言葉を思い出す。
「焦るな、急げ!」
つまり、頭は冷静に。手元は素早く。
カチャン。と留め具が外れ、ランバードが動けるようになった。
「よし、行くぞ」ランバードを引きながら俺は言い、ドアのロックを外して外に出る。
この扉。久しぶりに見た。
この客室自体は駅で何度も見かけるが、こうやって間近で見るのは、あの日以来だ。
俺は扉につけられている丸窓を覗く。
ああ。あの時のままだ。まるで時が止まったように、記憶のまま。
〜♪
ベッドに腰掛け、少女が歌っていた。
このメロディ。忘れかけてた。
そうだ。この歌、聞いたことある。
俺はあの時のように、そっと扉に手をかける。
ドォン!
「ぐぇへっ!」何?何があった?とにかく顔が、頬が痛い。おまけに右腕も痛い。
「やはり貴様だな。少女誘拐犯は。良くも部下を!」
と、後ろから声が聞こえた。
そう言えば、思い出に浸ってしまってたけど、ランバードが俺をつついていた。教えてくれてたんだな。なんで聞かなかったんだろう。
少女を見ると、目を丸くしている。
「目標に間違いない!よくも逃げやがったな!」と、後ろで先ほどのガラの悪い憲兵の声。
どうやら俺は、扉に叩きつけられ関節技を決められてる状態だ。
「隊長、奴のランバードはどうしますか?」
これまた先ほどの真面目そうな憲兵の声。
隊長と呼ばれていたのは、俺を拘束している男の事らしい。
「あー。そうだなぁ。蹴り落とせ」
それは聞き捨てならない。
「やめろ!」俺は精一杯声を上げ、体をよじる。
「うるさい!」と、俺の右腕をより締め上げる。
「いだ、いででぇ!」我ながら情けない声。
「我々の邪魔をし、あまつさえメトロポリスに移送するなど、甘く見るなよ!」
と、カチャリと音と一緒に、冷たい感触が頭に感じた。
まさか、銃?何言ってるのかさっぱりな上、こ、殺される!
「や、やめてください!」
「とぼけるな!目的を言え!」
「目的って、あの子を都市に連れていきたいだけです!」
「だーかーらー、その目的は何だと聞いてるんだ!」
全く話が通じない。
「もういい。目標を確保するか」
いやに静かな声。そしてより強く押し付けられる銃口。
「ややややめてください!お願いです!」
あーもう。命乞いするしかない。
なんて情けないんだ。俺は。
すると、ふっと体が軽くなり、横を向けられる。荒野が、猛スピードで横切っていく。
「じゃあ、飛べ」
「へ?」
「へ、じゃないだろ?銃が嫌なら、ここから飛び出せって。ったく、本当にこんな奴にやられたのか?」
振り向けないが、男はニヤニヤとしているのだろう。
おちょくってやがる。
「嫌なら先に、ランバードからだ。んん?」
隊長の言葉に、やるぞやるぞ、とガラの悪い憲兵が乗っかる。
このスピードなら、痛いで済むんだろうか?それに、俺が居なくなったら少女は。
「どうした?それとも鉛玉が欲しくなったのか?」と、頭に銃を擦り付けられる。
「クエ!」と、ランバードが動き出すが、ガラの悪い憲兵に銃を向けられる。
「おっと、下手な事するなよ」
「や、やめろ。ランバードも落ち着け」
俺は悲鳴にも似た声をあげた。
どうする?どうしよ。ああ、やっぱり早く逃げれば良かった。あの時の選択は、間違いだった。
俺はギュッと目を瞑って考える。
「さぁ、どーする?ん?」
と、隊長の男が聞くが。
キィシャァァア!
それは聞いたことのない声だった。
金属の悲鳴、そんな感じ。
「隊長!なんです?コイツ!」
真面目そうな憲兵の声。
「おい。仲間がいたのか!」
隊長の男が聞くが、俺には全く身に覚えがない。
「知らないって!!うわっ!」
そう言うと、投げ飛ばされた。
幸い、柵を掴んで落ちずには済んだ。
「わっ!わっ!わっ!」足をバタつかせ、両腕に力を込めて這い上がる。
「ふぅー。て何だ?」
貨物室の屋根の上、金属の悲鳴を発する者の姿を、俺は見た。
白銀のエイリアン。そう言えば分かるだろうか。あるいは頭がデカいメカトカゲ人間とも。ここではエイリアンと呼ぼう。
ランバードと似た質感の表皮。この星の原住生物か?
歯茎を剥き出しにし威嚇しているようだ。
また、鋭い槍のような尻尾をこちらに向け、今にも刺してきそうで、見れば先が赤く血がついているようにも見える。
「な、何ものだ!」隊長の男が叫ぶ。
だが、金属の悲鳴しか聞こえない。
「隊長。もしかして、我々を襲ってきたのはコイツでは?刃物による傷が奴の尻尾であれば・・・」
と、真面目そうな男は言い終わる前に尻尾に貫かれ、投げ飛ばされた。
10数ミーター(距離、メートル)先に転がり落ちていった。
隊長の男銃を構えるとエイリアンに向かって吠えた。
「撃てぇ!」
ガラの悪い憲兵の男と一斉発射。
ダダダダダダダダダ!
俺はその隙に、ランバードに叫ぶ。
「ランバード!」
すかさず、ランバードは俺をついばみ引き上げた。
「ありがとう。下がるか伏せとけ」
と言って、客室に転がり込んだ時。
ドガァーン!
客室にエイリアンが天井を突き破ってきた。
「貴様!邪魔をするか!」
隊長の男が銃のリロードを行いながら俺に言う。
「そんなんじゃない!」
俺は奴の方を見た。
初めて憲兵団の隊長を見た。
制服は白地に黒。SFとかに出てくるフルフェイスのヘルメットを被っており、顔の所が黒いクローバー♣️が書かれていた。
キィシャァァア!
エイリアンは少女にゆっくりと近づいている。
だが、少女は怯えているのか震えるのみ。
「逃げろ!こっちだ!」
俺の声に振り向くが、その子の顔は恐怖で満ちていた。
あれじゃ動けない。
「クソ!」俺は飛び出し、少女の前に立つ。
「君を守る!絶対にだ!」
つづく
次回。変身、魔進化!




