クエスト達成(いろんな意味で)
オーク退治を終えた俺たちは、まず村に戻ってその旨を報告。
倒したオークどもの姿を村人にも確認してもらって、クエスト達成となった。
ちなみに村までの帰り道、ロンバルディアからこんな報告があった。
『我が主よ、ちと遅れたが朗報じゃ。我の格がまた一段向上して、【鬼神化】のスキルを獲得したぞ』
「【鬼神化】……? どんなスキルだ?」
『うむ。このスキルを使うと、一時的にじゃがお主の闘気量が爆発的に増え、大幅に戦闘能力が向上する。パワー、スピード、タフネスいずれも普段の比ではなくなるの。効果時間は三分間じゃ』
「……いや待て。これ以上、単純な戦闘能力が上がるのか。使いどころあるかそれ?」
『そんなことは我の知ったことではないわ。──だが我が主よ、覚えておけ。このスキルにはおそろしい副作用がある』
「副作用? どんなのだ」
『スキルの使用後しばらくの間、お主の男としての本能が肥大化し、理性が隅に追いやられる。より具体的に言うと、性的欲望に抑えが効かなくなる。お主の鞘となるべき者がおらぬときは、近隣の街や村で見境いなしに何人もの女を襲うことになるぞ。重々気を付けろ』
「……いや、いやいやいや。それめちゃくちゃヤベェやつじゃねぇか」
『うむ、ヤバいやつじゃ。ま、このスキルはなるべく使わぬに越したことはないの。それでも使うつもりならば、鞘となる者は我のほかに三人は用意しておけ。一人や二人では壊れるぞ』
新しいスキルを獲得したかと思ったが、そんなことはなかった。
使い物にならん……。
ちなみに鞘がどうとかは、なんとなく意味が分からないでもないが、聞かなかったことにしようと思う。
本当にどこが聖斧なのかと問い詰めたい。
性斧の間違いじゃないのかと。
まあ、さておき。
オーク退治のクエストを完了した俺たちは、街へと戻り、冒険者ギルドでクエスト達成の報告をして報酬を受け取った。
そして俺のDランクへの昇進も認められた。
エレンの話によるとギルドに認めさせるのにひと悶着はあったらしいが、「疑うんだったら最初からボクを検定員にしないでほしいんだけど?」と強めに出たら、Dランクぐらいならいいかということで通ったらしい。
まあ万年Eランクだった俺が、たった一人でオークの群れをバッタバッタとなぎ倒したのだと率直に報告したらしいので、疑われるのも無理からぬところではあった。
この調子だと、Cランクへの昇進試験は直接ギルドマスターに検定員をやってもらうぐらいはしないと難しそうだな。
その後エレンは、当たり前のように俺たちのパーティに加わった。
これでうちのパーティは、Dランクの俺、Fランクのミィナ、そしてCランクのエレンという三人パーティになったので、受けられるクエストの幅はかなり広がった。
それにしても、なんともランクが凸凹のパーティだ。
通常、パーティを組むのは同程度の実力の者同士になるのが一般的なので不思議な感じではあるが、実質のところ俺とその嫁たちというパーティなので仕方がない。
そして、クエストを完了してDランクへの昇進も決まったら、酒場に繰り出して三人で飲み会だ。
ミィナ、エレンという二人の可愛らしい彼女と過ごすひと時は、とても楽しい時間だった。
そんな時間もやがては過ぎ去り──
***
──ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。
木窓の隙間から朝日が射し込む、爽やかな朝の時間。
天蓋付きのゴージャスな大型ベッドに、俺は二人の嫁とともに横たわっていた。
「どうしてこうなった……」
ベッドの上の俺は、左右に美少女を一人ずつ侍らせ、なんとも優雅な目覚めだ。
右側には獣人の少女ミィナ。
左側には剣士の少女エレン。
二人の美少女は俺にもたれかかるようにして、すぅすぅと幸せそうに寝息を立てている。
三人とも、毛布の下は全裸である。
つまりはそういうことだ。
昨夜はお楽しみだったわけだ。
俺のようなおっさん冒険者がこんなことになるのは、犯罪なのではないだろうか。
いや、ミィナもエレンも成人はしているから、犯罪ではない。
犯罪ではないのだが。
「夢なら覚めないでくれねぇかな」
俺はぽつりと、そうつぶやいていた。





