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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第3章

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イビルフラワー退治(2)

「エレン、大丈夫だとは思うが、一応気を付けろよ。二体以上にはなるべく囲まれないようにな」


「分かってるよ。ダグラスも──は、関係ないか」


「まあな」


 俺はエレンに声を掛けてから、イビルフラワーの密集地帯のド真ん中へと向かっていく。


 一方でエレンは、そこから少し外れたところにいる一体のほうへと、剣を片手に駆けていった。


「ば、バカ野郎ダグラス! 嬢ちゃんを一人で行かせるとか、何考えてやがんだ! ホント死ねよお前!?」


「あぁあああっ、俺たちの剣士ちゃんが死んじまうぅうううっ! もう猫ちゃんしかいねぇじゃねぇかよぉおおおおっ!」


 ギャーギャーと騒ぎ立てるほかのパーティの冒険者たち。

 俺の殺意がそっちに向かうんで、本当にやめてくれねぇかな。


 それを耳にした当のエレンも、どうやらお怒りのようで──


「……ったくもう、誰がお前たちのもんだっての、死ねよ。ああもうむしゃくしゃする……! ボクのこの怒り、全部こいつにぶつけてやる! ──はぁあああああっ!」


 ──ズバッ、ズバズバズバッ!


 エレンはバカどもへの文句を口にしながら一体のイビルフラワーのもとに駆け込んでいくと、振るわれる蔦の攻撃を人間離れした敏捷性で次々と回避しつつ、その剣で連続攻撃を叩き込んでいく。


