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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第3部/第1章

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護身と殺戮

 森を貫く、一本の街道。


 乗合馬車とその御者、それにかわいい嫁たちを背に守るように立った俺は、襲い掛かってくる野盗どもを迎え撃つ。


「この人数を相手に勝てるつもりか、おっさん! ──死ねぇ!」


「「「ヒャッハーッ!」」」


 前方から駆け寄ってきた男たちが、思い思いの武器を振り上げ飛び掛かってくる。

 まずは四人。


 俺は斧を水平に構え──


「──せめて百倍の人数を連れてこい!」


 聖斧ロンバルディアを横薙ぎに振った。

 なまくらな刃は、四人の男たちをまとめて捉え──


 ゴキャメキャボキゴキッ──ズドォオオオオンッ!


「「「「ギャアアアアアッ!」」」」


 全員をまとめて吹っ飛ばして、森の木々へと叩きつけた。

 吹き飛ばされた男たちは白目をむいて泡を吹き、ずるりと崩れ落ちる。


「「「は……?」」」


 それを見て足を止め、呆気にとられる残りの野盗たち。

 いずれも驚愕した様子で目を見開いていた。


「よ、四人をまとめて、吹き飛ばしただと!? 嘘だろ……!?」


「しかも斧を一回、振るっただけに見えたぞ……!?」


「な、何だあのおっさん……ありえねぇ……」


 勢いづいていた野盗たちは、今や完全に浮足立っていた。


 一方で俺の背後からは、エレンの声が聞こえてくる。


「うへぇ、容赦ないなぁ……。ねぇダグラス、なるべく殺さないって言ってたけど、あれってもう何人かは死んじゃったんじゃないの?」


「さぁな。一応斬ってはいないんだが、それ以上は知らんし、面倒も見切れん。向こうも殺しにきているんだから、その程度のリスクは負ってもらう」


「あ、そういう感じなのね。オッケー、了解」


 そんな軽い返事が戻ってきた。


 わざわざ殺すこともないが、一人も死なないように慎重に扱ってやる必要もない。

 降りかかる火の粉を払うのが第一だ。


 すると野盗のリーダーと思しき男は、新たな指示を出す。


「くそっ……! だったら女どもを押さえろ! 女を人質にすりゃあ、あのおっさんも手ぇ出せなくなるだろ!」


「「「お、おうっ!」」」


 横合いの森に隠れていた男たちが数人、飛び出してくる。

 狙いは、俺の背後にいる嫁たちのようだ。


 だがそれも当然、織り込み済みだ。


「まったく……そんな浅はかな戦術を、ダグラス様が見抜いていないとでも? 愚かな下郎ども、眠りなさい──スリープ!」


 セラフィーナの魔法が炸裂し、彼女らに襲い掛かったうちの三人ほどをバタバタと眠らせた。


 さらに残った数人には──


「はっ、バーカ! ボクたちがお前ら程度に捕まるかっての!」


「おととい来やがれにゃ!」


 エレンとミィナが武器を手に飛び掛かり、あっという間に制圧していく。


【守護乙女の祝福】を得たうちの嫁たちを凡百の野盗がどうこうしようというなら、あれの十倍の人数は用意しないと話にならないだろう。


 そんなわけで、あれよあれよという間に、野盗のうち十人以上を無力化した俺たち。


 一気に手勢の半数を失った野盗のリーダーは、あからさまにうろたえていた。


「そ、そんな……バカな……!? たった四人の冒険者なのに……つ、強すぎる……!」


 一方で俺はロンバルディアを肩に担ぎなおし、男たちに向かって問いかける。


「さて、もう一度確認だ。これ以上多くのものを失いたくなければ、立ち去ったほうが賢明だと思うがどうだ? 俺はここで、世のため人のためにとお前たちを皆殺しにするのには、少々のためらいがある。これ以上俺たちに危害を加えないなら、まだ見逃してやれるんだが」


「ぐっ……くそっ……たかだか冒険者のおっさん風情が、調子に乗りやがって……!」


 野盗のリーダーと思しき男は、武器を持った手をぶるぶると震わせる。


 と、そのときだった。


「──【剛弓(ごうきゅう)】」


 俺の背後から、少女の声がした。


 同時、「ボッ!」と何かが激しく空を切るような音がして、何かが俺の横を豪速で通りすぎた。


「なっ……!? 何が……ガハッ……!」


 野盗のリーダーと思しき男が、吐血した。 

 男の胸には、風穴が空いていた。


 そう、風穴だ。

 攻城弩(バリスタ)の矢弾で撃ち抜かれたとしたら、あのぐらいの傷口ができることもあるかと思うような。


 男の体が、ぐらりと倒れる。


 倒れた男の体は、一度だけびくびくと痙攣してから、やがてぴくりとも動かなくなった。

 大地に赤い染みが広がっていく。


 背後へと振り向いた俺が見たのは、意匠を凝らした弓を手にした、空色の髪の少女だった。


「──逃がさないでください、ダグラスさん。あいつらは私の獲物であり、私たちの女王に捧げる供物なんですから」


 瞳の色は、今や空色というよりはアイスブルー。

 氷のような冷たさを持った瞳が、野盗どもを鋭く射抜いていた。


 少女から小動物のような愛らしさは消え、今は冷徹な殺し屋のごとき気配をまとっている。

 その小柄な体からは、うっすらと闘気の輝きが立ち昇っているようにも見えた。


 そうしてほかの誰もが呆気にとられ、動けずにいる中。

 弓を手にした少女ビナーは、流れるような動作で次の矢をつがえ、放った。


 ──ボッ、パァンッ!


 再び野盗のほうを見れば、そのうち一人の頭部が四分の一ほど弾け飛んでいた。


 その男も倒れ、大地を血に染めていく。


 先に倒れたリーダーらしき男と、今倒れた別の男の体から、何やら靄のようなものが抜け出して、ビナーが手にした弓に吸い込まれていく。


「ヒッ、ヒィッ……!?」


「な、なんだあの女、ヤベェぞ! ──に、逃げろぉっ!」


 恐怖に取りつかれた野盗の男たちは、我先にと踵を返して逃げ出していく。


 だがそうして逃走した男たちを狙って、ビナーはさらに矢を放っていく。


 一人の胴を撃ち抜き、別の一人の頭部を吹き飛ばせば、やはり同様に死体から靄が出てきてビナーの弓に吸い込まれる。


 そのあたりで残る男たちは森の奥へと消えたので、ビナーはそれを追いかけようと駆け出していく。


 俺は、殺戮者となった空色の髪の少女に向かって、声を張り上げる。


「──ビナー! お前さんはいったい、何者なんだ!?」


 するとビナーは野盗を追いかけていた足を止め、俺のほうへと振り向いた。

 そして儚げな笑顔とともに、こう言った。


「……ダグラスさん。皆さんとは仲良くできるかもしれないと思ったけど、やっぱりダメそうです。──私は“竜神器十将”の一人、弓使いのビナー。私はこれからたくさんの人間を殺します。十日後、王都の東にある廃墟で待っていますから、私を止めたかったら来てください。殺し合いましょう」


 そしてビナーは、恐ろしい速度で森の中を駆けていって、俺の視界から消え去ってしまったのだった。


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