表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リトルヒーローズ  作者: 貫井べる
1章 : BRAVE STORIES
12/12

ROUND 12 : 愛に染まる拳

ROUND 12 : 愛に染まる拳




チーム・ブラックウイングのメンバーは雑誌の取材を受けていた。

「それでは、来シーズンからの意気込み等あれば──」

「いや、その話はまだ早いですよ」

犬飼が記者の言葉を遮る。

「まだ1人、準々決勝に残っています」

「あー、深山フブキ選手もメンバーでしたっけ?」

「ええ、こちらと合流したのはつい最近ですがチームのメンバーですよ」

ツバサもまた来シーズンからの話をしたがらない。

「準々決勝の相手はMIO、仮に勝てれば準決勝はハヤトさん……そこで勝てなかったとしても前半ブロックは4人中3人が純粋なパワータイプなので3位決定戦には勝てるでしょう。

そうすれば世界大会はチーム全員でサポートに回るつもりです」

「は、はぁ……」

「MIOに勝てる可能性は低いとはいえ、仲間が負ける前提の話はまだできません。

また後程、今シーズンが終わった後にお話しさせてください」

「……わかりました、そうしましょう」

記者は納得していない様子だったが、そこで諦めてしまった。




準々決勝を目前に、ケンイチはアルゼルの修理を終えた。

1回戦で右腕を、2回戦で左腕を、それぞれ破壊されフレームを交換している。

駆動系や電装系にダメージは無さそうだが、そこは姉のナナミが開発したハイスペックの試作品だからこそであり普通の市販品だったら壊れていてもおかしくはない。

勝ち進む事には乗り気では無いが、試合が決まっている以上は全力で挑まなければ相手に失礼だという気持ちがケンイチにはあった。



「それでは、準々決勝を始めます!」

司会の言葉が会場に響いた。

「第1試合、まずは赤コーナーは工藤ケンイチ選手とアルゼル!

国内屈指の実力者との連戦を下し、期待の新人がここまで勝ち上がってきた!」

ケンイチはステージに上がると、先にアルゼルをリングに置いた。

「対する青コーナーは金山アキト選手とアイゼン!

3年目にして初の日本大会、どこまで勝ち上がるのか!」

ステージの向かい側に上がってきたのは高校生くらいの長身の少年。

彼はリングにアルゼルの倍はある巨大なロボットを置いた。

「さあ、どちらもパワータイプ!

アルゼルはスピードも圧倒的だが、アイゼンも十分な速さだ!」

両者はほぼ同時に準備完了のボタンを押し、試合開始のカウントが始まる。

『3、2、1、FIGHT!』

試合開始と同時に飛び出したアルゼルに対し、アイゼンは迷わず拳を突き出した。

長い腕は多数の関節で一気に加速し、ケンイチの想定より一瞬早くアルゼルに届く。

アルゼルはアイゼンの一撃を突き出しかけた拳で受ける事になり、一方的に弾き飛ばされてしまった。

「いきなりアルゼル吹っ飛ばされた!」

アルゼルはリング際のフェンス手前で停止するが、アイゼンは追撃をしようとはせずその場でまた拳を構える。

「しかし今のはお互いの攻撃同士の衝突!

ダメージのカウントは無しだ!」

司会の言葉の通り、ステージ後方のスクリーンに表示されたダメージポイントのカウンターはお互いゼロのままだ。

「さあ、ここでにらみ合いか!?」

司会の言葉を否定するかのようにアイゼンが前進した。

アルゼルはアイゼンの正面を避けるように横へと移動し始める。


ケンイチはたった一撃で理解していた。

アイゼンはアルゼルよりも腕の振りが速く、タイミングを合わせられると一方的にやられてしまう。

真正面を避け、攻撃の向きとタイミングをずらさなければならない。


アルゼルはアイゼンがその場で旋回するより速く背後に回り込むが、アイゼンはその長い腕を振り回しアルゼルを真横から吹き飛ばす。

防御の間に合ったアルゼルはすぐに停止するが、アイゼンは既にアルゼルの方へと向き直り腕を大きく振りかぶっている。

そのままアイゼンは大きく踏み込みながら拳を突き出した。

アルゼルは紙一重でその一撃をかわし、自らも踏み込んでアイゼンを殴り飛ばそうとする。

しかしアイゼンは突き出していた腕を振り回しアルゼルを凪ぎ払った。

「またしても直撃だ!

