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リベンジ魔王  作者: 蚊家津
45/50

ウッドレス拠点防衛戦 その3

少し遅くなりました。


今回も戦闘話となります、ただ後半は魔王様による本編進行となる為、戦闘を飛ばしたい方は、四角の連なり以降から読み始めてください。


 「魔族だ!! スロノ・ドールは魔族だ!! 全員撤退しろ!!」


 既に至る所で虐殺が行われている中、その悲痛な叫び声が中庭に木霊する。

 彼が行動を共にしていた部隊は既にスロノ・ドールという魔族により壊滅に追い込まれ。

 統制も何もかもを失い、散り散りになって逃げ回っているが故に彼以外には6人の……突入時と比べて、余りにも少ない人数しか残っていなかった。

 それでも何とか彼らは外に出た……彼ら以外の者がどうなったのかは解らないが、それでも自身達が行うべき最善の手を取る。


 「誰でも良い!! この声が聞こえている者がいるのなら即刻この屋敷から離脱しろ!! そして少しでも損害を減らし、スロノ・ドールが魔族である事を隊長に伝えてくれ!! 繰り返す!! 誰でもいい……」


 既に彼らは自身の死を悟っている。

 本来なら、自身達がこの屋敷から脱出し、この事を伝えるべきなのだろうが……彼らに向けて名乗った彼女の言葉……彼女の種が吸血鬼である、という事が本当なのだとしたら、既に彼らが逃げる事は不可能であるという事も事実だった。

 だから少しでも情報を伝える為の最善を尽くす。既に逃れられないのなら、自身達の死が少しでも意味ある物にしたいが為の行為だった。


 「素晴らしいですわ。まさか最後の悪足掻きで、少しでも情報を他者に渡そうとするなんて……このスロノドール、少しばかり貴方達を過小評価していたみたいですわね。」


 その声は木霊する叫び声の中でも、嫌に静かに、しかしはっきりと彼らの耳に届く……

 彼らにとってその者の声は、自身の死を告げる鐘の音に等しい……だがそれを知ってても尚、彼らは少しでも自身達の可能性を信じた。


 「……総員!!戦闘準備!!」


 彼らの胸に宿った決心を鼓舞するかのように、代表して一人が声を張り上げる。

 既に喉が枯れ始めてきているが為に、その声は酷く掠れた物になってしまったが。それを笑う者は居らず、むしろ出すのすら痛みを覚えると思える声となったのにも関わらず、鼓舞してくれた者に敬意を抱く。

 各々が手にした武器を天に掲げ、既に傾き始めた月を背にし、何かの生物と思われる羽をその背に生やしたスロノドールへ差し向ける。

 残った者達に魔法を習得している者は居らず。彼らが手にした武器では、どうあがいても天を我が物顔で支配する彼女に届く事は無い事を彼らは知っている……それでも尚、彼らはその胸に宿した信念に殉ずる為に彼女へ敵意を向け続けた。


 「その心意気……美しいですわ。もしこの場に我が王がいたのなら、私の方から貴方達に、多少の慈悲を掛けてやれないかと打診する程には心打たれる物があります。ですが残念……既に我が王の命は下され、これしきの事で、わざわざお手間を取らせる必要も無いと私は考えているので、その心意気は一時の気の迷いを生む程度でしか無い物ですわ。」


 スロノドールは楽しそうに笑う。

 既に彼女の中では勝敗が決しているのであろう、油断と驕りに満ちた雰囲気を存分に発し、無警戒に浮遊しながら彼らに事実を突きつける。

 彼女の油断も仕方の無い事だろう……何故なら既に、他の者を狩っていた中で、彼らの中に魔法を扱える者がいない事は確認済みなのだ。そして彼らは弓すらも手にはしていない……故に天へと届きうる攻撃手段を持ってはいないと判断したのだ。


 「総員!! 掛かれ!!」


 だからこそ、その一撃は彼女の想像を超えた物であった。

 掛け声と共に彼ら6人は、手にした武器を精一杯に振りかぶり、投げたのだ。

 戦場で自身の武器を手放す事がどれほど愚かな事か……子供ですら解るであろう愚行を、彼らは全力で行った。

 それしか手が無かったと言葉にするのなら簡単だ、だがいざそうしなければいけないという場面に直面した時、一体どれだけの人が躊躇い無く行動を起こせるのだろうか?

