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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第2部/第2章

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宿に戻ってユカタに着替えて

 宿に戻ると、あれだけの騒ぎがあったにも関わらず、宿の女将は俺たちに平常通りのサービスを提供すると約束してくれた。


 大変ありがたい。

 あんなことがあったせいで、せっかくの温泉宿体験が台無しになっては残念だ。


 またこの宿の女将は街の有力者だということで、丘巨人(ヒルジャイアント)討伐の適正な報酬を街から支払う旨も約束してくれた。

 可能であれば色も付けてくれるらしい。


 これも非常に助かる話だ。


 緊急時ゆえ何の話も取り付けずに動いてしまったが、街に滞在している冒険者が無償でモンスター退治をするのを当たり前と思われてもまずい。

 平時から給料をもらっている、街の衛兵とはわけが違うのだ。


 あとでヘヴィな報酬交渉をしなければいけないかと思っていたので、そこの肩の荷が下りたのが、正直なところ一番嬉しかったかもしれない。


 そんなわけで、俺たちにとっての後始末の話も軒並み終わったので、あとは宿の客として宿泊と温泉を楽しむばかりだ。


 エルフの剣士とはひとまず別れて、俺たちは自室へと戻る。


 そして一息ついたあと、全員が館内着であるユカタに着替えることにした。


「えーっと、これ左と右、どっちが前なんだっけ?」


「右前ですけど、自分の側から見て右側が手前という意味なので──ああ、だからそうじゃなくてエレン、こっちが手前ですよ」


「うぅっ、結構ややこしいにゃね……ロンバルディア、分かるにゃ?」


「どうにかの。ほれミィナ、我が手伝ってやろう」


 俺は自分も着替えながら、目の前でああでもないこうでもないと着付けをする嫁たちの姿をちらちらと見ていた。


 下着だけの半裸の姿でキャッキャとユカタに着替えている姿は、なんというか、すごく情緒的だ。


「ねぇねぇ、さっきからダグラスが、すんごいエッチな目でボクたちのことを見てない?」


「それでいいのですよ、エレン。妻たる者、最愛の人に自分の体を見られるのは、誇るべきことです」


「……セラフィーナって、ときどきおかしなことを平然と言うにゃよね」


「あの娘の言うとることも、まったく分からんではないがのぅ」


 そんな若干おかしな話をしながら、やがて嫁たちの着替えが完了する。

 その頃には俺のほうも、なんとなく着付けに成功していた。


「じゃじゃーん♪ どうにゃ、ダグラス。ミィナたち綺麗にゃ?」


 そう言ってくるミィナをはじめとして、四人の嫁たちが浴衣姿で横並びになっている絵が完成した。


 素材がいいこともあって、全員めちゃくちゃ綺麗だ。

 このままの姿を絵に描いてもらって、額縁に収めたいぐらいだ。


「ああ。全員、綺麗だし可愛いし……なんつーか、たまらんものがある」


「だよね! やっぱこのユカタっていう服、絶対エッチだよね! ボクもずっとそう思ってたんだよ。だってほら、こんなだよ?」


 エレンはそう言って、ユカタの裾を開いて健康的な太ももをぴらぴらと見せてきたりする。

 これこれ、そういうことをするでないよお嬢さん。


「ダグラス様。こちらに上着もありますが、羽織ったほうがよろしいでしょうか?」


「ああ、そうだな。そうしてくれると嬉しい」


 下着と同じ理屈で、館内を歩き回る格好があまり煽情的すぎるのはよろしくない。


 俺以外の男どもが欲望まみれの目で俺の嫁たちを見ることは、許されてよいことではないのだ。


 ……いや、俺もなんかこう独占欲というか、束縛男というか、ろくでもない感じが板についてきた気もするけどな。


 嫁たちの人間が出来すぎていると、俺もついついそれに頼り切った形になってきてしまう。

 完璧な愛情と寛容さで尽くしてくれる嫁たちのおかげで、どんどんダメになっていく男がここにいた。


 ──と、そのとき。

 コンコンと、部屋の扉がノックされる音がした。


「そろそろ頃合いかと思って来てみたが、入ってもいいかな?」


 扉の向こうから、例のエルフ剣士の声が聞こえてきた。

 少ししたら部屋に来てもらうよう伝えておいたのだ。


「ああ、入ってくれ。俺たちも着替えが終わったところだ」


「では、失礼する」


 エルフ剣士は扉を開いて、部屋の中に入ってきた。


 例によって、彼女もユカタ姿だ。

 俺はあらためてその容姿を確認する。


 輝くような金髪に、エメラルドグリーンの瞳。

 武人らしく凛とした顔立ちだが、文句なしの美人である。


 エルフのご多分に漏れず、細身ながらも魅惑的な曲線を描いた体つきをしている。

 見た目の年齢は、人間で例えるなら二十代中頃といったところか。


 なお、エルフは数百年と生きる長命の種族なので、見た目は若くとも俺より年上の可能性も高い。


 俺は彼女を部屋の中に招き入れると、タタミ敷きの部屋にザブトンと呼ばれる敷物を五つ並べて簡易の席を作った。


 この宿はいろいろと目新しいサービスが多いが、このように部屋に椅子がなく、床に直接座るスタイルなのは少し閉口するところだ。


 セラフィーナは、「でもこのタタミの床一面にお布団を敷いてごろごろすると、たまらなく気持ちがいいんですよ」と言っていたが、それはあとで体験させてもらうとしよう。


 さて、全員が席に着いたのを確認すると、エルフ剣士が口を開く。


「それでは、あらためて私から自己紹介をしよう。私の名はオーレリア。商業都市ベルフォードを中心に活動している冒険者だ」


「んん……? オーレリア……オーレリア……どこかで聞いたような──って、あのオーレリア!? ベルフォードにも三人しかいないっていうAランク冒険者の一人、“妖精剣姫(ようせいけんき)”オーレリアのこと!?」