しかしダメージは入らない!」

アルゼルは防衛を間に合わせており、弾き飛ばされながらもダメージは防いでいた。

アイゼンはまたアルゼルが停止するのをその場で待ち、そして構える。

「……あくまでも正々堂々、か」

ケンイチは目の前の相手がそれまで戦ってきた敵とは異なる事を改めて認識した。

アルゼルもその場で拳を構える。

そして両者は同時に踏み込んだ。

通常より浅い構えから通常より速く拳を突き出したアルゼルは、落ち込む威力を補うように右腕のフライホイールを高速回転させる。

今度はアイゼンと攻撃のタイミングが合い、アイゼンの拳が弾かれる。

しかしアイゼンは即座に反対の拳を叩き付け、アルゼルを吹き飛ばした。

「ここでアイゼン2点先取!

打ち合いに負けても手数は負けていない!」

アルゼルは即座に起き上がり、すぐにまた拳を構えた。


ケンイチは確かに見ていた。

互いの拳がぶつかった瞬間、アイゼンの腕から力が抜けて衝撃を受け流す事で本体のバランスが崩れるのを防いでいた。

まるで押し合いを拒否するかのようにわざと拳を弾かれ、そしてアルゼルの防衛が間に合わない早さで次の一撃を叩き込んできた。


アルゼルとアイゼンはまた同時に踏み出した。

今度はアルゼルは即座に後退に転じながら右の拳でアイゼンの拳を受け止め、アイゼンの腕がのびきった瞬間に左腕でアイゼンの拳を払う。

ケンイチの読み通りアイゼンの腕から力が抜けて簡単に弾く事が出来、そのままアルゼルは踏み込んで右の拳を突き出す。

アイゼンは反対の腕でアルゼルの攻撃を受け止め、即座に横へと受け流した。

横へと逸れたアルゼルは回転し裏拳を叩き込もうとするが、そこにアイゼンはカウンターの拳を合わせる。

またアイゼンの腕から力が抜けて攻撃の衝撃を受け流され、逆にアルゼルは攻撃を防がれた衝撃で僅かにバランスを崩す。

そのアルゼルの背中に更にアイゼンの拳が直撃した。

「またしてもダメージポイント2点!

すごい打ち合いだぞ!」

司会はそう評価するが、実態はアルゼルが一方的にダメージポイントを加算されているだけだ。

弾き飛ばされたアルゼルはすぐには起き上がらない。

「アルゼル、どうした!?

これは審判がダウンカウントを始めます!」

すぐに審判がカウントを始めるが、ケンイチはアルゼルを起こさず考える。


アイゼンの攻撃はアルゼルより速く、手数も多い。

機動力は無いが攻撃の速さだけならレイヴンやマルートに並び、手数はハルート並みで、おまけに攻撃力もあるうえこちらの攻撃は力を逃がされる。

だがその攻撃力は腕のスピードで稼いでおり腕力そのものは恐らく大した事は無く、そのために押し合いを徹底的に避けている。


ケンイチはやっとアルゼルを起き上がらせた。

「ダウンカウント8でアルゼル立ち上がった!