 この世界に神という存在がいるとしたのなら、そんな愚行を全力で行った彼らに微笑んだのだろう……届くはずが無く、また狙いこそ定めてはいても、本来投げる事自体が無い武器は、まるで吸い込まれる様にスロノドールに殺到したのだ。


 「ますます気に入りましたわ。きっと我が王も貴方達の勇気と機転を耳にすれば、同じことを思う事でしょう……ですがその勇気と機転も、私の前では無意味に等しいのですが。」


 そして神がもたらした奇跡をあざ笑う吸血鬼が其処にいる。

 部隊全員が最後の足掻きと投げた武器は、その全てが空中で静止し、彼女に届く事は無く、傷一つ着けることは出来ていなかった。

 その光景を目にした彼らの目に映るのは、一種幻想的とさえいえるその光景……月明りを背にし、狂気をはらんだ赤い瞳が彼らを見据えながら、彼女は始まりから終わりまで、余裕と優雅な態度を崩さずに自身の狩りを終わりにする。


 「他の皆さんは狩っていてあまり面白くありませんでしたが、貴方方は中々に面白かったですわ。私に一時の娯楽を与えて下さった褒美に、私の本気を少しばかり見せて上げましょう。」


 その一言と共に彼女の姿が黒い靄の中に埋もれていく。

 空中に静止する武器はそのままに、彼女の姿だけが靄の中に掻き消え、それが晴れた時には何もいない。それが何を意味するのか……吸血鬼という種の情報を伝承の中で聞いていた彼らは即座に理解した。


 「散開!! 固まっているとまとめてやられ……」


 掠れた指示の声が途中で途切れる、その事実を理解した時には既に彼らの体は動いている。

 誰一人として仲間の挙動を把握する事は無く、それ故に最速で行われた逃走は、すぐに失敗に終わる。


 「逃す訳が無いですわ!! 昼間ならいざ知らず、こんなにも世界に闇が満ちているこの空間で!! 自慢では無いですが、これでも私吸血鬼なんですの。」


 その嘲笑と共に中庭の全域が黒い靄で覆われる……既に屋敷の内部へと通じる道は断たれ、世界から切り離された空間なのではないか、と不安を煽られる中庭に取り残され、残った5人の隊員は少しでも黒い靄から離れようと後ろに下がる。

 彼らの知識が正しければ、この黒い靄自体が彼女の力の一端であり、これに触れた時点で自身の死が確定するからだ。

 だが彼らの知識ではこれほど大きな靄を作り出す事が出来ないのも事実だった……大きくても、大人の男性を三人ほど包み込めるのが限界であり、だからこそ既に息絶えているであろう者が発した最初の指示は、このまま成す術も無く全滅する事を割ける為の物であったのである。


 「あり得ない!! 吸血鬼の力は知っているが、これほど大きな靄を作り出せるなど……それこそ国が総掛かりで討ち滅ぼさなくてはいけない相手じゃないか!!」


 隔絶された空間の中、全員の気持ちを一人が代弁する。

 それは一種懇願に近い物だった……そんな化け物がこんな所にいるはずは無いのだと、今見えているこの光景は全て幻で、変哲も無い中庭の中で打ちひしがれているのだと否定してほしいが為に……

 だが現実はその懇願を無情にも叩き伏せる。


 「この程度で国が総掛かりになるんですの? それは良い事を聞きました。我が王が心配性なのは致し方ないにしても、私の心の持ちようがこれでぐっと楽になりましたわ。」


 彼女は思いもしていなかった情報を得て、楽しげに笑う……しかし彼らにとって、有り得ない現実がこの程度だと言われてしまったのだ……もはや何かをできるとは思えなかった。

