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神様、信じますか?


「今日はもう遅いから、ここに泊まろう。

店主、部屋を2つ用意できるかい?」


「これはこれは。兄さんたち、先程はどうも。部屋代はサービスしますよ。ただ、あいにく1部屋しか用意出来ませんで、それでも良ければ。ささ、こちらへ」


俺たちはタダで泊まれる幸運に恵まれたが、ひとつ屋根の下、もといひとつの部屋の中。

これも、神のご加護の一種かとニヤニヤしながら彼方を見つめた。これはさすがに不敬であったか。


部屋に入って落ち着いた頃、二人の少女が楽しそうに話を始めた。


「あのぉ、直音さん。私の村では今も神様を信仰してます。神話では神様の髪は銀色をしてるそうです・・彼方さんは銀色の髪をしてますよね?私は今まで銀色の髪の人など見たことなかったから驚きました」


「ユミさん、神様を信じてるのですか?私もですよ。生きることに絶望して、何度も神様に祈りました。そしたら大将さんと彼方さんに出会えました。これも神様が導いてくれたのだと思いましたね(笑)」


少女たちがあまりにも嬉しそうに語り合っていたので、いつ会話に参加するかタイミングを見計らっていた。


「ユミも神様を信じるてるのかい?俺もさ、物心ついた頃から楽園に憧れるほど心酔してるよ。なっ、彼方?(笑)」


結局、ムフフな展開はなかったけれど、昼間は色々有りすぎて、皆すぐに眠けが襲ってきた。


◇◆◇◆


夜も更けた頃、誰かが小声で話している。


「お前、何者だ?本当に人間か?」


声の正体はユミだった。ナイフを彼方の喉元に押し当て、迫真の表情で問いただしている。


彼方は無言のままだった。


「もし、お前が神なら何故こんな醜い世界にした!神の加護など、どこにも無いではないか!父も母も殺され、幼子の時に私は捨てられた。友達も奴隷として連れ去られ、家まで焼かれ、行き場を失い、私にこれ以上どう生きろって言うのよ!」


ユミは泣き崩れ、憤り、そして彼方に訴えかけた。



「ユミ。悪いが今の話、聞かせてもらった。お前だけじゃない、俺も、直音だって、この世界を酷いって思うし、理不尽に殺される多くの人を見てきた。お前はこの先どうしたい?彼方を殺すか?」


「私はただ悔しいの。別に殺したい訳じゃない。彼が珍しい銀色の髪をしてるから、つい八つ当たりをしてしまったようね。もし神様がいるのならって、所詮そんなものいるわけないのに」


「ユミ。神様が人間を救わないのは、人間が救いようの無い生き物だからだよ。せっかく人間を救っても、結局今の世の中みたくなっちまう。これじゃ神様だってお怒りだよ」


「なら、救いを求める人だけ、集めれば良いんじゃないのかなぁ?」


直音が眠そうな目を擦りながら良いことを呟いた。


「それ、名案だな(笑)。でも今日のところはこの辺にしよう。ユミもナイフを仕舞って早く休めよ!話はまた明日だ」


それぞれの思いをぶつけた今、何となくだけど俺たちの進むべき道が見えた気がした。


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