 エレンが腰を浮かせて驚きの声をあげる。

 セラフィーナもまた驚いた表情を見せていたし、俺もまた内心では同様だった。


“妖精剣姫”オーレリア。


 このウェントワース王国で活動する冒険者の中でも、もっとも有名な人物の一人と言ってよいだろう。


 王都にも匹敵する規模を持つ大都市である商業都市ベルフォードは、冒険者ギルドの規模に関しては王都をも凌ぐほどで、王都のギルド同様、実力のある高ランク冒険者も数多く活動している。


 だがそんな商業都市ベルフォードでも、Aランクの冒険者ともなると、たった三人しかいない。

 いや、三人もいると言うべきなのかもしれないが。


 そのうちの一人として知られているのが、“妖精剣姫”オーレリアだ。

 特定のパーティを組まない、一匹狼の凄腕冒険者であると聞いていたが……。


 オーレリアを名乗ったエルフ剣士は、恥ずかしそうに少し頬を染め、こほんと咳払いをする。


「ま、まあ、そのオーレリアで合っているとは思うのだが……その“妖精剣姫”という異名で呼ぶのは、ちょっとやめてほしい。……最初に誰が言い出したのか知らないが、それで呼ばれる側の身にもなってほしいものだ。恥ずかしいことこの上ない」


「あー、なるほどな。そりゃご愁傷様だ」


 確かに、はたで聞いていれば可憐で格好いい異名とも思えるが、そう呼ばれる本人にとっては羞恥プレイもいいところだろう。


 一方で、俺たちのほうも自己紹介をした。


 俺、セラフィーナ、エレン、ミィナと名乗っていって──最後、ロンバルディア。


「そういえば、先ほどの戦闘の場にはいなかったと思うが……彼女も冒険者仲間か?」


「ああ、こいつはな──ロンバルディア、化身状態を解除してみせてやってくれ」


「むーっ、ユカタは着なおさねばならぬのじゃがのぅ。わが主の命とあらば仕方あるまい」


 どろんっ。

 少女姿だったロンバルディアは、斧の姿へと変身する。


 俺が倒れないようにロンバルディアを手に取ると、彼女がそれまで着ていたユカタがパサッと床に落ちた。


 エルフの剣士オーレリアが驚きの表情を見せる。


「なっ……!? それは、そっちが本来の姿なのか……? 人の姿に変身できる知性ある武器インテリジェンスウェポンだということか……!」


「ああ。それも俺専用のな」


「き、キミ専用だと!? それはちょっと、破廉恥ではないか!?」


「え、なんでだ?」


「あ……いや、こほん。な、何でもない、何でもないぞ」


 俺がつい素のノリで突っ込んでしまうと、オーレリアは赤面してこほんと咳払いをした。

 おや……?


 オーレリアはさらに、赤面したままこんなことを聞いてくる。


「ち、ちなみにだが、その……キミとほかの三人──いや、四人というべきかもしれないが──不躾だが、その……キミたちはいわゆる『男女の仲』というやつなのかな?」


「うん。ボクたちダグラスと、いつもセックスしてるよ」


「セッ……!?」


 オーレリアがバタバタっと、アメンボのような動作で怯えるように後退した。


 爆弾発言をしたエレンの後頭部を、赤面したセラフィーナがぽかりと叩く。

 エレンはいたずらっ子の顔で、ぺろっと舌を出した。


 ……しかしオーレリア、ずいぶんとオーバーな反応をするなぁ。

 長く生きていても、あまり経験がないのだろうか。


「あー、うちの嫁がすまない。まあ見ての通り、そのいわゆる男女の仲ってやつだ」


「そ、そうか……。ま、まあ、人間はそういうの、結構すごいと聞くからな。そういうこともあろう、うむ、うむ」


 オーレリアはザブトンの上に戻ってきて、座りなおした。


 やっぱり経験なさそうだな、このエルフ。

 いや、四十年間日照っていた俺としては、幾分か親近感が湧いたりもするが。


 ──と、そんな会話を繰り広げつつ。

 その後も俺たちは、食事なども交えてオーレリアと交友を深めた。


 特にエレンがオーレリアと妙に気が合ったらしく、二人はやがて十年来の親友のように肩を組んで、酒を飲みながら楽しく談義をしていた。


 その途中、二人の会話がちらほらと聞こえてきたのだが、「オークが」だの「触手が」だの「無理やり押し倒されて」だの妙な言葉がいろいろと飛び交っていた。


 それを聞いた俺は、あれは触らないほうがいい領域なのだろうと思い、そっとしておくことにしたのであった。


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