 そんな彼らの内心を悟ったのでは無いだろうが、スロノドールはひとしきり楽しそうに笑った後、彼らに終焉をもたらす。


 「では皆さんご機嫌麗しゅう。二度と会う事は無いでしょうが、もし次回があるのならばもっと私を楽しませてくださいな。」


 中庭を取り囲んでいた黒い靄は段々に収束していく。

 中に取り残された彼らの悲鳴は外に漏れる事は無く、気が付けば一人分の大きさになってもまだ彼らの姿が見える事は無い。


 「さて、次の地点に移動しましょうか……まだまだ敵はいる様なので大忙しですわね。」


 やがて一人分の大きさとなった黒い靄は晴れていく、黒い靄が晴れた後、その場に初めから居たかのように現れたスロノドールは、彼らの姿が掻き消えた中庭を後にした。


◇◆◇◆◇◆◇


 「……遅いな。まさか失敗したのか?」


 マクジ共和国首都ウッドレス、その一角に立つとある屋敷を前に、中の惨劇と虐殺を知る由も無い、マクジ共和国対暗部特別部隊の隊長は独り言を漏らす。


 「だが、経験豊富な者ばかりを集めたのに、そんな事があるのか?」


 彼の独り言は尽きないが、そろそろ撤収時間となるのも事実だ……現在の状況は気になるが、中に潜入した者達を見捨て、撤収の準備をするべきだと判断を下す。

 非情な判断なのかもしれないが、隊長を務める彼に躊躇いは無い。既に成功しているとはいいがたい状況であるが為に、中に入った者達がその命を失っているという事を前提に動き始める。

 それでも、隊長は周りに残っている者達に、屋敷から逃げ出して来た者がいたら保護し、状況を聞く様に指示を出し、刻限ぎりぎりまで待ち続ける。

 判断とは矛盾してはいるが、彼にとって部隊の隊員達は、立場上の違いはあるが、同じ志を持った仲間であった……だからこそ、一人でも多く、少しでも長く、隊員の帰りを待ち続けてもいたのだ。


