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リベンジ魔王  作者: 蚊家津
38/50

魔王流喧嘩の売り方

見なくても問題ない前書きです。


突然ですが、本作品の登場人物の名前は、語感で付けられた物と、元となる物があり、それをもじった物の二つが存在します。

これは作者のネーミングセンスの無さから来た物なのですが……どういった目的で付けられた名かを探ってみるのも楽しいかもしれません。


ちなみにスロノドール……これはもじった名前です。元が何かわかりますかね?


以上どうでも良い話でした。引き続き本編をどうぞ


 マクジ共和国……其処は人間とエルフ族が共存する国である。

 国土は他3国と比べ一番小さい、これは昔の……既に歴史の中でしか語られなくなった人間間での戦争……その名残である。

 結果として、今この国はとても困る事態に陥っていた。


 人口の増加、それに伴った居住不足……それがマクジ共和国が直面している問題だ。


 もちろん、この国を支配するのが人間だけであればこんな事にはならなかった。

 問題はエルフ族……彼らは長寿の種族でもあったのだ。

 時というのは流れゆくものである。昔は人間が圧倒的多数であったこの国は、エルフ族との共存を決め保護し始めた事により、今では人間とほぼ変わらない個体数にまで増加している。

 もちろん、これは他の国に旅立った者を除いた数字である。それに加えて、保護に入らず、人里離れた山奥で暮らすエルフを含めると尚増えるだろう。

 昔には予想もしなかったであろうその問題が、この国が今、一番に解決するべき問題だった。


 もちろん、エルフ族が悪いという訳では無い。彼らと共存する事を決めたのは先祖達であり、この予期していなかった問題を除き、彼らの判断は正しかったからだ。

 何故ならエルフの知識と魔法技術は想像以上だったからだ。

 単純な生活知識はもちろん、応用の仕方や発展など、ありとあらゆる事を教わり、また彼らの知らぬ事を教えて来た。

 その御陰で、マクジ共和国は魔法大国となる事が出来たのだ。

 ただ、だからなのだろうか……ある時からエルフ族は、政治に関わる様になっていったのも事実だ。

 初めは商業に関わる部分……それ自体は問題なかったが、次に人間の貴族に対する不平不満……最後には自身達の国に対する貢献を盾に、国の中枢……時の流れと共に、どんどん中枢へ……それこそ、ある程度の決定権を任される部分にまで入り込んでいった……


 もはやエルフと人間が共和している国……というには問題があるほどに、エルフ族の力が強まっているのが今のマクジ共和国だ。


 もちろん、マクジ共和国の現代表……ピース・パクス・フリーデンは人間である。

 しかしこの国の中枢、国を動かしていく役職の者達は、エルフと人間が入り乱れ、中には人間に従えないという強硬派まで出てくる始末だった。

 その結果という訳では無いが、思想を統一する事は難しく、細かな諍いが絶えないのが現状だった。

 当然ピース現代表はそれの解決に従事していた。しかし、今までの歴史……その中でのエルフの貢献は絶大だったために強く出れていない。

 結果強硬派と言われる、一部のエルフ族を野放しにしてしまう事となっていた。一応監視を付けてはいる様だが、どうしても後手に回ってしまうのが現状のようだ。


 ……それが、リジィー・スロードとして、コプレーションでの活動をしていた時にしったこの国の歴史だ。


 だからこそ、人間の権力を取り戻そうとしているようだが……どうにもそれはうまく行っていないらしい。

 その原因としては、人間よりもエルフの方が優秀というのが大きいが、それ以上にマクジ共和国現代表、ピース・パクス・フリーデンの意向もある。

 というのも彼は争いを好まない。齢にして既に60を超えた彼は、エルフと人間の双方から信頼を得ており、双方が互いに理解し合える様な国を作ろうとしていた。

 だからこそ先のリリアの一件は、一部の強硬派の独断であると推察される。

 その上で、赤い髪のエルフ……という特徴は、その者を追い詰めるには、とても重要な手がかりとなり得た。


 「ようこそおいで下さいました。リジィー様。」


 扉を開けるとルウワーフの歓迎の言葉が出迎える。

 それに軽く頷きを返しつつ、スロノドールに迎え入れられ、雑貨屋「マジックキング」の中に入る。

 その中に並べられた商品、サロスが作った数々のマジックアイテムは、その全てが個々の特色を放っている。

 全体的に暗めの内装ではあるが、それも店頭に並べられた、数々の明りを灯すマジックアイテムにより気にならない。効果の見本と雰囲気づくりを両立させた良い手段だった。


 「ふむ、結構結構。中々に良い内装だ。窓が少ないせいで全体的に暗いが、それもマジックランプの見本により気にならないな。まぁ許容範囲だろう。」


 俺の賛辞に二人は礼を返す。それに鷹揚に頷きながら、今後の行動を考える。

 ……彼女達から既に聞いていたが、活動し始めてから今まで、この店に国の重役と呼べる様な人物が現れていない……という事だった。

 つまりはこの店の商品……その技術は魅力的では無いとも取れる。俺が今まで人間世界で暮らした中、手にした事が無い技術であるはずなのに……だ。


 (繁盛しているという事だし……耳に入っていないという事は無いだろうな。国側が既に動いてくれていれば、獲物探しも楽だったのだが……)


