神様、初めての街へ!
街に着くなり宿屋に入った俺たち。
この世界では宿屋に酒場が併設されてることが多く、大半は2階以上が宿泊施設になっていた。
帝都にある貴族専用の高級酒場以外、どこも粗末な食事しかなく、食欲を満たすことしか出来なかった。
食事を終えた俺たちが店を出ようとした時、見るからに柄の悪そうな連中が数十人、鎖で繋いだ少女を何人か引きずりながら入ってきたのだ。
「おい、店主。
酒だ、酒と食い物をありったけ持ってこい!」
「へ、へい。今すぐにお持ちします」
(あの鎖で繋がれた人間は?)
「多分、奴隷市場にでも連れて行くんだろう」
(人間を物のように売り買いするのか?)
「まぁ、そんなところかな。奴隷は死ぬまで物扱いさ、可愛そうに!」
「大将さん、彼方さん、何とかなりませんか?)
「手っ取り早いのが、アイツらをブッ飛ばして女の子を奪い去る(笑)」
「奪ったらダメですよ。逃がしてあげなきゃ」
(なら、話は簡単だ)
「ちょっとあんた。まさか、本気で・・あのぉ、彼方さん?」
◇◆◇◆
例の男たちが豪快に話をしている。
「親分。この拉致ってきた女、幾らで売れますかね?売る前に、少しばかりおいらたちのオモチャにさせちゃくれませんか?」
「お前も好きだな(笑)売り物にならなくなっちゃ困りもんだぞ!まぁ、程々にな(笑)」
「あいよ!さすが、親分。ちょっくら楽しんできますぜ!」
小者っぽい男たちは少女と奥へ消えようとしていた。
「神様、どうか私をお救いください!」
奥に行くのを拒む一人の少女が、必死に祈りを捧げていた。
「なぁ、彼方。あの子、お前に祈りを捧げているぞ」
「彼方さん、助けてあげましょう!」
彼方は男たちの前に躍り出た。
「親分、とびきりベッピン女がいやすぜ!」
「ほほう、これは随分と上玉だな!」
奴隷商人は彼方を女だと勘違いしたようだ。
「あのぉ、そこの旦那方。こいつ、男ですよ。あーそうか、そっちの趣味だったのか・・いやぁ驚きましたよ」
俺は皮肉を込めて罵った。そう言えば、楽園で直音も騙されたっけ。
「小僧、こんなベッピンの男が居るわけ・・」
「お、親分。このベッピン、いや、こいつ、男ですぜ」
彼方が鋭い形相で睨み付けると、ザコたちは青ざめた顔で少女たち共々逃げ出そうとしていた。ちなみにこの少女たちは、奴隷商人たちの愛娼であり、金と引き換えに拉致の手引きをしていた。
残ったのは親分と呼ばれる大男と祈りを捧げていた少女だった。
「小僧とオカマ野郎、よくも騙してくれたな。このままタダで済むとは思ってねぇだろうな?」
大男は俺たちを罵倒すると、余裕の構えを見せた。
俺は渾身の力で大男に体当たりしたが、巨漢の前にあっさり捕まり、羽交い締めにされた挙げ句、全身が軋み始めた。
「痛いじゃないか!離せよ」
(下等な人間ふぜいが)
「うぉー!あうぉー!あれ?何だ?おっ、うわぁーあぁー!」
突如、大男が唸りをあげた。そして意味不明に騒ぎだしたと思ったら、地面に吸い込まれるようにかき消えていった。
あまりに一瞬の出来事で、間近にいたものでさえ何が起こったか分からずにいた。
俺はと言うと、激しい痛みで地面に突っ伏していた。
「神様が天罰を与えたに違いねぇ」!
客たちが一斉に歓声をあげる中、店主らしき男が表れた。
「何だか良く分からねぇが、とにかく兄さんたちがあの連中をやりやがったんだな。あいつらと来たら金は払わねぇし店は壊すしで、ほとほと参ってたんだ。今日は気分がイイ!俺の奢りだ、みんな好きなだけ飲み食いしてくれ!」
「これで静かに商売が出来るようになるんじゃないかい?(笑)」
タダで飲み食いが出来るとあって店内は更に大騒ぎだ。お陰で例の騒動はうやむやになったから良しとしよう。
◇◆◇◆
「あのぅ、大丈夫ですか?」
直音が女の子に声をかける。
「君、家族は?」
「いません・・・」
(汝に神のご加護があらんことを)
「えっ?」
彼方の言葉に少女は驚きの表情をした。きっと今まで、信じた人にも裏切られ続けて来たのだろう。
「良かったら一緒に来るかい?
俺たちはただ、帝都見物に行くだけだからさ!」
「え、はい。連れていってくれるなら」
彼女は彼方を見て不思議そうな顔をした。
「俺は大将、小山野大将だ。名は何て言うんだい?」
「ユミ、ただのユミ。村に捨てられてた私に、村長がそう名付けてくたんです」
「私は直音です。よろしくお願いします」
(彼方だ)
こうして俺たちに、新たな仲間が加わった。




