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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第2部/第3章

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闘技大会に参加しよう

 温泉地トルトレントから馬車で三日間の旅をして、俺たちは商業都市ベルフォードへと到着した。


「うへぇ……すっごい人の数。これは王都も真っ青だね」


 ベルフォードの市門前の行列を見て、エレンがそんな感想を漏らす。

 夕刻の市門前は、門番によるチェック待ちの人々でずらりと行列ができていた。


 俺たち五人と一振りも、その行列の一員となる。


「普段はこれほどではないのだがな。祭りの前なものだから、観光客が多いんだ」


 エルフの剣士オーレリアが、エレンの言葉に答える。

 彼女はこのベルフォードを活動拠点としているという話だから、そのあたりの事情には詳しいのだろう。


 俺はそんなオーレリアに問いかける。


「祭りっていうと、闘技大会のことか?」


「ああ、もちろんそうだ。この商業都市ベルフォードの年中行事の中でも、闘技大会は特に大規模なイベントの一つだからな。近隣の都市から見物しにくる客は、ゆうに数千人を超えると聞く。──ダグラス殿はやはり、闘士として参加をしにきたのかな?」


「まあな。優勝賞金もなかなかの額だし、せっかくだから腕試しにでもと思ってな。オーレリアも参加するのか?」


「無論だ。私はこう見えて毎年の優勝候補なのだぞ」


「へぇ、そうかい。じゃあ大会で当たったら、お手柔らかに頼むぜ」


「ふふっ、それは保証できんな。お互いAランクの冒険者同士だ、激しい戦いになるだろうよ」


 俺とオーレリアとは、自己紹介のときに互いにAランク冒険者であることを示す金の冒険者証を見せ合っている。

 この闘技大会でぶつかり合うであろうことは、予想ができていたことだ。


「エレンたちはどうする? 参加するか?」


「あー、ボクはパス。ダグラスが出場するっていう時点で、優勝できる気なんてこれっぽっちもしないし。それでなくても国じゅうから、Bランク以上の冒険者がわらわら集まってきてるんでしょ? いくらボクが自惚れ屋でも、今の自分が出る幕じゃないことぐらいは分かるよ」


「私もです。【守護乙女の祝福】を受けた状態なら善戦はできるかもしれませんが、いずれにせよダグラス様が出場するのですから、私の出番などあろうはずもありません」


「ミィナも当然パスにゃ。論外もいいとこにゃね」


 そんな会話をしながらわいわいと行列待ちをしていると、やがて俺たちの門番チェックの時間がやってきた。

 俺たちは簡単なチェックだけを受けると、門をくぐることを許され、市内へと通された。


 都市の中に入っても、賑やかさは相当なものだった。


 王都の人混みは、あれでもある程度は上品だったのだなと感じる。

 この商業都市ベルフォードの活気は、人のたくましさと抜け目のなさに溢れていた。


 道端で露店を開いている商人は道行く人を腕をつかんででも捕まえるし、貧しい身なりの子供は店頭のリンゴを盗んで店主に捕まって尻をひっぱたかれるし、喧嘩が起こったかと思えば人々はいいぞやれやれと囃し立てる。


