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エラーコード・アテレスロゴス  作者: 焼きそばにき


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第15話 雨の天使と転校生

第2章4話です!一章もぜひ見てください。コメントも募集中です!

 九月一日。今日から夏休みも終わり、また学校生活が始まる。朝の空気には、まだ八月の湿り気が残っている。それでも、胸いっぱいに吸い込むと、ほんの少しだけ軽い気がした。


「……眠い」


 制服に袖を通しながら欠伸を噛み殺す。ボタンを一つ掛け間違えて、もう一度最初からやり直した。今朝、俺が起きた時にはすでにアオハは家にいなかった。


 ——別に心配はしていない。あいつは、そういうやつだ。どうやって日中の学校に侵入するかは、結局最後まで教えてくれなかった。まあ、聞いても「問題ありません」で終わる気はしてたけど。


 俺は朝ごはんを食べて、高校に向かう。つい一ヶ月前まで毎日通っていた通学路だけれど、随分久しぶりに感じる。道路にできた水たまりに、朝日がキラキラと反射している。高校に向かう途中、信号で止まっていると、後ろから声をかけられる。


「ようタツキ。生きてたか?」


「おはよう、カイト」


「いやあ、一ヶ月ぶりなのにどうしたんだその顔は?どうせ昼夜逆転して、最後の一週間はゾンビみたいに生きてたんだろ」


「誰がゾンビだ」


 どうせこいつは、俺がどんな顔をしていようが、同じことを言う。


「しかも今日は珍しいな。朝から誰も助けてない」


 そう言って、わざと周りをきょろきょろ見回す。


「は?」


「迷子の女の子とか、荷物重そうなおばあちゃんとか。雨でも降るんじゃないか?」


「そんな毎朝のノルマじゃねえよ」


 そんなくだらない話をして笑う、いつもの風景だ。


「そういえば知ってるか?今日転校生が来るらしいんだよ」


 カイトが不意に、そんなことを言う。


「転校生?こんな時期に?」


「その転校生なんだけどな?とある噂があるんだ」


「噂?またどうせデマだろ」


「今回は本当だよ。……たぶん。いや、八割は」


 カイトはボソッと一言付け加える。カイトの話は、だいたいいつもこんな感じだ。やけに曖昧で、どこまでが本当なのかわからないような噂をいつもどこからか拾ってくる。そしてカイトは気を取り直したように話を続ける。


「何でも、雨の天使とか呼ばれてるらしくてさ」


「雨の天使?」


 天使、と言う言葉に引っ掛かりを覚えるが、ひとまずカイトの話を聞く。


「昨日、夕方に大雨が降っただろ?そこでたまたま学校の近くを通ったやつがな?見たんだってよ、その転校生を。その時な、そいつの頭の上にな、何が見えたと思う?」


 まさか、と頭に浮かんだ仮定を口にする。


「……天使の輪っか?」


「そう、その通り!」


 カイトが指を鳴らす。その瞬間、胸の奥で、何かが引っ掛かる。


「いやあ、転校生ってどんなやつかなあ。天使っていうくらいだし女だよなあ。超絶美少女だとしたら、ぜひお近づきになりたいぜ」


 カイトが何か言っているが、ほとんど入ってはこない。恐らく、頭の上に天使の輪がある人間なんて、一人しかいない。いや、正確には人間ではないが。


「……どうかしたか、タツキ?」


「い、いや何でもない」


 カイトの言葉で、意識が現実に戻る。


「もう信号青だぞ?早く行かないと遅刻するぞ」


「そうだな、急ぐぞ」


 一体何をしたのかはわからないが、噂の真相を確かめるためにも、俺は足取りを少しだけ速めた。


「ギリギリセーフ。タツキ、お前はアウトじゃないか?」


「今ほぼ同時だっただろ」


 そんな軽口を叩き教室に入るなり、教室のあちこちで、ひそひそと噂話が弾んでいる。


「天使だってよ」


「輪っか見えたらしい」


「絶対盛ってるだろ」


 ……いや、笑えない。俺だけが、笑えない。


「みなさん、二学期からもよろしくお願いします。早速ですが、うちのクラスに新しい転校生が来ます。入ってきて」


 そう言った先生の言葉に促され、教室の扉がガラリと開く。それだけで、ざわついていた教室の空気が、すっと引いていく。そして教室に一人の人物が入ってきた。空のような真っ青な瞳に、銀色の髪を靡かせている。それは間違いなく、アオハだった。


 ——どうやら、本当に問題はなかったらしい。


「まずは自己紹介からお願いね?」


「はい。アオハです」


 淡々と、そして無表情に言った。


「あの、何かもう少し」


「これ以上、何が必要なのですか?」


 先生は、アオハに微妙な顔をしながら続ける。


「……はい、みなさん地方の高校から転校してきたアオハさんです。よろしくお願いします」


 先生はアオハに目配せをしているが、アオハはそんな空気など気にも留めず、教室を見回している。そしてふと、アオハと目があう。


「あ、ちょっとどこに」


 アオハは先生の制止も聞かず真っ直ぐ俺のもとに歩いてくる。教室が再びざわつく。


「タツキ、高校に侵入成功しました。早速探しに行きますよ」


「……アオハ、まずは先生の話を聞こっか」


「分かりました」


 そう言って、アオハは先生の横に戻る。先生は一瞬だけ額に青筋を浮かべ、それから何事もなかったかのように咳払いをした。先生が話を続ける中、俺にクラス中の視線が集まっていることをひしひしと感じる。俺の休み時間はしばらくなくなる、そんな予感がした。

現在、カクヨムをメインに焼きそばにきという名前で行なっています。ぜひそちらの方も見てください。カクヨムに追いついたためこれからは週一投稿となります

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