 「……隊長そろそろお時間です。」


 しかしそれも限界を迎える。

 待機している部隊の進言を聞き、彼は自身の心の中で最後の一区切りを捨て去る。


 「…………撤収だ。総員、誰にも見つからない様に移動しろ。」


 部隊が出した損失は大きい……しかも彼らが死んでいるのかどうかさえ解らないのだ。

 出来れば自身の目で確認したかった……中に入り、その目で現実を受け止めたかった……

 だがそれは彼の立場上許されない、隊長という肩書は、自身の願望で動く事を否定していた。


 「皆、私の我が儘を言う様ですまないが……誰か一人でいい、屋敷の中の情報を取って来てくれ。」


 故に彼は隊員に命令をする。

 それがさらなる犠牲を伴う事になるかもしれないのに……

 隊長は勿論、隊員達も内心でその命令が危険である事を理解している。

 何故なら今回の状況は極めて異質だったからだ。

 以前にも抵抗に会い、隊員が死ぬという事はあった……しかしそれでも情報を持ち、逃げ延びて来た者達が少なからずいたのだ。

 それは普段から徹底して叩きこんでいる教えの御陰でもあるのだが……それ故に誰も出てこないというのはあり得ない事だった。

 つまりそれは、どうやっても出られない事態に陥ったという事……そんなところに情報を取りに行かせるなど、死にに行けと言っているも同然だった。

 だがそれを理解しても尚、待機していた者の全員がその手を上げ、志願する。

 隊長の命令という事もあるが、それ以上に彼の人徳が成せたことであった。


 「ありがとう皆……カロル、君に頼もう。何かあったり、身の危険を感じたら即刻撤退しろ。」


 隊長の命令の下、カロルと呼ばれた青年は正門へと向かう。

 自身の命令の所為とはいえ、死地に向かう彼の背を見送り、部隊の撤収を開始する。

 この場に残り、彼を待つ事も一瞬考えたが、これ以上部隊を危機にさらす事も出来なかったが為に、隊長としての判断を優先したのだ。


 「……これ以上無駄な犠牲を出すのは、隊を束ねる者としてどうなんだ?」


 屋敷へ背を向けた彼らに呆れた様なその声は掛けられる。

 明らかに自身へ向けたであろうその声に驚き、隊長は即座にその身を翻し、声の主を確認した。


 「……コメス・ドール!?」


 視線の先にいたのは奇妙な仮面をかぶった男。

 彼は今の今までいなかったはずの正門前に立ち、その両腕を汲んで首を傾げていた。

 其処にカロルの姿は無く、又、それ以上に今回の誘拐対象であった彼の登場に驚き、隊の全員が呆けた様に彼を見つめる事しかできなかった。


 「カロルは!? カロルはどうした!! コメス・ドール!!」


 そんな中で最も早く立ち直ったのは隊長である。

 もしコメスが正門から出て来たのであれば、カロルが気付かない訳が無く、入れ違いになるはずも無かったのだ。

 思考の片隅をよぎった最悪の結果を頭から振り払い、隊長はコメスへ叫ぶ……自身の失態で、これ以上部下を失ったと思いたくなかったからだ。


 「……カロル? ああ、こいつの事か。安心しろ、屋敷の中には入っていないから命までは取っていない。」


 焦りを含んだ隊長に、コメスは隊長の言葉を否定すると共に、一つ指を鳴らす。

 すると離れたコメスと隊長の間、その中間に彼はその姿を現す。

 一瞬安堵に支配され掛けたが、カロルの様子が可笑しい事に直ぐに気が付く、というのも彼は、今の今まで歩いていたかのように、その両足と両手を歩んでいる時のまま固定し、そのまま動く事が無かったのだ。


 「貴様一体何をした!!」


 異常とも言える彼の姿を目にし、即座に怒りを露わにする隊長と隊員達。

 しかし彼らの怒りを受けても尚、コメスは対した事が無いように事実を告げる。


 「何、少し時間を止めていただけだ。もうそろそろ効果は切れるから安心しろ。……そもそも怒るどころか感謝してほしい物だな。私が止めていなかったら、この者は私の命令の範疇に加わっていたのだぞ。それを救ってやったのに……」


 くどくどと持論を展開し始めたコメスを無視し、効果とやらが切れたのであろうカロルが動き出し、不思議そうに辺りを見回していた。

 彼に即座に此方に来るように指示を出しながらも、隊長はいまいちコメスの目的が解らないでいた。


 「……そんな事はどうでも良いか。君達も疑問に思っている事だろうし、さっさと本題に入るとしよう。」


 そんな隊長の内心を悟った訳では無いだろうが、コメスは自身から主題を切り出してくる。

 それは、彼らにはとても理解し難い物であった。


 「君達の上司に伝えたまえ。私、コメス・ドールはアレイストとの一対一での決闘を望んでいると……何なら直接アレイストに告げてくれて構わんぞ。」


 何を言われているのかが理解できなかった。

 勿論アレイストという名が指すエルフは理解している……しかし何故コメスが彼と決闘を望んでいるのか? 自身達の理解の範疇を超えたその言葉に、誰もが隊長の方へと視線を向ける。

 それは仕方の無い事なのかもしれない。人というのは群れで生きているが故に、こういった自身の判断では処理できない場面に出くわした時、自身より立場が上の者に確認を取ってしまうのだ。