 当初の予定とは違い、想定通りにいかなかった事を嘆いても仕方が無い。ならば次の手を考え、行動するだけだ。


 「スロノドール、ルウワーフ。お前たちは今まで通り、情報収集に当たれ。だがこの店は当分の間借りる事になる。……そうだな、スロノドールに与えた役は商人の娘だったか……なら私の役は、娘の成長を見に来た父とでもしておこうか。」


 「解りました……ですが、リジィー様のお名前とお顔はこの国でも有名なのでしょう?流石にリジィー様が父というのは無理があるのでは?」


 スロノドールが問題点を上げ、指摘してくる。確かにそれは問題ではあったが、とりわけ重要と言える問題では無かった。

 懐から解決策を取り出し、二人に見せる。


 「それはこれを使えば問題ないだろう。名前も偽名を使えば良い。」


 「……それは仮面ですか?」


 ルウワーフが不思議そうに首を傾げる。彼女の呟き通り、これはブラウを買った奴隷市場で使用した仮面であった。

 顔全体を覆い隠す様に作られたその仮面は、一度つければその下の素性がばれる事は無い。多少不審には思われるだろうが、そんなものは口八丁の出任せでどうにでもなるはずだ。

 二人は少しばかり怪訝そうにしながらも、俺の考えを否定する事は無かった。彼女達が、本気で問題だと思えば否定するだろうから、其処からも問題なく思える。


 「後は細々とした引継ぎだな……一応スロノドールには今後も店頭に立ってもらうが、今後、私がこの国にいる間、店の責任者と連絡を取りたい、と言う者が現れたら私の方へ通せ。俺の予想が正しければ、明日以降からその可能性は大きくなる。」


 二人の了承の言葉を聞きながし、俺は三つのマジックアイテムを取り出し、このアイテム達に携わったであろう赤髪のエルフ……彼が焦る姿を空想する。

 剣と腕輪とイヤリング……それらは既に鑑定を終え。その結果から作った人物は違うが、その魔法式の癖により、設計者が同一人物である事が解っていた。

 つまりこれは設計者の知恵の結晶だと言える……ならこれを作った相手が、一番やられたら困るであろう事を考えたのだ。何の反応も無いほうがおかしいだろう。

 まぁ、もしこれで反応が無ければ、それはそれでこのアイテム達が、取るに足らない量産品だと解るから問題は無い。


 「では二人とも後の事は頼むぞ。何か問題があれば、随時各自で判断してくれ。」


 そう言い残し、俺は二人が拠点として用意した屋敷へ移動する。

 働いてくれる二人には悪いが、当分の間は相手の行動待ちだ。故にそれまでの間は気楽に過ごさせて貰うつもりだった。

 店を出ながら、頭の中に地図を思い浮かべて屋敷の方角を確認する。

 既に仮面をつけているから、周りからの視線が痛いが、極力それを無視して屋敷に向かった。


◇◆◇◆◇◆◇


 「「「お帰りなさいませ!!リジィー様!!」」」


 スロノドールとルウワーフ。彼女達に与えた三人のメイドが俺を持て成す。

 既に俺が来る事は伝わっていたのだろう。全員が乱れる事無く深々と礼をしていた。


 「うむ、出迎えご苦労。だが、今君達が仕えるのは私でなくあの二人だ。蔑ろにしていい、とまでは言わんが、そこまで気を張り詰め無くてもいいぞ。」


 いちいち彼女達に礼を返すのも面倒だったため、俺を重視した行動をしなくていいと伝える。そこには自身が面倒だったから、という理由しかなかったのだが……


 「はう~、私達奴隷にそんなお優しいお言葉を下さるなんて……」


 「こんなお優しい人を恐れていたなんて……昔の自分が恥ずかしいです。」


 「ああ……ブラウさんが羨ましい……こんなお人の御目にかかるなんて……」


 何故か称賛の嵐が俺を包んだ。……俺自身はそんなに他者に優しくしているつもりは無いんだが……何故こんなにも感激されているのだろうか?