 結果、エレンが切り込んだイビルフラワーは、斬り刻まれたあちこちから体液を噴き出し、あっという間に生命力を失って崩れ落ちた。


 瘴気を受けて育った魔の植物は、倒されたことによってすぐにしおしおと枯れてしまう。

 そこにミィナが駆け寄って、花の部分だけを切り取って手持ちの布袋に詰める。


「「「は……?」」」


 そのエレンの絶技を見て、唖然とするほかの冒険者たち。


 エレンが本当にCランクの実力を持った剣士だとは、思っていなかったらしい。

 思い込みって怖いな。


 エレンは剣をひゅっと振ってイビルフラワーの体液を飛ばすと、満面のドヤ顔をルークのほうへと向ける。


「……で、ニセモノの実力の三人パーティが何だって、自称天才剣士さん?」


「なっ……!? え、援護もなしで、一人でだと……そんな、バカな……!? ──うわっ」


 あんぐりと口を開けて呆然としたルークは、危うく蔦の一撃を受けそうになって、慌てて飛び退る。

 あいつ、戦闘中によそ見とか、また危ないことを。


「エレン、ルークのやつはからかいすぎると直撃を受けるから、そのぐらいにしておいてやれ。死んじまったらさすがに可哀想だ」


「はぁーい。──それじゃ死なない程度に頑張ってね、ルークくん」


 エレンは自分より年上のルークを、あえて「くん」付けで呼んでから、次の孤立しているイビルフラワーへと向かっていく。

 エレンのやつ、返事しておきながら全然分かってねぇし。


 そしてエレンのさらなる挑発を耳にしたルークは、顔を真っ赤にして仲間たちに向かって叫ぶ。


「アデラ、シェリル、俺も援護はいらない! こんなモンスターは俺一人で十分だ! お前たちは手を出すな!」


「で、でもルーク……」


「ルーク様、あんな山猿のような女の挑発に乗ってはいけません。安全に戦うためには──」


「うるさい! お前たちは俺の言うとおりにしていればいいんだ!」


 そのルークの言葉を聞いて、少しムッとした顔になる神官アデラと魔法使いシェリル。


 あっちゃあ……。


 ありゃあルークのやつ、完全に崩れたな。

 もともとエリート気質だから、逆境に弱いんだよなあいつ。


 まあいい。

 自分の身は自分で守るのが冒険者だし、俺ももうあいつらの保護者じゃない。


 あいつらももう一端の冒険者なんだから、死ぬ前には自分たちで何とかするだろ。


 俺はそう考え、自分は自分の仕事をすることにする。

 目の前に迫るのは、六体のイビルフラワーの集団だ。


 俺の背後から、冒険者たちの声が聞こえてくる。


「お、おい……あの嬢ちゃん、あれ本当にCランクの強さなんじゃねぇか……?」


「ってことは、まさかダグラスも……」


「いやいやいや……! だ、だいたい仮に、ダグラスに本当にDランクの強さがあったとしろよ! だとしても、いくら何でもあれは死ぬだろ! タコ殴りにされて一瞬でミンチに決まってんだろ。何体いるとこに突っ込もうとしてんだよ」


「まあダグラスだけなら、死んでくれてもいいが……むしろ死んでくれてもいいが。そうしたらあの剣士ちゃんと猫ちゃんがフリーになるし──」


「「「おおっ、それだ!」」」


 歓喜の声をあげる冒険者たち。


 どうして俺の斧は、いまだにあいつらに向けられていないのか。

 とても不思議だ。


 まあ、いいとして。


「俺もエレンに負けてらんねぇよな、っと──」


 一体のイビルフラワーの間合いに入ると、俺は聖斧ロンバルディアを無造作に一振りした。


 すると目の前のイビルフラワーは、俺を攻撃しようとしてきた蔦ごとまとめて両断され、上から巨大な花のついたイビルフラワーの上部がぼとりと落っこちてきた。


 両断された上も下も、わずかの間だけびくびくと震えていたが、すぐにしおしおに枯れてしまう。


 まずは一体、と。


「「「は……?」」」


 後ろの方から、冒険者たちの疑問符のついた声が聞こえてきた。


「あれ……? お、俺の見間違いか? 今、ダグラスのやつが斧を一振りしただけで、イビルフラワーが一体、瞬殺されたように見えたんだが……」


「い、いやぁ、まさか……。だって、俺たちが十回以上攻撃を仕掛けて、やっと倒せる相手だぜ……? いくらDランクっつったって、そんなバカなことがあるわけが……」


「お、おい! そんなこと言ってるうちにダグラスのやつ、ついに三体に囲まれたぞ!」


「オイオイオイ死ぬわあいつ」


 植物なりに生存本能があるのか、一体のイビルフラワーを瞬殺した俺に、別の三体のイビルフラワーが一斉に迫ってきた。


 移動速度が遅いから逃げることは可能なんだが、そんなことをする必要もない。

 俺はただ、我が道を往けばいいだけだ。


 そいつらの間合いに入ると、俺はまずロンバルディアを一振りし、目の前に現れた一体のイビルフラワーを両断する。


 しかしその間に、残りの二体が鞭のようにしなる蔦を振り回して、四方八方から攻撃を仕掛けてきた。


 ──パパパパパンッ!

