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黒の商人  作者: 茄子大根
22/23

1.22情報交換してみます


 バームクーヘン3切は、5歳児を満足させるには十分な量だった。


「全く、凄い食い意地やなぁ」


 未だ若干引き気味の幼女に突っ込まれる俺。

全く反論はございません。いや本当にありがとうございます、女神様。最初、幼女扱いしてすみません。と、俺が拝む勢いで手を合わせていると、女神様はさっきよりも引いた感じで話し始めた。


「と、ともかく、話、進めよか。家族を誤魔化せるいうても限界、あるんやし」

「ふぉふぉふぉ、そうじゃの。すでにアル君、彼の要望は聞いておる。文明を発展させるための知識と技術と戦う力が欲しいそうだの」

「ふーん、そうなんや。戦争が始まらんとええけどな。以前みたいに」


 長老の話を聞いた女神様から辛辣な言葉が返って来た。というより話し方が女神様っぽくないな幼女に戻そう。面倒だ。


 話も戻して。


 戦争それは俺も思っていたことだ。地球でも起こったし。技術の進歩と切っても切れない戦争。だから説明する。俺が考える戦争を回避しつつ発展させる方法を。難しいことだが不可能ではない方法を。


「ふーん、一応考えとったんやね。でも、難しそうや。綱渡りやね」

「だが誰かが導かねば世界は、このまま同じことの繰り返しじゃの。我らの悲願にも届かんであろうの」

「そういうものかもね。まぁ、天の声の要請みたいやし、協力してあげへんこともないよ。こっちのお願い聞いてくれたらやけどね」


 幼女は無邪気な笑顔の中に悪い何かを含ませていた。

 


 翌日、俺は一人書庫で考え込んでいた。内容はもちろん昨日の長老達のことだ。

 あの後、幼女のお願いやこっちの要望などを話していたのだが、誰かがあんたを探しとる、と突然幼女が慌て出して即元の場所、今、俺が座っている椅子に連れ戻された。


「信頼していいのだろうか?」


 目下一番の問題は、そこである。


「漫画なら、親切な奴ほど敵だったりするからなぁ。考えすぎかなぁ」


 考えても考えても纏まらない。それでも考えずにはいられない。

 うんうん唸っている俺の眼前に突如現れたのは昨日の幼女だった。


「今日は、うちが迎えに来てあげたわ」


 知らない人が聞いたらガキが粋がって、とか言って顔を顰めそうな物言いである。俺は気にしていないつもりだったけど、顔に出ていたのかもしれない。


「何よ、不満?」


 幼女はかわいらしく口を尖らせた。


「いえ大丈夫です」

「そう、それやったらもう少し砕いた話し方してくれへんかな。堅っ苦しいの苦手やねん。あと、名前教えてへんかったな、うち、サクラ。よろしゅう。アル」


 それだけ告げた幼女ことサクラは、返事も聞かず俺を転移魔術に引きずり込んだ。


 ちなみに魔術についても昨日教えてもらった。結局のところ理術と同じだそうだ。

 元々は魔術と呼ばれていたそうだが、ある宗教が魔術は魔族や魔獣が使うものだ! と叫びだし、人間が使うのは理術だとか何とかで因縁をつけ近隣諸国に戦争を仕掛けたそうだ。


 その後、10年にも渡り続いた泥沼のような戦いの末、呼び方が変わった。

 信じる者は救われるという宗教だけど、最も人を殺しているのも宗教だということだった。


 話を戻そう。


 転移魔術から放り出された俺は、後頭部に強い衝撃を受けてのたうち回っていた。頭から床に突っ込んだらしかった。


「痛たたた」

「何しとるんよ。どんくさい」


 痛がる俺に、腕を組み見下ろすサクラからの慈悲はなかった。いや、原因はサクラでしょ? サクラが引っ張り込むから後頭部ぶつけたのでしょ。と思うけど、口には出さない。

 長老みたいに蹴られて痛いところが増えそうだから。


「まぁ、ええわ。そこに座って待っといて」


 言いつつ指さすサクラ。その先には昨日俺が座っていた椅子があった。

 座って待つこと数分。クッキーを山盛り積んだ皿と茶を持って戻って来た。


「昨日は誰かさんのせいでおやつを食べ損ねたさかい、母さんに増やしてもろたんよ。アンタの為ちゃうからな!」


――ツンデレってやつか?


 『田舎に聖地を』プロジェクトの時に読まされた漫画を思い出していたらサクラに睨まれていた。

 慌てて脛を隠したのは言うまでもない。



「ご馳走様でした。美味しかったです」


 出されたクッキー、俺とサクラで平らげた。とは言ってもサクラは、数個食べた程度で残りは俺の腹に収まったのだけど。

 本当にうまかった。


 砂糖が存分に使われているのもさることながら、ベースとなる小麦、卵に至るまで日本でも滅多にお目にかかれない高級なものが使われているようだった。その上、最高の焼き加減。まさに至高いや究極の一品でした。


「何ニヤニヤしとるんや、気持ち悪い。それより、昨日の続き話してんか」


 クッキーの余韻を楽しむ俺を、ばっさり切り捨ててサクラは続けた。


「元居た世界では、どういう風に育ってきたん?」


 これだけ聞けば、俺の過去を知りたいの? 俺に興味があるの? とか勘違いしそうだが、サクラの目的は違う。彼女が知りたいのは、一般的な人間としての俺の情報だ。


 昨日は、地球の環境、歴史、文化、風習、はたまた人間の嗜好に至るまでありとあらゆることを質問し続けたサクラ。その続きということだろう。そう解釈した俺は、日本人の一般的な一生について話をすることにした。


「ほぼ全員が読み書きできるんか、すごいやん? このジアスやと識字率二割ってとこなんやから」

「医療関係もすごいな。魔術無いんやろ? 体を切り刻んで病気を治すんか。よぉ、そんな怖いことするなぁ」

「戦争するんか、ジアスと同じやなぁ。理由もくだらへんし。肌の色の違いなんて。ホンマにアホちゃうか」

「ベースが違うてるから比較が難しいけど、確かにジアスより進んでいるみたいや」


 などなどが、拙い俺の話を聞いたサクラの感想だ。

 辛辣な言葉も多いけどちゃんと話を聞いてちゃんと理解している。この話を通じて俺が感じたことだ。


「大体分かったわ。それでこの話、魔術で情報空間に上げるけど構わへんな? そないしたら、あなたも同じこと聞かれんで済むし」

「え、魔術で情報空間? どういうこと?」

「……そういえば、こっちのこと話してなかったわ」


 俺の疑問に、アンタ知らないの? って顔をしていたサクラだったけど、自分が説明していないことを思い出したようで、顔を赤らめそっぽを向きながら教えてくれた。


 情報空間とは、時空魔術の一種で簡単に言うとネット辞書みたいなものらしかった。

 許可された人が、時空魔法でどこからでもアクセスできるようになっており、また、検索も可能で新しい情報を随時追加することもできるものらしい。便利なものだ。

 しかも情報は本のような文字だけではなく脳内イメージを追加可能という、ネットの進化系のようなシステムであった。


「そうや、ええこと思いついたわ。アルも時空魔術覚えたらええ。そないしたら、うちが面倒な説明せんで済むし」


 情報空間の説明の後、サクラは事も無げに話す。そして本当に、有無を言わせずに、俺に時空魔術を教え始めた。




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