第1話 飯島由紀子
初投稿です。公募では出しにくい構成の物語を描いてみました。
文字数があまりないので、するっと読めると思います
朝が怖かった。黒い服に着替える。
メールで届いた内容が今、本当になる。江口桜子のお葬式。
七年前、毎日見ていた、やわらかい頬は骨になって埋められる。
生命活動は名ばかりのフィクションなのかもしれない。こんな細くて白い骨が桜子を支えていたなんて思えない。
長い長い髪の毛に執着していたのに。
ずっと羨ましかった髪の毛が切られたどころか今はすべて燃えた。
桜子の母親がこちらに気づき、話しかけてくる。
「由紀子ちゃん、久しぶり。こんなかたちなんて、ごめんなさいね、」
自分の娘が自殺したなんて、同い年の私にメールをした、彼女の気持ちは計り知れない。
私たちは幼稚園から高校二年生まで、ずっと仲が良かった。
うんざりしてしまったのは、私の方で、LINEも、インスタも、すべてブロックしてしまった。
桜子はよく笑う女の子だった。
私たちはお笑いが好きでよく二人でテレビを見た。
桜子は大きな口を開けてがたがたの歯を見せて笑っていた。
遺影で使われていた写真は、私が見たことのない桜子だった。肩のつかないボブ。
肩までしか写ってないのに髪の毛の終わりが見える。
口元が一本の線みたいにきゅっと結ばれている、その笑顔が変だった。
私たちは小さいころから共通の趣味であるお笑いのまねをしていじりあっていた。
「ミイラかと思ったらゆきっちか!」
とか
「あ、桜子は小さいから見えないもんなっ」
とか
お笑いは好きでもセンスはなく、いつも身体的特徴をいじることしかできなかった。
そんな成長しないいじりが続いて、受験でいらいらしていた、私は、文句も言わず
すっと離れた。いつも背中を預けて、寄ってくる桜子を避けた。
部活でペアを先に作った。
お弁当を彼氏と食べた。
彼氏なんていらない、ふたりでいよーねって約束を破った。
バカな桜子もさすがに気付いたのか、背中を寄せてくることも、話しかけてくることもなくなった。
ずっと一緒だった桜子があの桜子の笑顔が嘘だったかのようにもじもじ部活の連絡を言ってくる。その時のわずかに口の右端が動いた痛みを今でも覚えてる。
卒業式にクラスメイト達に適当に綴ったアルバムのメモ欄。
桜子にももちろん書いた。
最後のなれ合いだ。私も「今までありがとう。」とペンを走らせた。
でも桜子は「今までごめん」とだけ。
わからなかった、なんでこの子は謝ったのだろう。
桜子は見かけに寄らずさっぱりとした性格だ。自分のことが嫌いな人間なんて嫌いに決まってる。
ありがとうという言葉があまりにも薄っぺらいと感じたのは初めてだった。
そこから私は罪滅ぼしのためにブロックを解除し、LINEを送った。
「桜子、今度遊ばない?」
LINEは割とすぐ帰ってきた「いいの?」
余所余所しい、私に気を使っているのだろう。なんだか気分が良かった。がりがりとか、バカにしあってたのに、対等だったのに。
私の方が上になった気がして。
私だけ桜子をいじったり、予定だってよくすっぽかした。
繋がっていたのに、最後に桜子の笑顔をみたのは七年前だ。
きっぱりしていたはずの性格が、おどおどして、気にしいに変わっていった。
桜子が自殺した日は私と遊ぶ予定のあった日だ、珍しく桜子からリスケしたいと、LINEがあった、彼氏と別れむしゃくしゃした私はとんでもない罵詈雑言を浴びせた、後から怖くなって送信取り消しをしたから内容は覚えてない。
桜子とのLINEを遡る。
「別に、気にしすぎでしょ。」
「桜子、あとですぐ返すから6000円、paypay送って。」
深夜23時。普段の桜子ならまだ寝る前なのに返信が来なかった。
「ごめん寝てました。大丈夫?」
「お母さんに送ってもらったから。」
次の日私たちは渋谷で服を買いに行く約束をしてたのに、3日間未読無視した。
送られてきたメッセージに既読がつかないように、長押しして、何度も確認してたのを覚えてる。
私のせい、になってしまうのだろうか。
頭を巡らせていてもちらつく。
私は目の前にいる桜子のお母さんに会釈して、よろよろと情けなく座った。
私たちのLINEのトークを見たら、彼女の無気力な笑顔は軽蔑や憎悪に変わってしまうだろうか。
地元に帰りづらくなるなぁ。そう呟いて、自動販売機でコーラを買った。
作品を評価されたいです、殻にひきこってますので。