 そんな人々でごった返す目抜き通りを、俺たちはどうにか間を縫って進んでいく。


「まずは宿を探さないとな。観光客が多いと、部屋が埋まっちまう可能性もある」


「よければ私が案内しようか? 中堅以上の宿になるが、値段にふさわしいかそれ以上の食事やサービスを提供してくれる店に何軒か心当たりがある」


「お、そうか。じゃあお言葉に甘えるとしよう」


 というわけで、オーレリアの案内で何軒かの宿を回る。


 案の定どこも満室状態だったが、三軒目でようやく、四人用の部屋が一つ空いているという宿があったので、そこに宿泊を取りつけた。


 なお宿の受付をやっていた少女が、頭の上に疑問符を浮かべた顔で「えっと……ご家族様ですか?」と聞いてきたので、俺は「そうだ」と答えた。


 相手が想像しているものとは違っている気はしたが、全員が事実上の嫁たちなので、家族と呼んでも間違いではない。


 それを面白がったのか、ミィナが俺の腕に抱きついてきて、「ダグラスパパ、大好きにゃあ♪」と言って、受付の少女の目を点にさせていた。

 なんだか危険な響きを感じるので、パパ呼ばわりはやめてほしいものである。


 それはさておき。


 俺はその後、オーレリアの案内で闘技大会の受付に向かった。

 その際、嫁たちには宿で待っていてもらった。


 闘技大会を行う闘技場自体は、目抜き通りからはやや外れた住宅街にあるのだが、受付を行うのは中央広場に面した市庁舎だという。


 オーレリアの後について市庁舎に行く。

 するとその入り口で、俺たちは市庁舎から出てくる一人の冒険者らしき男と出会った。


「よう、オーレリアじゃねぇか。今年も怖気づかずに参加するとは、殊勝な心掛けだぜ」


 そうオーレリアに声をかけてきたのは、獣人の男だった。


 狼に似た耳を持った狼牙族(ろうがぞく)の男で、外見年齢は人間の二十代中ほどといったところ。

 しなやかそうな筋肉を宿した上半身の肉体美を、タンクトップ一枚の姿で惜しげもなくさらしている。


「ギルラムか。貴様、去年の大会で私に勝ったからと、ずいぶん調子に乗っているようだが」


「なぁに、今年も勝つから問題ねぇさ。ちなみにゲティスの爺さんは出場しないとよ。持病の(しゃく)がどうとかいう話だ」


「ふん。彼も食えない男だな」


 オーレリアと狼牙族の男は、角を突き合わせるようなやり取りをする。


 なおギルラム、ゲティスという名前は俺も耳にした覚えがある。

 どちらもこの商業都市ベルフォードの冒険者ギルドが誇る、Aランク冒険者の名前だったはずだ。


 つまり、目の前にいる狼牙族の男が、かの有名なAランク冒険者のギルラムだということだろう。


 一方でオーレリアは、そこでニヤリと笑ってみせる。


「だがギルラムよ。今回の大会も、私たちいずれかの優勝に決まっていると思うのは、とんだ考え違いかもしれんぞ?」


「ああ……? どういう意味だ」


「ふっ。ここにもう一人、王都から来たAランク冒険者がいるということだ」


 そう言ってオーレリアは、俺に目線を寄越してみせる。

 俺はそれを受け、狼牙族の男ギルラムに右手を差し出し、握手を求めた。


「ダグラスだ。よろしく頼む」


「ほう……? 見覚えのねぇ人間族のおっさんだな。この国のAランク冒険者は全員知っているつもりだったが、最近Aランクに上がった口か?」


「そんなところだ」


「そうかい。いいぜ、強者は歓迎だ。こっちこそよろしく──なっ!」


 ギリリッ……!


 ギルラムは、俺が差し出した手を自分の右手で握ると、闘気を全開にして俺の手を握りつぶそうとしてきた。


 かなりの握力だ。

 並大抵の力自慢では、彼の目論見通りに握りつぶされてしまうほどの。


 だが俺はそれに、がっちりと握手を返して、ニヤリと笑う。


「手荒い歓迎だな。──で、どうだい? 俺はあんたの眼鏡に適ったかな」


「チッ……! 伊達じゃあねぇみてぇだな。面白ぇ。当日はパワーだけがすべてじゃねぇってことを教えてやるよ。じゃあな」


 ギルラムは俺から手を離すと、その右手を痛そうにぷらぷらと振りつつ、立ち去っていった。


 それを見ていたオーレリアは、あっけにとられた様子で言う。


「今のは……ギルラムに、パワーで勝ったのか……? 狼牙族のモンクであるギルラムは、相当な力自慢のはずだぞ……?」


「それを言うなら、斧使いの戦士である俺こそ腕力では負けていられんさ。それにやつは、敏捷性にも自信があるんだろ?」


「ま、まあ、それはそうだが……すごいものだな……」


 その後俺とオーレリアは、市庁舎で闘技大会の受付を行うと、互いの健闘を祈って別れた。


 闘技大会の本番は、明後日だ。


 大会の参加者は数十人にも及び、いずれもBランク以上の冒険者、あるいはそれと同格の実力者であろうということだ。


 優勝賞金は、金貨千枚。

 数千人の観客が見守る中での、賞金付き腕試しになる。


 一つ気掛かりなこともないではないが……それもまあ、当日になれば分かることだろう。


 つわものたちと別れた俺は一人、嫁たちの待つ宿へぶらりと帰っていった。


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