第3弾について語ってみましょう。その2 (砂礫)
連歌会第3弾 お題(3)『昔原っぱ今は風呂、兵どもが夢の跡』 の鑑賞です。
こちらは、悲哀や情念すら感じられる、とっても深い作品が仕上がりました。
では、行ってみましょう~!
3)『昔、原っぱ今は風呂。兵どもが夢のくに』
さて。まずはお題の解説から。
かつて日本の三大遊郭と云われた、吉原 (江戸) ・ 島原 (京都) ・ 福原 (兵庫)。
島原は観光地に、吉原と福原は 『特殊風呂』 街になっております。
昔は原っぱで、『つわもの』 たちが戦い、筍を食んだり叢に顔を埋めて匂ひを嗅いだりした場所も……
今では、開発されて立派な風呂屋が立ち並ぶ街に……
今は昔と栄枯盛衰に思いを馳せるか、新たな街で夢を育むか♡
詠み手に託して、行ってみましょう!
まずは、陸 なるみさまの発句。
>八文字 大路練る身と 裏腹に
八文字、と大路練る、から華やかな花魁道中の様子が目に浮かびますね。
しかし、ここで 『裏腹に』 がつく。花街はかつては 『苦界』 と言われておりましたものね……
華やかさの裏の悲哀。ひとことで表すところが見事です。
しかし…… それを素直に受けると、ここで閉じてしまいます。
付句では、『裏腹に』 を悲哀も含めて繋げつつ、もう少し意味を広げてみましょう。
>ただひっそりと 見返り柳
見返り柳、は花街の門のとこに植わってる柳。昔のお客はここで 『楽しかったなー』 と原っぱを振り返ったといわれています。
けれどもこの側を通って買われていった女たちの多くは、再び外に出てこの側を通ることは滅多にありません。
そんな見返り柳、今もひっそりと立っているそうです。
そこから……
現代につなげてくださった黒鯛さま・間咲正樹さまの歌。
『とび田』 は大阪の飛田遊郭。
知らない方はグ○ってみてください。「これ現代の日本?」 と驚愕する光景が広がっております……
そのさまは、間咲さまの付句そのもの。
「着の身きのまま ながされるまま」
……しみじみします。
そして八刀皿 日音さま・水渕成分さまの言葉遊び。
『まに』 『舞い』 『あまに』
『うまい』 と連ねられていく音韻が、何度も読みたくなる上句と、
『ままに』 『まま』 と音を広いながらしっかり意味付けした下句のコラボ!
砂礫はこれを、『客が遊女にすっぽかされる歌かな』 などと思いつつニヤついていましたが、色んな解釈ができそうですね。
ちなみに、八刀皿 日音さまご自身の解説はこちら。
『ままに舞い~……は、まあ、そのまんまというか。
流され行くまま遊女になり、心の赴くまま尼になり、やがて時の流れるまま、ぐっすりと眠る時を迎える』
ふむむ……なるほど!!
そして同じく現代につなげて、栄枯盛衰を詠って下さった漉緒さま・黒イ卵さま。
確かに、今の風呂屋街の様子にしろ、島原の遊郭跡地にしろ、『夢の跡』 感は否めません。
有名な俳句をさらっと本歌取りして (技量が感じられます!) より哀愁を強めた上句を、『ひとよのはな』 『うつろい』 で美しく飾る……
ひたすら、す ご い !!
ここから、また華やかな時代に戻ったかのような、かわかみれいさま・陸 なるみさまの歌。
『花野』 は俳句でいうと秋の季語で、『秋の花が咲き乱れた野』 を指します。美しいけれど侘しい。
…… 『の下に』 『春の萌え』 !
