表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの村  作者: かえで


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

戦いの後

偶然の連続で勝利する主人公。その後話的扱いです。

 ラティツィータが弓を使えることを、私は知らなかった。おそらく、村人さえも知らなかったに違いない。当然、ラティ本人も。

 私が絶体絶命のピンチに陥ったその瞬間、まるで伝説の勇者のように絶妙のタイミングで駆けつけた彼女は、生まれて一度も触ったことのない弓を用いて、私を救った。

 私の中に、密かに語り継がれるだろう伝説。その伝説の裏事情は偶然の連続だったらしい。

 ラティツィータは、私と村が迎えた危機を目の当たりにして、いても立ってもいられなくなった。そして、足の赴くままに決戦場所に来た。

 ところが、武芸のたしなみのまるでない彼女に、何ができるという訳でもない。

 彼女が、自分に何かできないだろうか、と思慮をめぐらせている間に、奴がレスティの家から出現し、次々と村人を薙ぎ倒していった。

 そして、私が今までにないほどに死の危機に直面したその瞬間。彼女の理性のたがが一気に外れたのだろう。先ほどまで、自分に何ができるかを自問自答していた彼女は、無我夢中で傍に落ちていた弓を拾うと、奴を狙って弓を絞り、一気に矢を放ったのだという。

 どうもおかしい。

 無我夢中で弓を引き絞り、放った人間が、果たして狙いを定めることができるだろうか?

「……本当に奴を狙って矢を放ったのか?」

 あからさまに疑惑の眼差しを向ける私に、彼女は顔を真っ赤にして主張する。

「失礼しちゃう! ちゃんと狙って射たわよ!」

 だが、最初は、目こそ狙っていなかったものの、間違いなくハイイロオニグマを狙って矢を射た、と断固主張していた彼女だったが、細かく話を聞いていけばいくほど、徐々に話にぼろが出てきた。

 恐るべきことに、最終的に彼女が狙っていた場所というのは、なんと『ハイイロオニグマの方』だったというのだ。

 私は唖然とした。

 あの時は、私も必死だった。奴の眼窩に突き刺さる矢を見ても、ひょっとしたら自分がこの矢に当たっていたかもしれないとは考えなかった。しかし、矢が奴ではなく、私を直撃している場面を改めて想像してみたら、背筋が寒くなった。

 もしその矢が私に当たっていたら、私は一体どうなっていただろうか。

 もし仮に、クマに向かって放った矢が私に命中していたとする。その時、命を落とすのは、私だけではない。ラティもレスティも、他の村人も奴に殺されていたに違いない。ラティが二の矢を接げたとは思えない。

 その話が出た当初は、彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべたものだった。確かに、彼女は狙いを定めることなく矢を射た。だが、それは彼女が必死に私や村人を助けたい一心でとった行動だ。私は、それをあまりとやかく言う気はなかった。

 しかし、終いには、ラティはその話が出るたび、「でも結局当たらなかったからいいじゃないの」と開き直るようになった。

 あの死闘からしばらく時間がたっているからこそ、私は言い訳をするラティをかわいらしく感じ、事件自体も笑い話で済んでこそいた。しかし、たまにふと冷静になって考えてみると、それで済むような、簡単な問題ではなかったはずだが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