 疑問には思うが、否定的な感情では無い様だから放っておいても問題ないだろう。

 彼女達の横をすり抜け、背中に感じる熱い視線を受けながら、ルウワーフから聞いていた私の為に作ったという部屋に向かう。

 階段を上り二階へ……長い廊下に点々と並ぶ扉を眺めながら、どうしても疑問に思ってしまう。


 「う~ん、広いのはいいが……メイドと二人を合わせ5人しかいないのに、こんな広い屋敷は必要だったのか?」


 別に広い事を悪く言う訳では無いが……過剰すぎる様な気がしなくも無い。

 広いとそれだけ、清掃にあたるメイド達の負担も増えるだろう……いくら彼女達が奴隷だからと言って、さすがに過労させるのは良くないだろう。

 後で軽くその部分にも触れるとして、自身の部屋……部屋のプレートにでかでかと、リジィー様専用、と書かれた解りやすい部屋を見つけた……

 ……今すぐに連絡を取りたい位に恥ずかしかったが、そこら辺の文句は後で言う事にする。

 部屋の中の手近にあった椅子へ腰かけ、体の体重を預けながらついつい鼻歌を口ずさむ。普段そんな事は滅多にしないが、今の俺は自分でも解るほどに上機嫌だった。


 「さて……無様に道化を演じてくれよ、赤髪君。……そうすれば多少の慈悲位は掛けてやる。」


 魔王の鼻歌は続く、彼の進む道を阻む者は、この場には誰もいなかった。


◇◆◇◆◇◆◇


 「一体これはどういう事だ!!」


 狭い室内、魔法により盗聴防止と防音が施されたその室内に一人の怒号が響き渡った。

 その部屋には現在、怒号を上げた人物を含め5つの影がある。

 この場の全員、誰もが暇だと言える程の時間は無い……それほどの役職についている者達であった。しかし彼らは今日、緊急を要する問題が発生したために集まらざるを得なかったのである。


 「何故……何故!!傭兵共に渡したアイテムがあの店にある!?アレイスト!!何も問題は無かったはずでは無いのか!?」


 既に悲鳴に近いそれは、一人のエルフへ向けられた物である。

 その悲鳴に答える様に、怒号を向けられたエルフは答える。


 「……すみません、皆さん……どうにも僕の想定していない事態になったみたいです。」


 アレイストと呼ばれたエルフは、そのくすんだ赤髪を横に振りながら視線を落とす。

 その姿は何かを考えているように物静かである。周りの4名もそれを察したが故に、それ以上の追及をしない。今は仲間内でいがみ合っている場合では無いのだ。

 気を取り直し、状況を整理する為に、その場では唯一の女性が口を挟む。


 「どこで手に入れたか解りませんが……あの店、マジックキングに置かれ始めた三つのアイテムは、アレイストが設計した物と同一である……と見ていいのですね?」


 その質問にアレイストは、ため息が交った声で答える。

 

 「間違いないね……しかもどういう訳か、僕の魔法式を完璧に複製されている……剣と腕輪とイヤリング、それぞれ三つずつ、部下に買わせた物を見比べたから間違いないよ。」


 信じられない、という小声が口々に役員から上がる。アレイストを含めた全員が一種呆然とした様にしている中、それでも尚状況を纏めようと女性が動く。


 「前提として……アレイストが作ったオリジナルがあの店に渡ったとします。その上で……あれは複製が可能な物なんでしょうか?」


 その質問は、この場の全員が肯定してほしいと感じた質問だ。少なくとも複製が可能であれば、今あの店に大量に並べられているアイテムにも納得がいく。

 全員の思いが伝わったのだろうか……アレイストは、その中性的な顔に何時もの柔和な笑顔を浮かべながら答える。


 「複製は可能だね。むしろ設計図を作れる時点で、複製が不可能な物では無いよ。」


 アレイストのその答えに4人が安堵の息を漏らす。設計者本人が言うのなら、それは絶対の真実なのだ、ならば問題は何も無い……彼の続く言葉が無ければの話だが。


 「一つのアイテムを作るのに最低1年は必要だ……それも奇跡に近い順調が続いての話だ。少なくとも2週間程度で作れる程度の物じゃないし、ましてやそれが何百個も……しかも僕の魔法式の癖まで完全に複製……どんな技術を持っていればそんな芸当が可能なのか僕が聞きたいよ!!」


 もう笑うしかないのだろう。いつもの柔和な笑顔は、壊れたようにその口角がどんどんつり上がっていく。その狂気に近い笑顔を受けながら、その場の全員が頭を抱えていた。

 それを眺めながらアレイストは壊れたように続ける。


 「本当に何なんだろうね!?僕の知恵の結晶がいともたやすく……それも短時間で盗まれて売られている!!あの店の裏にいるのは化け物だよ……手を出すべきでは無い!!」


 全員がその意見に異論が無かった……自身も魔法に携わるから解るが、複製と言ってもそれほど簡単な物では無いのだ。それを短時間でやってのけたあの店……いや、あの店の裏側にいるであろう存在は底が見えなかった。