あと少しでKO負けだったぞ!」

司会の言葉にも動じること無く、アルゼルは拳を構える。

対するアイゼンも右腕を引いて構えた。

そしてアルゼルが先に飛び出した。

一瞬遅れて飛び出したアイゼンが一瞬早く拳を突き出すが、アルゼルはアイゼンの一撃を右の拳で受けてわざと弾かれると弾かれた勢いで回転しながらアイゼンの右腕の更に右側へとすり抜ける。

アイゼンは左の裏拳でアルゼルを弾き飛ばそうとするが、その一撃は脱力した腕を遠心力で振り回しているだけで脅威では無い。

アルゼルは右の拳を構えながらアイゼンの左の裏拳をまともに受けるが、大きく踏み込む事でアイゼンの腕を弾き返す。

ダメージポイント1点と引き換えに、アイゼンの反撃が間に合わないタイミングでアルゼルはその拳をアイゼンの左脚に打ち込んだ。

しかしアイゼンの左脚が脱力して弾かれ、機体全体のバランスを崩すことはできなかった。

アイゼンは倒れる前に浮いた左足で再びリングを踏み締め、上方から叩き付けるように右腕をアルゼルへと振り下ろした。

拳とリングに挟まれたアルゼルは弾き飛ばされず、その場で転倒する。

「アルゼル、またダウンだ!

ダメージポイントも3点加算で合計8点!」

アイゼンは腕を下ろし、アルゼルが起き上がるのを待つ体勢だ。

アルゼルは今度はすぐに起き上がった。

「さあ、残り1分!」

アルゼルもアイゼンも拳を構える。

そしてアルゼルは迷わず飛び出した。

アイゼンが的確にカウンターの拳を打ち込むが、アルゼルは跳躍して攻撃を回避するとそのままアイゼンの腕に飛び乗った。

アイゼンの目の前にあった完全な死角を取ったアルゼルは、続けての跳躍からアイゼンの頭部を蹴り上げる。

だが、その瞬間にアイゼンの両腕が空中のアルゼルを左右から挟み込んだ。

倒れながらもアルゼルを捕まえたアイゼンは、その両腕を思い切り振り上げる。

アルゼルはアイゼンの頭上を越え、そのままアイゼンの腕力と機体重量を乗せたバックドロップでリングに叩き付けられた。

「試合終了!」

ゴングが鳴り響き、アイゼンがリングに立ち上がった。

「スーパールーキー、ここで敗れた!

勝ったのは東北の巨星、金山アキト選手のアイゼンだ!」

「いや、本当に危ない試合だった」

審判からアルゼルを受け取ったケンイチにアキトが声をかけた。

「本当に良い戦いをしてもらった」

アキトはケンイチに右手を差し出す。

「また戦ってもらえるか」

「……はい、ありがとうございます」

ケンイチはアキトと握手をし、そしてステージを降りた。




「BLAZE GEAR 紅蓮、はいぱー以下略に勝利!

ロボットプロレスチャンピオンを下し、桜木ボタン選手が準決勝進出だ!」


「チーム・ブラックウイング最後の刺客、リーダーの仇は取れず!

MIO選手、新型のガン・ケルビムと共に準決勝へと進んだ!」


「全米チャンピオンが成す術も無い!

世界チャンピオンの堂守ハヤト選手、僅か5秒で準決勝進出を決めた!」



休憩時間が終わり、準決勝開始のアナウンスが会場に響いた。

「さあ、いよいよ準決勝!

勝ち残ったのはこの4人です!」

スクリーンに4人の機体の写真が映し出された。

「3年目の挑戦でついに世界まであと僅か!

東北より文字通り殴り込んできた、金山アキト選手!

使用機体、アイゼン!」

「かつて社会現象ともなったその拳は健在!

今度こそ世界に届くか、桜木ボタン選手!

使用機体、BLAZE GEAR 紅蓮!」

「やはり今年も勝ち上がってきた!

新型機で世界大会決勝のリベンジなるか、MIO選手!

使用機体、ガン・ケルビム!」

「無敗の絶対王者に敗北は来るのか!

世界大会チャンピオン、日本大会2連覇、堂守ハヤト選手!

使用機体、ブリューナク!」

司会の声と歓声が響く中、準決勝が始まった。




登場機体紹介


アルゼル

操縦者 :工藤ケンイチ

ベース機体 : アクセルギア・アドバンスド

クラス : ハイエンドクラス+

パワー : 30

スピード : 25

レスポンス : 20

モーション : 20

ウェイト : 5

リーチ : 1

バランス : 4

備考 :


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