 そしてその性質を理解しているが故に、コメスは部隊全体へ向けた言葉を一人へ向け始める。


 「私の目的は以上だ。せっかくだし君に言伝役を頼むよ、部隊長。」


 「……何個か質問してもいいか?」


 そんな彼に隊長は話を切り出す。

 誘拐対象を目の前にして、その当人に質問を始めるというのは滑稽ではあるが、既にコメスを害そうと思えなかった隊長は、少しでも情報を得ようと動いた。


 「それに答えるかどうかは保証しないが、質問位ならいいだろう。何を聞きたいのかね?」


 酷く尊大な物言いだが、今は彼の気まぐれに感謝を抱き、隊長は質問を開始する。


 「部隊の者達は……貴方の屋敷に潜入した者達はどうなった?」


 「死んだよ。もしかしたらまだ生き残っている奴もいるかもしれないが、それも後ほんの少しの時間だろう。じきに掃除は終わり、その後に異物は何も残らない。」


 無慈悲な返答が返ってくる……既に想定していた事とはいえ、余りにも辛い現実だった。

 しかし悲観してばかりではいられない、既に多くの者が死んでいるのなら、少しでもその遺体が手に入る様に動くべきだろう。


 「……遺体だけでも返してはくれないか? 残された者達に返してあげたいのだ。」


 「無理だな。私は遺体の状況を把握していないが、それでもあの者達の手に掛かって、まともな遺体になるとは思えない。残念だろうが諦めてくれ。」


 一体どういう状態なのだろうか……想像は出来ないが、それこそ個々の判別が不可能であるのだと隊長には思えてしまった。


 「なら今生き残っている者だけでも助けてくれないか!? 差し出がましい様だが、少しでも慈悲を与えてくれ……」


 「……部隊長君。私は質問を許すと言ったのだ……いつから君の願いを聞く場になったのかな? それに慈悲なら既に与えてやっているさ……お前達を見逃してやるという慈悲をな。」


 隊長の懇願は途中で遮られ、コメスに届く事すら無かった。

 それでもどうにかならないかと隊長は働きかける。


 「ならば、言伝は聞き入られない。交換条件だ、残っている者達の保護と安全を保障してくれなければ……」


 「勘違いするなよ。その言伝があるから、対価として貴様たちのちっぽけな命を拾う機会をくれてやると言っているのだ。言伝が無理なら、ほかにいくらでもやりようはある……丁度いいから使ってやり、その上で駄賃までくれてやろうとしているのが解らないのか?」


 隊長は自身の力量を高くは見ていない……隊員たちはそんな彼の私見を否定するが、自身の力を過小評価しているからこそ、自身の限界という物が早い段階で解り、対処できるのだ。

 そんな彼は、自身が幾度となく死んだ錯覚を覚えた……それこそ彼の言葉の区切り区切りで胸を刺し貫かれ、目を抉りぬかれ、脳天を叩き割られ、はらわたを引きずり出されたかの様に……現実と相違ない幻覚をまざまざと目にしてしまったのだ。

 一瞬で発狂しかけた理性を何とか保ち、隊長はそんな錯覚を覚えさせたコメスの重圧に恐れを覚える。

 それこそ、幻覚を現実と間違えた人間が死んでもおかしくないのだ……それほどの重圧を、自身の心に直接与えたのだ。

 隊員達も各々が幻覚を見たのだろう、ガタガタと揺れだした自身の肩を擦りながら、それでも何とか自我を保っている。

 そんな姿を見ては、隊長である彼の言葉は、決まったようなものだった。


 「解った。出過ぎた真似をして済まない……貴方の指示に従おう。」


 「解ればよろしい。私は自分の力量を正確に把握している者が好きだからな。今の一連の言葉は無かった事にしてやろう。」


 「……ありがとうございます。」


 この国の為に命を投げ出す事すら覚悟したはずの彼らは、その日圧倒的な力を前にし、その覚悟に殉ずることは出来なかった。

 彼らが内心で受けた屈辱など、コメスにとってはどうでもいい事である。彼は即座にアレイストに告げる文面を隊長に語り始める。



 この日マクジ共和国では、コメスによる指示で虐殺が行われた……この国の一部の者しか知る事の無いこの事実は、後の世に、舞台となった屋敷と共に、血に飢えた仮面の商人……という名の噂として人々の間を駆け巡る事となる。



シュリは索敵ですので戦闘描写無しです。

と言っても、既に彼女には活躍の機会を上げているので、今回は他の皆に譲ってもらいました。

次回以降も本編を続けていきますが、折の良い所で閑話を挟むかもしれません。

一話ごとの作成形式で話を作っている為に、今後の話の細かな流れを作者ですら把握していない本作品ですが、楽しんでいただければ幸いです。


ではまた次回の機会に

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