 技術の流出は正直言ってとても辛い……それこそアレイストの作り出した物……その技術は、現状を持ってはマクジ共和国の主力となり得る物だったために尚更だ。

 他の国に渡っても、その解析だけで何十年もかかるであろうそれは、既に複製されてしまい。遠くない未来、他の国にまで出回るだろう。

 だが現状最悪ではあるが、それでもまだ取り返しがつく。これ以上あの店には関わらず、遠巻きに圧力を……いやそれすらも危ういかもしれない……手を出さずに成り行きに身を任せ、嵐が過ぎるのを待つべきだろう。

 アレイスト以外の全員の見解が一致していた。後は結果を纏めるだけだ。


 「それでは……今後あの店、マジックキングには手を出さず、様子を見つつその後の対処は見極める……という事でよろしいでしょうか?」


 今日の会議を纏めていた女性が結論を告げる。その結論に3名が肯定を返し、アレイストだけが肯定を返さなかった。

 先ほどの発言通り、彼自身も関わるべきではない、と言う結論だと全員が思っていたが故に、その反応は不思議な物だった。

 その思いを感じたのだろう。アレイストは全員を見回しながら、彼らの結論を否定する。


 「逆だね……あの店は潰すべきだ。」


 静かに、諭す様に告げるアレイストの言葉に、女性は声を張り上げる。


 「ですが貴方も先ほど……」


 「そう、普通に考えるなら手を出すべきでは無い。僕もそう思うよ……でも忘れたのかい?僕達の国は今、窮地に立たされている。」


 女性の発言を遮ったアレイストの言葉に、女性が押し黙る。その姿を確認し、周りの役員達も同様である事を確認したアレイストは、自身の考えの続きを告げる。


 「現状でマクジ共和国の国土は狭い……それに加えて、僕達の様なエルフ族の長寿が重なり、土地が不足し始めている……故に国土回復を目指し、他国との戦争さえも視野に入れた色々な作戦を考えて来た……そうだよね?」


 アレイストはそこで一度言葉を区切り、周りの役員達に確認を取る。全員が首を縦に振り肯定している。

 それに満足し、アレイストは遠くを見つめる様に斜め上に視線を逸らす。


 「初めから僕達は普通じゃないのさ。そもそもの話、普通であれば今後この国が駄目になると思ったから、僕達の様な強硬派が生まれたんだろう?なら、そんな普通の奴らと同じ普通の考えを持った時点で、この国に未来は無いとは思わないかな?」


 全員が静かに頷いている。この場にいる全員が、歪んでいるとは言え、本気でこの国を良くしようと考えていた。だから誰もアレイストの言葉を否定しない。

 それに気を良くした訳では無いだろうが、アレイストは意気揚々と告げる。


 「なら今ここで動くべきだ。先ほどは潰すとは言ったが、それは最悪の話……理想を言うのならあの店の力を取り入れたい!!彼らの力はこの国の繁栄に大きく役立ってくれるはずだからね。……其の為の作戦も色々と考える必要があるね。もしよければ、このまま議題を其方の方に移したいのだけど……どうかな?」


 彼の言葉を否定する者はいない、全員が既にマジックキング……その裏側にいるであろう存在を取り込む事を考えていた。

 その姿に満足し。アレイストは自身のくすんだ赤い髪をかき上げつつ宣言する。


 「ではこれより、マジックキングを取り込む方法を考えるとしよう。誰も案が無いなら、僕から出させてもらうけど……」


 彼らの会議は続いていく。彼らの進む道を阻んでくれる者は、この場には誰もいなかった。


最近時間が取れないので、一日更新が空いてしまっています。すみません。


次回はこのまま本編を続ける予定です。赤髪と魔王様が邂逅するかは未定。少なくともイベントを一つ挟む予定なのでその流れ次第ですね。

依然スローペースの上、誤字脱字が絶えませんが、楽しんでいただければ幸いです。


ではまた次回の機会に




これより下は、前書きで触れたスロノドールの名前の由来です。そういった話が嫌いな人はこれ以上読まない事をお勧めします。

……と言ってもそこまで深い物ではあるません。単純に、吸血鬼=肌が白い+人形の様に美しい=白+人形=シロノ人形=シロノドール、ここまで考えた後、死を過ぎているという連想から、しを一つ下に過ぎてすにしただけです。中二感溢れるね!!……当たった人がいたら多分私と趣味一緒です。

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