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人造戦記 -穢れた奇蹟のスプレンデンスー  作者: 乙川せつ
-序章-

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02 絶望の活路

 今日の施術はいつにも増して苦痛だった。

 激痛が収まらず、身体を捩ることも叶わない。


「大丈夫だからね、もう少し頑張ろうか」


(――――――あれ、分かる)


 どうしていきなり言葉が分かるようになったのかは不明だが、恐らく頭を改造されたのだろう。

 自分が自分でなくなる感覚は、少年にとって耐えがたい恐怖だった。


(何が大丈夫なんだろう……もう、だめだ……)


 これ以上何かされてしまえば、死んでしまう。

 そう確信していた。


「これより、最終手術を開始する」


 最終、つまり―――終わり。

 

(おわるの……? やっと、おわる……?)


「手術内容は被験者に魔力を宿すこと。人口魔法臓器を移植し、全身に魔力回路を開通させる」


 あの男がそう言うと、周囲にいた研究者たちは頷いた。

 魔力。

 RPGやファンタジー作品でしか聞かないような不思議な力。そんなものが実在するというのか。

 シンには信じられなかった。でも、信じるしかなかった。

 この状況自体が、普通ではないのだから。


「それでは皆……始めよう」


 これさえ耐えれば解放される。そんな淡い希望が、シンの心を支えていた。

 

 だが。


「第一段階、臓器移植開始」


 研究者たちはシンの腹部を切開し、カプセルに入っていた臓器を埋め込んだ。

 それは、今まで感じたことのない苦しみ。

 腸が燃えるように熱い。全身が痺れる。舌がドブのような味を感じた。

 視界が白く点滅する。

 吐き気が止まらない。

 痛い。


 痛い。


(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い――――――)


 臓器移植による強烈な拒絶反応。

 兄弟でも身体は強い拒否を見せるのだ。異世界の人工臓器を入れられたことによる苦しみは筆舌に尽くしがたい。


 先程まで抱いていた希望も簡単に打ち砕かれる。

 これは、確実に死ぬ。


「きみ、ヒアルを」


「了解です。――――――【ヒアル】」


「…………⁉」


 痛みが消えた。

 女性の手のひらから出た緑色の光がシンの内部を癒したのだ。

 

(魔法……‼)


 そうか、これが自分が死なない理由だったのかとシンは納得した。

 そして、死ねない理由であるとも。


 回復魔法で失いかけていた意識も引き戻された。気絶できなかったのだ。

 これで、地獄は続く。


「第二段階、臓器起動。神経系接続施術開始。魔力回路強制開通」


「…………ぁっ」


 溶けた鉛が通っていくような感覚。それが腹部から頭、足、手まで到達する。

 そしてその熱が力へと変わっていくのが実感できた。

 

「最終施術終了。人工勇者計画第四号、ファーストフェイズ完了。明日よりセカンドフェイズへと移行する」


「了解」


(……かえりたい……いや……絶対に、ここを抜け出してやる……絶対に家に帰る!)


 

 ◇◇◇



「報告せよ」


「はっ」


 そこは研究所の所長室。

 長い髭の男がその椅子に座っている。計画の責任者は彼に報告を始めた。


「現在、一号から三号までは実験終了で凍結中。すぐにでも実戦配備が可能です。そしてつい先刻最終施術を終えた最終ロット、四号ですが明日より対魔人及びモンスター戦闘実験を開始します」


「…………四号の魔力回路はどうなっている」


「正常です。施術直後は拒否反応がありましたが、現在はそれも落ち着いています」


「…………君が開発した人工魔力臓器と回路の最終型、か。あの設計図を見た時は驚いたよ、まさか魔力を持たない人間に無理やり恩恵を授けるシステムとは」


 所長は笑った。

 シンからすれば何も面白い状況ではないが、研究者たちからすればシンは異世界の人間。人権など存在しない。

 つまり実験動物……モルモットに過ぎない。


「最前線の戦況はどうなんです?」


「問題はない。今は勇者が戦っている」


「今は……ですか」


「それより、四号のカウンセラーは大丈夫か? 一号の時はカウンセラーが壊れたからな」


「今のところ問題は起こっていません。定期検診もクリアしています」


「まったく、人間ではない相手に同族意識を持ってしまうとは思わなかったよ。あの時は流石に肝を冷やしたものだ」


「人工勇者計画は最終フェイズに入ります。これが完成すれば、人類は勝利する」


「ああ、その通りだ」


 そのためには、異世界の人間を利用することも厭わない。

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