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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第5部/第3章

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女王との戦い(3)

 俺が【魔断の斧】を放つと──


 聖斧ロンバルディアの刃によって「斬られた」十のドラゴンブレスは、まるで存在を否定されたかのように、跡形もなく消滅していった。


『何……? いったい何が起こったのです』


 十の首を持った竜の女王が、わずかな驚きの声をあげる。


 これでひとまずの危機は回避できた。


 だが通常のドラゴンと一緒ならば、次のブレス攻撃が放たれるまでは、それほど長い猶予があるわけではない。


 許された猶予の時間は、おそらく三十秒ほど。

 そこを一つのタイムリミットと考えるべきだろう。


 それまでに、目の前の怪物をどうにかできるかが勝負の分かれ目だ──そう考えて動くことにする。


「行くぞ、ティフェレト!」


「あいよ、ご主人様!」


 俺は黒髪の大剣使いを伴って、十の首持つ竜王セフィロトへと駆けていく。


 ティフェレトはどうも、ご主人様呼びが気に入ったらしい。

 気まぐれでどうしようもないやつだが、こうなってくると意外とかわいいかもな。


 さらに──


「──【剛弓】!」


 ビナーの弓から矢が放たれ、竜王の首の一つに命中した。

 パンと音を立てて弾けた大砲のごとき一撃は、竜鱗を剥がし、その下の肉を抉る。


 ダメージが通る。

 むしろ竜人族の姿だったときのほうが硬い気すらしてくる。


 だが目の前の真の姿が、元より弱体化したなどと思うのは早計だろう。

 特に攻撃力は、ブレスだけを見ても圧倒的。


 短期で勝負を決めなければ、敗北するのはこっちだ。


「ビナー、いいぞ! そのまま攻撃を続けてくれ!」


「はい、ダグラスさん! ──【剛弓】!」


 ボッ──パンッ!

 さらに小気味いい音が響いて、ビナーの射撃が竜王の肉を抉っていく。


 そのタイミングで、俺とティフェレトが竜王と肉薄。

 頭部のうち二つが、俺たちに噛みつこうと襲い掛かってくる。


「──【リミットブレイク】【神速】!」


「おぉっと!」


 俺はスキルを使って、ティフェレトは素の敏捷性と野生の勘で攻撃を回避。

 その際、俺とティフェレトは左右に分かれる。


 ティフェレトはそこで地面を蹴り、高々と跳躍。


「さっき土下座させられた恨み!」


 首の一つに飛び掛かり、空中で大剣を振り下ろす。


 その一撃は女王の竜鱗をものともせず、その首の半ばを大きく断ち切った。

 一刀で首を切り落とすとまではいかないが、深々と斬り裂かれた傷口からは激しく血が噴き出す。


 一方で俺もまた、地面を蹴って大きく跳躍し──


「こっちも行くぜ──【ホーリースマッシュ】!」


 ロンバルディアに聖光をまとわせ、女王の首の一つに斬りかかる。


 その俺に、別の首が噛みついてこようとしたが、【神速】と【リミットブレイク】で速度を上げ矢弾のように突っ込んだ俺には追いつけず、直前に俺がいた空間をむなしく噛み砕いただけだった。


 一拍の後、俺が振り下ろした斧が、狙った首に直撃。


 ──ガゴォオオオオンッ!


 スキル効果を乗せたロンバルディアの刃は轟音とともに、女王の首の一つを勢いよく切断した。


「すごい、一撃で!」


「さすがダグラスにゃ!」


 エレンとミィナの称賛の声。

 二人は戦力的に参戦をあきらめ、応援モードに入っていた。


 彼女らの声もあって、俺自身の中にも、いけるという気持ちが湧いてくる。


 この勢いで頭部の数を減らしていけば、その分だけブレス攻撃の数も減る。

 ある程度まで数を減らせば、十分に対応可能になるはずだ。


 俺は着地しながら、頭の中で戦術を組み立てる。


 手持ちの【ホーリースマッシュ】はあと一枚。

 それでもう一本別の首を落として、残りはティフェレトやビナーとともに波状攻撃をかけてごり押しすれば、きわどいがどうにかなるんじゃないか。


 最悪のケースでも、【鬼神化】を使えばどうとでもなるだろう。

 うちの嫁たちにはいつも悪いが──


 などと思っていたときだった。


「なっ……!?」


 竜王を見上げた俺の目に、悪夢のような光景が映った。


 ずりゅりゅっと、音を立てて。

 俺がたった今【ホーリースマッシュ】を使って切り落とした首が、瞬く間に完全再生していたのだ。


「そ、そんな……!?」


「ははっ……嘘だろおい……?」


 ビナーとティフェレトも、驚愕の声をあげる。

 俺たちの【治癒能力】とは桁が違う、異常なまでの再生速度。


 いや──


 よく見ればビナーの矢が抉った肉や、ティフェレトの大剣が斬った傷口に関しては俺たちと同じような再生速度しかなく、いまだ治癒が済んでいない。


 どういうことだ……?

 首を切断したときに働く条件発動の能力なのか、それとも──


 だが考えを巡らせる時間は、与えられない。

 竜の女王が高らかに笑う。


『あははははっ! 愚か、愚かねぇ。たかが虫けらごときが、女王たる私に本当に勝てる気でいたのかしら。──さて、分を弁えない愚かな虫けらどもには、相応の罰を与えなければね』


 今度は十の首が、俺とティフェレトに各五本ずつ、同時に襲い掛かってきた。


 先の攻撃は手を抜いていたのかと思うぐらいの苛烈な猛攻。

 こいつは【神速】を使っても、すべての回避は不可能か──


「チッ──【絶対防御】!」


 ──ガギィイイインッ!


 俺に噛みつこうとしたいくつもの竜頭の牙が、不可視の防壁に阻まれる。

 わずかの間だけだが、あらゆるダメージを完全にシャットアウトするスキルだ。


 だが、まだスキルが残っている俺はともかく──


「くっ、手数が多すぎる──しまっ……!? ──うぁあああああっ!」


 すべての攻撃を回避しきれなかったティフェレトが、ついに一つの頭部の牙に捕まった。


 その全身を巨大な頭部に食いつかれ、獲物となったティフェレトは体ごと宙に持ち上げられてしまう。


「ち、ちくしょう、放せ……あがっ、あぁああああああっ!」


 ──ガシュッ、ガシュッ!

 ティフェレトを噛み砕こうと、竜の顎が動く。


 あれはまずい……!

“竜神器十将”最強クラスを誇るティフェレトの闘気をもってしても、あれでは本当に噛み砕かれてしまうのも時間の問題だ。


 ティフェレトが自力で脱出できればいいが──

 いや、迷っている場合じゃない。


「──【神速】【重圧】!」


 俺はスキルを使って速度を倍化させ、さらに竜王の速度を鈍らせると、自分に群がっていた五つの首を掻い潜り、ティフェレトの救助へと向かった。


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