を受けての、陸さま。
『振袖新造』 は客をまだとらない、新米の遊女のことです。
妄想が広がりますね♡
さぁ、原っぱがなかなか捗ったところで、折角なのでそろそろ風呂の方にも行ってみましょう。
>泡の中 無心に遊ぶ 三輪車
風呂・三輪車でググるとトイザ○スのページがヒットします(笑)
風呂で遊べる三輪車、なかなかお高いのですが、それにしっかり乗って下さったのが、黒鯛さまと水渕成分さま。
>沈み井く茸 阿波の話題娘
しずみいくたけ あわのわだいこ
お風呂で 『あわおどり』♪
>海原に 沈みつ艦の 潜望鏡
うなばらに しずみつふねの せんぼうきょう
うむ。さすが。
『海原』 『艦』 雄大さを感じます…… きっと潜望鏡も高く付きだしていることでしょう。
そこについた、秋の桜子さまの 『らしゃめん吐息 レンズ曇ラス』
なんともしっとりとした、色気を感じます。
そして、さらに情念の世界へ…… な感じの、黒イ卵さま・かわかみれいさまのお歌。
『御簾紙』 は上質の薄い和紙のことです。まるで浮世絵のような色気を感じる上の句から、グッとその心情に迫る下の句。お見事です。
そして次、間咲正樹さま、八刀皿 日音さま。
八刀皿 日音さまは、これまでも秀逸な言葉遊び歌をいくつも披露して下さっています。
『最後にもう一番』 と呼び掛けるかのごとき間咲さまに見事に答えられた形の八刀皿さま…… 素晴らしいです!
>折を見て 澱を掻き出し 折り重ね
おりをみて おりをかきだし おりかさね
>枝折り檻降り 識を織々
しおりおりおり しきをおりおり
音韻を楽しみつつ、色々と意味合いを考えてはニヤついておりますが……
より深い鑑賞のために、解説していただきました。
まずは間咲さまより
『どうやら遊女は御簾紙をペッサリーのようにして避妊していたらしいのです。
なので、仕事が終わった後は、こっそりそれを掻き出してゴミ箱に捨てる。
それが折り重なっていく様が、それだけ遊女として働いた年月だというのを表現したつもりです。』
そして八刀皿 日音さまより
『枝折り~……は、上句間咲さんの「澱」をどう捉えるかが問題でした。
そのまんま、いわゆる「澱」でもあるのでしょうが、「心の澱」……いわば「悪感情」と捉えることもできる。
……ただ、どちらにせよ、やりきれなさとか、そういう暗さを感じたので……。
その果てに罪を犯した感じにしてみました。
「枝折り」は枝を折る、で罪のイメージであるとともに、そのまま「しおり」、つまり目印の意味もあります。自己証明とでも言いましょうか。
また、城郭の意味もあるので、まさにそうした場所の象徴としても。
「檻降り」はそのまんまですね。獄に繋がれる。同時に、枝折りの「おり」を重ねて、折りまくるぐらい強い自己証明の気持ちを。
「識を織々」は、牢獄で静かに書を書きつづっているイメージですが、同時に、「四季折々」と音を重ねて長い時間の経過を、また、「死期」と重ねることで、遠くない未来命を落とす(処刑か病気かは知りませんが)ことへの諦めとか悟りとかを表してみました。ゆえに、静かに今までの人生での知識を織り成すことに、違和感が無いと言いますか……。』
……なんとも!
想像以上の深さです。
間咲さま、八刀皿さま、詳しい解説どうもありがとうございます。
さぁ、いよいよトリ。
秋の桜子さま・漉緒さまのお歌です。
>客手折り 夢の原散る 華一輪
きゃくたおり ゆめのはらちる はないちりん
>流れ浮世の 果ての寄る辺に
ながれうきよの はてのよるべに
花魁が客から落籍されて…… という、おおむねハッピーエンドといえそうなラスト。
けれども、『手折り』 『散る』 にその複雑な心情が現れています。
〆は、それを余すところなく拾っての言葉選びが光る句。
短い歌の中に、これだけのドラマを込められる技量には、 『さすが』 のひとことです。
こちらも、いつでも改稿・解説等受付中! 参加者の皆様、宜しくお願い致します。m(_ _)m
(*^-゜)vThanks! 【参加者の皆様】
黒鯛 さま、水渕成分 さま、秋の桜子 さま、かわかみれい さま、陸 なるみ さま、黒イ卵 さま、間咲正樹 さま、八刀皿 日音さま、漉緒さま