 岩すらも砕きかねない打撃が、俺の全身のあちこちを打ち据える。


「ああーっ! ダグラス死んだーっ! 全身の骨がバッキバキに折られて……ない? あれ?」


「っていうか、あいつぴんぴんしてねぇか!? 一体どうなってんだよ!?」


 ──が、岩を砕きかねない程度の打撃力では、俺の闘気の防御を突破して大ダメージを与えることはできない。


 後頭部を殴られようが、顔面を打たれようが、まあちょっと痛い程度でどうということはない。


 もちろん、そのわずかなダメージも【治癒能力】によってすぐに治っていく。


 俺はさらに二度ロンバルディアを振るい、目の前の二体のイビルフラワーを撃破した。


 これで撃破数は四体。

 すぐ近くにいるのは、残り二体だ。


 すると残った二体のうち一体が、ぐぐっと巨大な花の部分を動かし、俺に向かって花粉攻撃を放ってきた。


 俺はそれだけは、横に跳んで回避する。

 催涙や咳き込む程度の効果にせよ、なるべくならもらいたくはない。


 それから俺は残る二体のイビルフラワーのもとに駆け込むと、さらにロンバルディアを二回振るってその二体も撃破した。


 その際、さらに何発か蔦による打撃を受けたが、当然ながら重傷にはならず、わずかなダメージはすぐに治癒された。


 俺の背後から、唖然としたような声が聞こえてくる。


「な……なんだ、ありゃあ……」


「六体のイビルフラワーが……あっという間に、全滅……? しかもダグラスのやつ、全然ダメージ受けてなくないか……?」


「い、意味が分からねぇ……なんだあれ……化け物かよ……」


「あのさ……俺思ったんだが、ダグラスとかその女にちょっかいかけるのって、ひょっとしてめちゃくちゃヤバいんじゃ……」


「「「あっ」」」


 そのときから野次馬冒険者たちは、ぴたりと口をつぐんだ。

 よしよし、分かってくれて俺は嬉しいよ。


 一方で俺が倒したイビルフラワーの残骸は、ミィナが駆け寄ってきて、しおれた花の部分を切り取って回収していく。


 ミィナは俺の隣で、ふにゃーっとため息をついた。


「ダグラスが強いのは分かってたにゃけど……もうなんか、よく分からないぐらい強いにゃね。あれだけ打たれて痛くないにゃ?」


「少しだけ痛いな。でも【治癒能力】ですぐに痛みも治まる」


「それなんかもう、怪物って感じにゃね。ていうかダグラスを倒せるモンスターとか、想像つかないにゃ」


「ドラゴンとかなら分からんな。戦ったことがないから、実際どのぐらい強いかは分からないが。あとはキマイラより強いモンスターっていうと、巨人族とか魔族、あるいはヒュドラやロック鳥、クラーケンなんてのも……」


「怪獣大決戦にゃ……」


 ミィナの中で、俺は怪物枠に入ったようだ。

 しかしわが彼女、相方を怪物呼ばわりはちょっとひどいと思う。


「ただいまー。ボクも二体目を倒してきたけど──やっぱすごいね、ダグラス。何体いたのあれ?」


 エレンも戻ってきて、しおれた魔花を一つ、ミィナに渡す。

 ミィナはそれも、手元の布袋に放り込む。


「今倒したのは、六体だな」


「六体……この短時間で、ボクの三倍……。おっかしいなあ……ボクもCランクにふさわしいだけの実力は、持ってるはずなんだけどなぁ……」


「エレン、ダグラスと比べたらダメだと思うにゃ。うちの旦那は怪物枠にゃ。人間の枠で考えたらダメにゃ」


「性欲も怪物級だしね」


「まったくだにゃ。ミィナたちは怪物の生贄としてぱくって食べられちゃう、憐れな娘だにゃ」


「怪物にお供えされた憐れな娘同士、お互い頑張ろうね、ミィナ」


「うん、二人で頑張るにゃ。二人で……二人だけで、頑張れるにゃ?」


「あー、どうだろ。もう一人か二人ぐらいは、いたほうがいいかも。ダグラスが本気を出したら、ボクたちなんてぺろりと食べられちゃうし……」


 なんかひどい言われようだった。

 まったく、今すぐここで食ってやろうかお前たち。


 ──さておき。

 俺たちはそんな調子で村じゅうを回って、次々とイビルフラワーを狩っていった。


 しばらくの後、ほかの冒険者たちの分も含めて四十体近い数のイビルフラワーを狩り終えた頃には、村に邪悪な植物モンスターの姿は見当たらなくなっていた。


 だが──


「あれ、そういやルークたちはどうした?」


「ん……? そういえば、少し前から姿を見ないね。どこ行ったんだろ」


 全部で五つの冒険者パーティが、パーティごとに村全体に散ってイビルフラワー退治を行った結果、ルーク、アデラ、シェリルの三人だけが見つからなくなっていた。


 ひょっとして、何かのミスで全滅したか……?

 いや、だとしても村のどこかに、その姿があるはずだが──


 と、そのときだった。


「──いやぁあああああああっ!」


 どこか遠くから、聞き覚えのある女性の悲鳴が聞こえてきた。


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